16 / 43
16 リリアージュ アエルを探す
しおりを挟む
リリアージュは庭園を歩いていた。
夜に行われる本格的な舞踏会を前に、プレで開かれた先ほどのダンス会で、もうすでにリリアージュはくたびれていた。
踊りながらアエルを探したからだ。
それは、ただ目が回っただけだった。
そして、よく考えるとあの場にいる可能性は少ないという事に気が付いた。
──王宮の護衛の仕事と言っていたから、騎士をしているのか?それとも衛兵?
──そもそも、どうすれば居場所がわかるのか…。
リリアージュは考えなしに城に来た事に対して、後悔しはじめていた。
遠くからでもいいので、一目見たかった。
どこかにいるはずだが、この広い王宮のどこを探せばいいのか分からなかった。
勝手に、今日来たら会えると思っていた自分の浅はかさに今更ながら、呆れる。
リリアージュは勇気を出して、門兵にアエルを知らないか聞きに行こうとした。
庭園を抜け、王宮の端を通って門へ向かっていると、すぐ横に植えてある木の上から声がした。
「なぜ…つつくの?自分の子でしょう?」
何だろうと思って上を見ると一人の少女が木に登って、小鳥の雛を巣に戻そうとしているところだった。
その少女は王族だという事がすぐに分かる、深い青い色の瞳の持ち主だった。
もう一度、巣に雛を戻そうと、きれいにウェーブした腰まである茶色い髪の毛を揺らしながら太い枝の上で背伸びをする…。
「──危ないのではなくて?人間の匂いのついた雛は、親鳥に受け入れられないのではなかったかしら?」
リリアージュは木の下からそっと少女に問いかけた。
少女は下を向くと、あっけにとられた様子でリリアージュに言った。
「……あなた誰?どこの国の女王様…?」
リリアージュはそう聞かれ、静かに答える。
「このティアラの事?これは王冠ではなくてね…」
「違うわ…ティアラじゃなくて…あなたすごく素敵…。まるで絵本の中に出てくる氷の女王そのものって感じで…」
少女はリリアージュに見とれながら喋ったせいで、バランスを崩し木にしがみつく。
リリアージュは急に上から降ってきた雛を、なんとか受け止める。
不安定な形で木にしがみついている少女にリリアージュは息をのんだ。
「今日のドレス、重すぎて木に登れないの!誰かすぐ呼んで…」
「平気よ、慌てないでいい…大丈夫だから。今降りていく。雛をキャッチしてくれてありがとう…」
そう言うと、ずるずると木から少女は降りて無事に地面に足を着けた。
ほっと胸を撫で下ろしたリリアージュは、少女に雛をそっと手渡す。
そして、ふと見ると雛を受け取った少女の細い手首に、見覚えのあるブレスレットが掛かっている事に気が付く。
「……その…ブレスレット…」
「これ?私の付き人がくれたの。安物っぽいけど素敵でしょ?」
リリアージュは自分のドレスのスカートのポケットにいつも入れているブレスレットにそっと手を伸ばし、触れながら思った。
──付き人?
「私、今、15歳なんだけれど、16歳になったらその人と結婚する予定なの」
少女は、綺麗なピンク色に染められた爪の先で愛しそうにブレスレットを撫でた。
夜に行われる本格的な舞踏会を前に、プレで開かれた先ほどのダンス会で、もうすでにリリアージュはくたびれていた。
踊りながらアエルを探したからだ。
それは、ただ目が回っただけだった。
そして、よく考えるとあの場にいる可能性は少ないという事に気が付いた。
──王宮の護衛の仕事と言っていたから、騎士をしているのか?それとも衛兵?
──そもそも、どうすれば居場所がわかるのか…。
リリアージュは考えなしに城に来た事に対して、後悔しはじめていた。
遠くからでもいいので、一目見たかった。
どこかにいるはずだが、この広い王宮のどこを探せばいいのか分からなかった。
勝手に、今日来たら会えると思っていた自分の浅はかさに今更ながら、呆れる。
リリアージュは勇気を出して、門兵にアエルを知らないか聞きに行こうとした。
庭園を抜け、王宮の端を通って門へ向かっていると、すぐ横に植えてある木の上から声がした。
「なぜ…つつくの?自分の子でしょう?」
何だろうと思って上を見ると一人の少女が木に登って、小鳥の雛を巣に戻そうとしているところだった。
その少女は王族だという事がすぐに分かる、深い青い色の瞳の持ち主だった。
もう一度、巣に雛を戻そうと、きれいにウェーブした腰まである茶色い髪の毛を揺らしながら太い枝の上で背伸びをする…。
「──危ないのではなくて?人間の匂いのついた雛は、親鳥に受け入れられないのではなかったかしら?」
リリアージュは木の下からそっと少女に問いかけた。
少女は下を向くと、あっけにとられた様子でリリアージュに言った。
「……あなた誰?どこの国の女王様…?」
リリアージュはそう聞かれ、静かに答える。
「このティアラの事?これは王冠ではなくてね…」
「違うわ…ティアラじゃなくて…あなたすごく素敵…。まるで絵本の中に出てくる氷の女王そのものって感じで…」
少女はリリアージュに見とれながら喋ったせいで、バランスを崩し木にしがみつく。
リリアージュは急に上から降ってきた雛を、なんとか受け止める。
不安定な形で木にしがみついている少女にリリアージュは息をのんだ。
「今日のドレス、重すぎて木に登れないの!誰かすぐ呼んで…」
「平気よ、慌てないでいい…大丈夫だから。今降りていく。雛をキャッチしてくれてありがとう…」
そう言うと、ずるずると木から少女は降りて無事に地面に足を着けた。
ほっと胸を撫で下ろしたリリアージュは、少女に雛をそっと手渡す。
そして、ふと見ると雛を受け取った少女の細い手首に、見覚えのあるブレスレットが掛かっている事に気が付く。
「……その…ブレスレット…」
「これ?私の付き人がくれたの。安物っぽいけど素敵でしょ?」
リリアージュは自分のドレスのスカートのポケットにいつも入れているブレスレットにそっと手を伸ばし、触れながら思った。
──付き人?
「私、今、15歳なんだけれど、16歳になったらその人と結婚する予定なの」
少女は、綺麗なピンク色に染められた爪の先で愛しそうにブレスレットを撫でた。
11
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる