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番外編
Happy Valentine's Day!
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2月14日 は世界各地で愛が誓われる日らしい。
手帳を見ながら、数年ぶりにバレンタインデーという日を意識した。
タローちゃん甘いもの好きだしなぁ。帰りにデパートにでも寄ってチョコを買おうかと思案していると、スマホの画面にメッセージが届く。
[急遽、20時までバイトが入りました。夕飯はハンバーグとミネストローネです。サラダは冷蔵庫にあります。]
ふむ。予定外に時間が出来たわね。せっかくだから手作りに変更しますか。
可愛いペットの喜ぶ顔を思い浮かべる。
そうと決まれば定時に帰れるように仕事を終わらせなきゃね。
香織は手帳を閉じて、ディスクの上にある資料へと意識を移した。
ーー
ーーーーー
僕がバイトを終えて休憩室に戻ると、店長と山田さんがいた。
「おう、岡田お疲れ!お前も今日入ってたんだな」
山田さんは以前香織さんとの関係を聞かれ、遠い親戚で訳あって一緒に暮らしていると伝えてからよく話しかけてくれる。何かと家に来たがるのは困るけど良い人だ。
「お疲れ様です。はい、三上さんが用事があるので、変わって欲しいと頼まれまして。」
「何っ!美穂ちゃんが用事だと?ぐっ…あわよくば…と思っていたが、クソッ。神はいないのか」
何か山田さんの様子がおかしいが、こんな時はあまり近づかないのが良いと今までの経験で学んでいる。
「いやー、急にシフト入れてごめんね。岡田君のおかげで助かったよ!」
店長が申し訳なさそうな顔をして、コーヒーを僕の前にある小さなテーブルに置いてくれた。
「あっ、ありがとうございます」
僕はコーヒーを手に取り、テーブル横の椅子に座る。
休憩室のコーヒーメーカーは店長のこだわりで良いものらしく、美味しいコーヒーが飲めるから嬉しい。
「あっ、そうそう。これ…山田君と岡田君にチョコ!いつもありがとうね!」
男性の店長が、ハートがいっぱいプリントされた箱を手渡してくる。
うん。さっきまでレジ前の棚に同じのが並んでいた気がするなぁ。
でも、甘いものが好きな僕としては嬉しいので、喜んで頂く。
「ありがとうございます。」
「あざーす!」
山田さんも嬉しそうだ。
「岡田君は誰かにチョコ貰った?」
店長がニコニコしながら聞いてくる。
「いえ。店長に頂いたこのチョコだけです」
「そっか…何かごめん。」
今まで女の子からチョコを貰った事が無いから何も感じていなかったけど、気を使わせてしまったみたいで申し訳ない。
「ぷっ、岡田…お前、やっぱり可哀想な奴なんだな」
「山田君は貰ったの?」
「も、もも、もちろんっすよ。2個貰いました。数は少ないけど、気持ちのこもったチョコですよ!」
「へぇ!本命チョコを二つも?山田君やるねー」
「凄いですね、山田さん!」
「ま、まぁな。大事なのは数より質だからな。岡田もいつかは貰えるといいな。ははは。」
ーーー母親と妹の家族愛が詰まったチョコは確かに気持ちがこもっている。嘘はついていない 、うん。
コーヒーを飲み終えて、帰宅準備を急ぐ。
今夜は20時までのシフトだったから、タイミングが合えば、香織さんと夕食を一緒に食べれるかもしれないと僕は足早に歩を進めた。
玄関を開けるとフワッと暖かい空気と共に、夕食に用意していたスープの香りが鼻先をくすぐる。
「ただいま帰りました。」
「タローちゃんお帰り!寒かったでしょ。夕食の準備してるから一緒に食べよう。」
「はい、じゃあ荷物を置いて手を洗ってきます」
香織さんが待っていてくれたのが嬉しくて、顔が緩む。
やはり1人で食べるより2人での食事は楽しいから。
自分の作った料理を目の前で美味しいと言って貰える喜びは、香織さんと暮らしてから知った。
父さんはあまり感情を表に出すほうではなかったし--。
もっと喜んで欲しくて、料理のレパートリーも増やしている。センスが無いから、盛り付けは図書館で借りた本を参考に勉強しているけど、なかなか難しい。
今日は香織さんが準備してくれたので、テーブル上の料理がお洒落に盛り付けられている。
僕がすると給食みたいになるのに……。
食事を終えると香織さんが席を立って、冷蔵庫から何かを取り出した。
「I'm so glad that I found you. Happy Valentine's Day!」
テーブルに置かれた赤いココットの中にはチョコムースとハートの形をしたイチゴが可愛く飾り付けされていた。
「これって…香織さんの手作りです…か?」
「うん、時間なくてあまり凝ったものじゃないけど。」
「う、嬉しいです!ありがとうございます!あと、さっきは何て言ったんですか?聞き逃しちゃってーー。」
「ん?I'm so glad that I found you. Happy Valentine's Day!」
--–あなたを見つけて良かった–--
ボンっと顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「ふふっ、食べましょ。」
香織さんが僕の為に作ってくれたチョコムースは甘くて、美味しくて、幸せな味がした…。
山田さん、僕も気持ちのこもったチョコ貰えました。
手帳を見ながら、数年ぶりにバレンタインデーという日を意識した。
タローちゃん甘いもの好きだしなぁ。帰りにデパートにでも寄ってチョコを買おうかと思案していると、スマホの画面にメッセージが届く。
[急遽、20時までバイトが入りました。夕飯はハンバーグとミネストローネです。サラダは冷蔵庫にあります。]
ふむ。予定外に時間が出来たわね。せっかくだから手作りに変更しますか。
可愛いペットの喜ぶ顔を思い浮かべる。
そうと決まれば定時に帰れるように仕事を終わらせなきゃね。
香織は手帳を閉じて、ディスクの上にある資料へと意識を移した。
ーー
ーーーーー
僕がバイトを終えて休憩室に戻ると、店長と山田さんがいた。
「おう、岡田お疲れ!お前も今日入ってたんだな」
山田さんは以前香織さんとの関係を聞かれ、遠い親戚で訳あって一緒に暮らしていると伝えてからよく話しかけてくれる。何かと家に来たがるのは困るけど良い人だ。
「お疲れ様です。はい、三上さんが用事があるので、変わって欲しいと頼まれまして。」
「何っ!美穂ちゃんが用事だと?ぐっ…あわよくば…と思っていたが、クソッ。神はいないのか」
何か山田さんの様子がおかしいが、こんな時はあまり近づかないのが良いと今までの経験で学んでいる。
「いやー、急にシフト入れてごめんね。岡田君のおかげで助かったよ!」
店長が申し訳なさそうな顔をして、コーヒーを僕の前にある小さなテーブルに置いてくれた。
「あっ、ありがとうございます」
僕はコーヒーを手に取り、テーブル横の椅子に座る。
休憩室のコーヒーメーカーは店長のこだわりで良いものらしく、美味しいコーヒーが飲めるから嬉しい。
「あっ、そうそう。これ…山田君と岡田君にチョコ!いつもありがとうね!」
男性の店長が、ハートがいっぱいプリントされた箱を手渡してくる。
うん。さっきまでレジ前の棚に同じのが並んでいた気がするなぁ。
でも、甘いものが好きな僕としては嬉しいので、喜んで頂く。
「ありがとうございます。」
「あざーす!」
山田さんも嬉しそうだ。
「岡田君は誰かにチョコ貰った?」
店長がニコニコしながら聞いてくる。
「いえ。店長に頂いたこのチョコだけです」
「そっか…何かごめん。」
今まで女の子からチョコを貰った事が無いから何も感じていなかったけど、気を使わせてしまったみたいで申し訳ない。
「ぷっ、岡田…お前、やっぱり可哀想な奴なんだな」
「山田君は貰ったの?」
「も、もも、もちろんっすよ。2個貰いました。数は少ないけど、気持ちのこもったチョコですよ!」
「へぇ!本命チョコを二つも?山田君やるねー」
「凄いですね、山田さん!」
「ま、まぁな。大事なのは数より質だからな。岡田もいつかは貰えるといいな。ははは。」
ーーー母親と妹の家族愛が詰まったチョコは確かに気持ちがこもっている。嘘はついていない 、うん。
コーヒーを飲み終えて、帰宅準備を急ぐ。
今夜は20時までのシフトだったから、タイミングが合えば、香織さんと夕食を一緒に食べれるかもしれないと僕は足早に歩を進めた。
玄関を開けるとフワッと暖かい空気と共に、夕食に用意していたスープの香りが鼻先をくすぐる。
「ただいま帰りました。」
「タローちゃんお帰り!寒かったでしょ。夕食の準備してるから一緒に食べよう。」
「はい、じゃあ荷物を置いて手を洗ってきます」
香織さんが待っていてくれたのが嬉しくて、顔が緩む。
やはり1人で食べるより2人での食事は楽しいから。
自分の作った料理を目の前で美味しいと言って貰える喜びは、香織さんと暮らしてから知った。
父さんはあまり感情を表に出すほうではなかったし--。
もっと喜んで欲しくて、料理のレパートリーも増やしている。センスが無いから、盛り付けは図書館で借りた本を参考に勉強しているけど、なかなか難しい。
今日は香織さんが準備してくれたので、テーブル上の料理がお洒落に盛り付けられている。
僕がすると給食みたいになるのに……。
食事を終えると香織さんが席を立って、冷蔵庫から何かを取り出した。
「I'm so glad that I found you. Happy Valentine's Day!」
テーブルに置かれた赤いココットの中にはチョコムースとハートの形をしたイチゴが可愛く飾り付けされていた。
「これって…香織さんの手作りです…か?」
「うん、時間なくてあまり凝ったものじゃないけど。」
「う、嬉しいです!ありがとうございます!あと、さっきは何て言ったんですか?聞き逃しちゃってーー。」
「ん?I'm so glad that I found you. Happy Valentine's Day!」
--–あなたを見つけて良かった–--
ボンっと顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「ふふっ、食べましょ。」
香織さんが僕の為に作ってくれたチョコムースは甘くて、美味しくて、幸せな味がした…。
山田さん、僕も気持ちのこもったチョコ貰えました。
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