幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T

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14、あーそーぼっ!

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 猪苗代は俺にぺこりと頭を下げた。

「左良くん、ありがと! 君って見た目よりもずっと良い人なんだね!」

「俺ってそんなに印象悪いのか」

「だっていつも教室の隅っこで、人のことにらんでるじゃん」

「にらんでるわけじゃないけどな。それは猪苗代もだろ」

「私は眠いだけ」

「俺もだよ」

「お互い目つき悪いんだね」

 クスクスと笑う猪苗代は、いつもより幾分か親し見やすい空気をまとっていた。

「春姫の幼なじみって聞いた時はびっくりした。なんか似合わないなって思って。でもそんなことないね。誤解してた」

「誤解してたのは俺も同じだよ。ずっと、やばいヤンキーなのかと思ってたさ」

「それねー。だから友達いないんだけどさー。話しかけてきてくれたのは、春っちだけだよ」

 猪苗代はおずおずと照れ臭そうに自分の髪を触ると、言った。

「……ねぇ、そうだ。たまに左良と春っちって遊んでるんだよね」

「あー……そうだな」

「あたしも行って良い?」

「えっ」

 今度は俺が固まる番だった。

「遊ぶって、俺の家だぞ」

「うん」

 表情を凍らせた俺にお構いなく、猪苗代は言った。

「あたしも左良くんの家で一緒に遊んでも良い?」

「それ……は」

「ダメかな?」

 面と向かって言われると断りづらい。

 しかし春姫が俺の家に来る日は水曜日だ。水曜日ということはセックスごっこの日だ。

 断った方が良い。

「ダメ……かな?」

 猪苗代が俺を見つめてくる。大きな瞳は子うさぎのようだった。ますます無下むげに断りづらい。

「……別に」

「大丈夫?」

「春姫の予定が……どうだかな」

 俺がそう返答をすると、猪苗代は太陽が差し込んだようにパァッと顔を輝かせた。

「そうだね。じゃあ、春っちの予定も聞いてみるよ!」

「あー、うん」

「オッケー。じゃあ、また今度!」

 すっかり行く気でいるし。

 猪苗代は意気揚々いきようようといた足取りで帰っていった。まさか毎水曜日に俺と春姫の間で、セックスごっこがとり行われているとは知るまい。

 猪苗代が来たら、セックスごっこができない。

 ……うまく春姫が断ってくれると良いんだけど、と心の奥で願わずにはいられなかった。
 
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