異世界行っても怠惰を貫く。

産屋敷 九十九

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魔力無くても魔法は使える(仮)

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こりゃやべぇな。

私の中で徐々に現実味を帯びてきたのか、額からじわりと出現した汗が顎まで流れ、床にポツリと落ちた。

アレスから溢れるオーラは突風となって、周囲の本棚を叩きつけ、カウンターに積み上げられた書類の数々を巻きあげる。



「アレス様! 一体、どうなさったのですか⁉︎」



リーナは問うが、眼中にはないようでアレスの琥珀の瞳には、私しか映っていない。

琥珀の瞳が黒く濁り揺らめいている。

私に向けられたこの瞳と殺気の意味。

恐らく『口封じ』だろう。

アレスの瞳の中にやや迷いが見える。

口封じのために脅し続けるのか、今ここで殺すべきか。

大方、そんなところだろう。

やはり、エジプトとこの世界に繋がりがあるのか?

それに転移者が関係しているのだとしたら……?

転移者、私に知られては不利益なことでも起こるということか?

今は……考えてる暇はない。

力の差は歴然だ。

敵う相手ではないことはわかりきっている。

どうするどうするどうするどうするどうする、考えろ!

鼓膜にダットンダットンと打ち付ける自分の心臓音。

脳裏によぎる一つの可能性。

そうかっ!

私は古の魔書に挟まれた紙を取り、広げる。

そしてそこに描かれた魔法陣の上に立つ。




「無駄よ!」




アレスはグオンと風を切り、私に襲いかかろうと向かってくる。

何を勘違いしているんだろうか?

私が古の魔法を唱えるとでも思ってるんだろうか?

真面目にそんなの唱えてたら殺されるってマジで。

私には魔力がない。

だから、古の魔法を発動できる確率は極めて低い。

だが、そんな私でも発動できる唯一の魔法がある。







「崩壊せよ!」






私は閉じられた古の魔書を片手にアレスにそう言い放った。




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