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西条貴之side1

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私は不細工だ。
見る者を不快にするレベルらしい。
ハゲでチビでデブの上に顔のパーツも壊滅的。
38歳だが実年齢よりも10歳は上に見られるのはザラである。
この顔のせいで人生ハードモードだ。

そのせいか卑屈な性格になり友人も居なくて、実の親からも見放された私は、ただひたすらに勉強に打ち込んだ。
頭の出来が良かった事だけは唯一の取り柄だろうか。
大学で知り合った東川と会社を起こし、仕事を軌道に乗せるまで働き通した。
美丈夫で人当たりも良い東川が会社の顔として動き、私は内部を担当している。

会社と家のみを行き来する私に東川が不憫に思っているのは感じていた。
だが、まさかお見合いをセッティングするとは誰が想像するだろうか。
今更この私に!
相手は得意先の受付嬢だと?
我が社の営業の奴らもよく噂している美女のはずだ。

「東川!何を考えてる。契約の不備に関しては違約金を発生させれば済む話だろう。私に恥をかかせるのが楽しいか!」

社長室で書類に目を通している東川に詰め寄る。

「そんな訳ないだろ。ただ違約金を支払わせるよりも、何か面白そうな事になる予感がしたんだよね。」

「面白いってお前!とにかく相手は24歳と若く、美人らしいじゃないか!私なんか…」

虫けらを見るような顔をされるに決まってる!
過去の女達のように…


「んー。この前さ、相手の子に会ったんだけど無反応だったんだよ!」

「はっ?」

「だから、このイケオジの俺を前にしても無表情で微動だにしないの!いくら俺が好みのタイプじゃ無かったとしても、あそこまでノーリアクションなんて初めてでさ。だったら西条にもノーリアクションなのかなぁて思って。」

「お前本人前によくそんな酷いこと言えるな。」

「正直者なんだよね、俺。陰で言うよりマシでしょ。」

笑いながら毒を吐く東川に呆れつつも、コイツとだからここまでやってこれたのだ。

「とにかく断ってくれ。私は忙しい。」

「ダメダメ。社長命令だよ。いいじゃない、たまには美女と食事でもすれば。ここ数年は風俗にも行ってないでしょ?素人童貞捨てるチャンスかもよー。あ、ちなみにいつも通りのスーツで行きなよ!」

「なっ!真昼間から風俗とか言うな。余計なお世話だ」

「はいはい。ごめんなさいね。てか俺も忙しいから話は終わり。お見合いは日曜の11時ね。気を遣わないように仲人たててないから一人で行って。遅刻厳禁で。」

言いたいことだけ言うと東川は私を社長室から追い出した。



まずい。
非常にまずい。
このままだと本当にお見合いをする事になるぞ。
私が?
顔面兵器と陰で呼ばれていた私がお見合いだと?
女と何を話すんだ?
人の顔を見るなり眉をしかめ、鼻をつまむような生物だぞ。

東川の言う通りに風俗にも通わなくなった。
元々あまり好きではないしな。
プロの風俗嬢でも私の顔を見るなり顔色を変え、早く終わらせようとする。
そんな態度ばかり取られて金を払ってまで通いたくはない。
もう若い時のような欲求もないから困ることもない。

会話もだが、服装だってどうすればいい?
東川はいつも通りのスーツというがお見合いで、こんな地味なスーツでよいのだろうか?
流石に一週間ではいつもの店でオーダーメイドは不可能だな。
せめてシャツとネクタイくらいはお洒落にしてみるか。
べ、別に意識してるわけではない。
ただの身だしなみとしてだな…
大人の常識だ。
お見合い場所も有名な老舗割烹料理らしいしな。


よし、今日は定時で帰るか。

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