イケメンの定義〜西条さんがブサイクって皆さん正気ですか?〜

ちよこ

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同僚 平凡杉太

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我が社の受付嬢は美人だ。
会社の顔だから、どの企業も大体美人だと思うが、レベルが違う。

彼女、早坂由紀さんは別格だ。
モデル顔負けである。


ついでに性格も良い。
彼女は顔で人を判断したりしない。
チビで平凡顔の俺にも優しい。
同期のイケメン河口より俺への態度の方があたりが良い感じがするが、気のせいだろうか。
うん、ただの願望だな。


最近早坂さんに、ついて回る噂がある。
何でも営業一課のミスが原因で、とんでもない男と見合いをさせられたとかだ。

なんだそれ。
受付の彼女にはまったく関係ないじゃないか。
これがただの噂だと思いたいが、彼女にほのかな想いを寄せている俺は気づいてしまう。
彼女の雰囲気が変わった事に。
何か、色気が流れ出ているのだ。

まさか見合い相手とうまくいって…るわけない。ないったらない!

だって相手は東西コーポレーションの副社長らしいし。
あまり表に出ない人だけど、すごい不細工だと噂に聞く。
そんな不細工を早坂さんが相手にするわけ…ない…よな?

あぁー!ダメだダメだ。気になって仕方がない。
ここは勇気を出して、お昼のランチに誘ってみようかな。俺、同期だし。
………うん、いきなり2人きりは無理だから、河口も誘うか。
あいつに噂の真相を聞いてもらおう、そうしよう!
そうなると善は急げだ。俺は河口を誘ってもうすぐ休憩時間に差し掛かる頃、受付へと急いだ。





受付には今日も美しい早坂さんがいた。

「は、早坂さん!」

「平凡さん、どうしたんですか?」

「いや、あの、「早坂ちゃんもうすぐお昼休憩でしょ?俺達と一緒にランチ行かない?同期だしさ、たまには親睦を深める為に同期会しようよ!」」

ナイスだ河口!
いつも俺が話してるのに途中から会話に入るのはイラっとするが、今日は許す。
この感じだと早坂さんも断りにくいはず。
現に少し悩んでるが、大丈夫そうな雰囲気がすーーん、何だ?
急に早坂さんの目が見開いたと思ったら、こぼれるような笑顔を浮かべた。



「貴之さん!どうしたんですか?」

ポケーッと笑顔に見惚れていた俺達が、視線先の玄関を振り向くと、とんでもない不細工が近づいてくる。


「やぁ。契約書の件で堀田部長に呼ばれてね。東川に外せない用事が入って、代わりに私が来たんだ」


何だ、このチビハゲおっさんは。
早坂さんが名前で呼んでいるし、堀田部長って営業一課だよな?


「そうだったんですね。何時の約束でしょうか?」

「13時30分なんだが、もし良ければランチでも一緒にと思って」

「はい、もち「まてまてまって!早坂ちゃん、俺達とランチに行く約束でしょ。」」

慌てて河口が止めに入る。

2人の会話を聞いて、まさかという思いが湧き上がるが、悲しいかな、平凡人生24年の俺の唯一の特技が勘が良い事だ。そのおかげで一流である会社にも入社出来た。

その俺の勘が告げている。
このチビハゲ不細工が東西コーポレーションの副社長であると!
早坂さんが見合いをした相手であると!

ついでに…これは気づきたくなかったが、早坂さんがこのチビハゲ不細工に、ほ、ほ、惚れているとー!!!

誰か嘘だと言ってくれ!
うちひしがれている俺の横で河口は、なおも口を開く

「大体、貴方誰なんですか?堀田部長と打ち合わせって事は取引先の方ですよね?部外者がうちの受付を誘うなんて非常識ですよ。」

河口よ。お前仕事は出来るが、今ひとつ成績が伸びないのは、その空気を読めないところが原因だ。

「これは失礼。私は東西コーポレーションの西条です。宜しく。」

そう言ってスマートに名刺を渡す。

「東西コーポレーション、って副社長?あ、貴方が?」

驚愕の顔を浮かべる河口に、西条副社長はとどめの一撃を出す。

「ええ、あとこちらの早坂由紀さんと結婚を前提にお付き合いしてるので、食事に誘う事は非常識ではないと思いますが。由紀さんはこの方達と食事の約束を?」

「誘われたんですが、まだお返事はしてないです。河口さん、平凡さん、大変申し訳ないですが、婚約者の貴之さんと食事をするので同期会はまたの機会にお願いします。」

嬉しそうにニッコリ微笑む早坂さんに、赤く震える西条副社長。


あぁ、これはダメだ。
2人の様子を見てたら諦めるしかないな。
もともと憧れの存在だったわけだし。
付き合えるなんて思ってもなかったし。
同じ会社の同期になれただけで感謝だし。
だしだしだしだし。


ただ、早坂さんの隣に立つ男がチビハゲ不細工とは思わなかったけど。てかこれがOKなら俺でもいけたんじゃ?的な事を思うのは仕方ないだろう。




俺は今だに放心状態の河口を引っ張り、受付を後にした。
河口…今夜は飲み明かそうぜ。
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