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解放で開放。ガルシア、次は貴様の番だ!
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『嘘泣き(仮)』の発動準備をするために、私は歯をグッと噛み締め、欠伸をする。
歯を噛み締めたのは、魔王に欠伸を悟られないようにするため、そして欠伸を噛み殺すためだ。
欠伸をするたびに、頰がプクプク動いてしまう。
両頬が動いているのが、どうか魔王に伝わりませんように。
頼む、見逃してくれぇ………。
欠伸を13回繰り返し、ようやく視界が涙で歪んできた。
普通だったら、5回くらい欠伸すれば涙が出てくるはずだが、私の場合、ドライアイなのかなかなか目が潤ってこない。
13回も噛み殺すのを繰り返したら、流石に顎が痛くなってきたよ。
まぁいい、これで準備ができたわけだ。
次は表情作りだな。
表情は『八兵法』に限るぜ。
まず眉毛を八の字にして、口をへの字、目を細め、ぎゅっと瞑る。
ポロリと大粒の涙が両目からこぼれ落ちる。
最後に、泣き出すまいと声を押し殺す風にゴクリとやや大袈裟に唾を飲み込んだ。
瞬間、魔王は目を丸くし、つり上がった眉を下げ、はぁっと息を吐いた。
そして、魔王は鷲掴みにしていた手を緩めながら、私を下ろし床に立たせた。
「すまんな……おまえは力を持たぬ人間だというのに、少々やりすぎてしまった」
私はうつむき、無言で首を横に振る。
ふっ………決まったぜ。
見たか! 私の女優魂(仮)を!
「訳を聞こうともせず、本当にすまなかったな。ここで何をやらかしたのか教えてくれるか?」
魔王は私の頭を撫でながらそう言った。
………『私が』やらかしたというのが前提なのか。
まぁいい。
ガルシア、貴様が魔王に裁かれる時が来たぞ!
フハハハハハハハハハハ!
内心、ガルシアがどの様に裁かれるのかを想像し、クスリと笑い、袖で涙を拭った。
「わかった。実はな」
とすぐに本題入った私に魔王が『え?』とハテナマークを貼り付けたような顔でこちらを見てきた。
ピクリと引きつりそうな顔を必死でこらえた。
や、ヤバイ!
泣き顔から一瞬にして真顔になって話し始めたから、流石にバレたか?
魔王の手から解放され、心も開放的な気持ちになりすぎたか?
ここで動じたらさっきの努力が水の泡、気にせず話すとしよう。
「実はな──────」
私は、客間が崩壊するまでの経緯を話した。
異世界から来たことや元いた世界に戻るために自衛できるくらいの魔法を身につけ戻る手段を探しに出たいということ。
そのために、ローレンス図書館へ行って古の魔書を借りに行ったこと。
そして、
「魔書を開いたとこまでは良かったんだが、さっぱり読めんくてな。だからガルシアに読み上げてもらって、呪文を唱えることにしたんだ。そしたらこうなった」
「ガルシア、おまえだったか………」
「よくもお嬢様をこんな危険にさらして………陛下の側近とあろう者が聞いて呆れますね。あなたもここにいたというのに、陛下に何の説明もせず、お嬢様に全ての罪を着せて。自分は何も知らないというふうな顔をして……」
ギロリと二人がガルシアにトゲトゲしい視線をぶつけた。
ガルシアの勇ましいプレートアーマー(全身の鎧)がカタカタと情けない音を立てている。
フッ、決まったぜ。
ガルシアよ、次はおまえが痛い目に遭う番だぞ。
私はリーナと魔王の背後で、にやりと細く笑んだのだった。
歯を噛み締めたのは、魔王に欠伸を悟られないようにするため、そして欠伸を噛み殺すためだ。
欠伸をするたびに、頰がプクプク動いてしまう。
両頬が動いているのが、どうか魔王に伝わりませんように。
頼む、見逃してくれぇ………。
欠伸を13回繰り返し、ようやく視界が涙で歪んできた。
普通だったら、5回くらい欠伸すれば涙が出てくるはずだが、私の場合、ドライアイなのかなかなか目が潤ってこない。
13回も噛み殺すのを繰り返したら、流石に顎が痛くなってきたよ。
まぁいい、これで準備ができたわけだ。
次は表情作りだな。
表情は『八兵法』に限るぜ。
まず眉毛を八の字にして、口をへの字、目を細め、ぎゅっと瞑る。
ポロリと大粒の涙が両目からこぼれ落ちる。
最後に、泣き出すまいと声を押し殺す風にゴクリとやや大袈裟に唾を飲み込んだ。
瞬間、魔王は目を丸くし、つり上がった眉を下げ、はぁっと息を吐いた。
そして、魔王は鷲掴みにしていた手を緩めながら、私を下ろし床に立たせた。
「すまんな……おまえは力を持たぬ人間だというのに、少々やりすぎてしまった」
私はうつむき、無言で首を横に振る。
ふっ………決まったぜ。
見たか! 私の女優魂(仮)を!
「訳を聞こうともせず、本当にすまなかったな。ここで何をやらかしたのか教えてくれるか?」
魔王は私の頭を撫でながらそう言った。
………『私が』やらかしたというのが前提なのか。
まぁいい。
ガルシア、貴様が魔王に裁かれる時が来たぞ!
フハハハハハハハハハハ!
内心、ガルシアがどの様に裁かれるのかを想像し、クスリと笑い、袖で涙を拭った。
「わかった。実はな」
とすぐに本題入った私に魔王が『え?』とハテナマークを貼り付けたような顔でこちらを見てきた。
ピクリと引きつりそうな顔を必死でこらえた。
や、ヤバイ!
泣き顔から一瞬にして真顔になって話し始めたから、流石にバレたか?
魔王の手から解放され、心も開放的な気持ちになりすぎたか?
ここで動じたらさっきの努力が水の泡、気にせず話すとしよう。
「実はな──────」
私は、客間が崩壊するまでの経緯を話した。
異世界から来たことや元いた世界に戻るために自衛できるくらいの魔法を身につけ戻る手段を探しに出たいということ。
そのために、ローレンス図書館へ行って古の魔書を借りに行ったこと。
そして、
「魔書を開いたとこまでは良かったんだが、さっぱり読めんくてな。だからガルシアに読み上げてもらって、呪文を唱えることにしたんだ。そしたらこうなった」
「ガルシア、おまえだったか………」
「よくもお嬢様をこんな危険にさらして………陛下の側近とあろう者が聞いて呆れますね。あなたもここにいたというのに、陛下に何の説明もせず、お嬢様に全ての罪を着せて。自分は何も知らないというふうな顔をして……」
ギロリと二人がガルシアにトゲトゲしい視線をぶつけた。
ガルシアの勇ましいプレートアーマー(全身の鎧)がカタカタと情けない音を立てている。
フッ、決まったぜ。
ガルシアよ、次はおまえが痛い目に遭う番だぞ。
私はリーナと魔王の背後で、にやりと細く笑んだのだった。
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