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12、昔はお風呂一緒に入っていたから
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痴漢事件から幾日か経って、再び水曜日がやってきた。さっさと家に帰って、部屋の片付けをしていると、チャイムが鳴った。
ドアを開けると、制服姿の春姫が、紙袋を持って立っていた。
「ごめんね。課題出すので遅くなっちゃって。はい、これ」
春姫が渡してきた紙袋には、近くのケーキ屋のものだった。手に持つとずしりと重い。ふわりと漂う甘い匂いには覚えがあった。
「お、明文堂のシュークリーム」
「こないだのお礼。おばさんたちの分もあるよ」
「こないだ?」
「一緒に学校行ったとき」
痴漢のときか。
「別に良いのに」
「日頃のお礼も兼ねてだから」
「じゃあ、後で一緒に食べるか」
「うん。その前にちょっとシャワー借りて良い? 汗かいちゃって」
初夏に入りつつあるというのもあって、春姫は大粒の汗をかいていた。急いできたのだろうか、息も上がっている。
春姫はボストンバッグを持って、お邪魔しますと家に上がった。
「服あるのか」
「家から持ってきたー」
バッグをプラプラと揺らして、春姫は我が家の風呂場に入っていった。
小さい頃から、互いの家を行き来しているので、シャワーを借りたりすることは良くある。俺も春姫の風呂場を借りることは、しばしばある。
シャワーの水の音が、扉の向こうから聞こえる。
「嫌なことしてる……か」
俺はと言えば、いまだに猪苗代の言葉を引きずっていた。正直、水曜日が来るのが恐ろしくも思えていた。
毎週水曜日に行われているセックスごっこ。それが春姫が望んでいるものだと、俺は確かに言えるだろうか。もしかして本当は彼女は、あんなこと望んではいないのではないだろうか。
このままで、大丈夫なのか。
「テッちゃーん」
春姫が俺を呼ぶ声で我に返る。
「春姫、どうした?」
「ごめん、家からタオル持ってくるの忘れちゃって、貸してくれない?」
「あ、あぁ。ちょっと待って」
ぐちゃぐちゃ考えても仕方がない。今日、絶対に春姫に聞こう。何でこんなことを続けているのか。続けることを受け入れているのか。
俺のことをどう思っているのか。この際だ。もうはっきりさせてしまおう。
セックスごっこはごっこのままで終わるのか、それとも違うのか。
「よし」
俺は密かに覚悟を決め、クローゼットから乾いたバスタオルを取り出して、脱衣所のドアをそっと開けた。
「ほら、タオル持ってきたぞ」
脱衣所に入った瞬間、俺は固まった。
几帳面に畳まれた淡いピンクの下着類。制服のスカートや、さっきまで春姫が着ていた白いワイシャツ。
「下着……」
頭がピンク色になる。
春姫は風呂場のドアから顔を出して、申し訳なさそうに笑って、俺に手を伸ばしていた。
「ごめんごめん」
風呂場のドアはすりガラスになっていて、おぼろげではあるが、春姫の身体のシルエットがうかがえる。腰のくびれ、胸の膨らみ、ツンと突き出たお尻。肩口あたりの白い肌はしっかり見える。
「テッちゃん? タオル投げて」
春姫がそれを気にする様子はなく、俺からタオルを受け取ると、春姫は「ありがとう」といって、扉を閉めた。
「あれ?」
さっきまで何を考えていたのか忘れてしまった。顔が熱い。頭が熱い。置かれていた春姫の下着の色が頭から離れない。
そのあと、俺はシャワーを浴び終わった春姫と、なし崩し的にセックスごっこを始めてしまった。春姫に何かを聞かなきゃという考えは、どっかに吹き飛んでいた。
俺は半袖のTシャツに着替えた春姫と、身体をひっつけあった。
「あっ、やっ」
そして火照った頭の奥で、その息遣いを聞いていた。
ドアを開けると、制服姿の春姫が、紙袋を持って立っていた。
「ごめんね。課題出すので遅くなっちゃって。はい、これ」
春姫が渡してきた紙袋には、近くのケーキ屋のものだった。手に持つとずしりと重い。ふわりと漂う甘い匂いには覚えがあった。
「お、明文堂のシュークリーム」
「こないだのお礼。おばさんたちの分もあるよ」
「こないだ?」
「一緒に学校行ったとき」
痴漢のときか。
「別に良いのに」
「日頃のお礼も兼ねてだから」
「じゃあ、後で一緒に食べるか」
「うん。その前にちょっとシャワー借りて良い? 汗かいちゃって」
初夏に入りつつあるというのもあって、春姫は大粒の汗をかいていた。急いできたのだろうか、息も上がっている。
春姫はボストンバッグを持って、お邪魔しますと家に上がった。
「服あるのか」
「家から持ってきたー」
バッグをプラプラと揺らして、春姫は我が家の風呂場に入っていった。
小さい頃から、互いの家を行き来しているので、シャワーを借りたりすることは良くある。俺も春姫の風呂場を借りることは、しばしばある。
シャワーの水の音が、扉の向こうから聞こえる。
「嫌なことしてる……か」
俺はと言えば、いまだに猪苗代の言葉を引きずっていた。正直、水曜日が来るのが恐ろしくも思えていた。
毎週水曜日に行われているセックスごっこ。それが春姫が望んでいるものだと、俺は確かに言えるだろうか。もしかして本当は彼女は、あんなこと望んではいないのではないだろうか。
このままで、大丈夫なのか。
「テッちゃーん」
春姫が俺を呼ぶ声で我に返る。
「春姫、どうした?」
「ごめん、家からタオル持ってくるの忘れちゃって、貸してくれない?」
「あ、あぁ。ちょっと待って」
ぐちゃぐちゃ考えても仕方がない。今日、絶対に春姫に聞こう。何でこんなことを続けているのか。続けることを受け入れているのか。
俺のことをどう思っているのか。この際だ。もうはっきりさせてしまおう。
セックスごっこはごっこのままで終わるのか、それとも違うのか。
「よし」
俺は密かに覚悟を決め、クローゼットから乾いたバスタオルを取り出して、脱衣所のドアをそっと開けた。
「ほら、タオル持ってきたぞ」
脱衣所に入った瞬間、俺は固まった。
几帳面に畳まれた淡いピンクの下着類。制服のスカートや、さっきまで春姫が着ていた白いワイシャツ。
「下着……」
頭がピンク色になる。
春姫は風呂場のドアから顔を出して、申し訳なさそうに笑って、俺に手を伸ばしていた。
「ごめんごめん」
風呂場のドアはすりガラスになっていて、おぼろげではあるが、春姫の身体のシルエットがうかがえる。腰のくびれ、胸の膨らみ、ツンと突き出たお尻。肩口あたりの白い肌はしっかり見える。
「テッちゃん? タオル投げて」
春姫がそれを気にする様子はなく、俺からタオルを受け取ると、春姫は「ありがとう」といって、扉を閉めた。
「あれ?」
さっきまで何を考えていたのか忘れてしまった。顔が熱い。頭が熱い。置かれていた春姫の下着の色が頭から離れない。
そのあと、俺はシャワーを浴び終わった春姫と、なし崩し的にセックスごっこを始めてしまった。春姫に何かを聞かなきゃという考えは、どっかに吹き飛んでいた。
俺は半袖のTシャツに着替えた春姫と、身体をひっつけあった。
「あっ、やっ」
そして火照った頭の奥で、その息遣いを聞いていた。
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