17 / 52
【陛下視点】子供を見守る親の気持ちとは、こんな気持ちなのだろうか?
しおりを挟む
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグモグモグモグモグ‥‥‥
人間が前回よりもでかい腹の音をならしたので、また、飯をご馳走してやっている。
しかし‥‥‥よく食べるものだな。
魔族は空気中の魔素をエネルギー源として体内に取り込み、それを食事代わりとしているため、食事は趣味程度に食べるだけである。
よって人間のように空腹を覚えたり、食事をエネルギー源とはしない。
とはいえ、目の前にあるこの光景は異常と言えよう。
目の前には、積み上げられた大量の皿。
人間とは思えぬほどの食欲である。
いや、そもそも人間かどうかも疑わしいような気がしないでもない。
もしや、ドラゴンが人間に化けている?
‥‥‥‥なわけないか。
そもそも、この人間からは、魔力そのものが感じられないのだから。
今回の騒動もそれが原因でもある。
この魔大陸以外の全ての大陸の人間にも魔族にも魔核と呼ばれるものが体内に存在する。
魔核は魔力を放出する役割がある。
魔力は、ある程度鍛錬を積んでいる者であれば、制御が可能である。
しかし、余のように魔力を大量に有している者であれば、相手が制御し魔力を完全に魔核に隠していたとしてもたやすく見破れる。
だからこそ、どんな敵が来ようとも魔力をすぐに感知し、対向できていた。
しかし、今回のケースは違う。
そもそも、この人間には魔核が存在していなければ、魔力も存在していない極めて例外で無力なのである。
「あの、陛下、食べにくいんだが‥‥‥」
人間は顔をやや顰めながら言った。
「気にせず食うがいい」
「陛下と呼ばれる、位の高い人が目の前にいたら、緊張して食事が喉を通らないだろうよ‥‥‥‥」
そう言いながらも一定のペースを保ちながら食事を続けているのだから、笑えてくる。
「食事は喉を通っているように見えるが?」
悪戯っぽくそう返せば、人間は眉間にしわを寄せた。
「例えですよ、例え。とにかく、このペースでは腹は満たされんのよ」
「腹を満たせるほどの食材はおまえが食い尽くせんくらいある。急がず好きなだけ食え」
人間がハッ! とした表情をした。
「豚のようになるまで私を太らせ、最終的に私が食材になるということはないよな?」
にらんでいるつもりなのだろうが、にらみを上手くきかせられないのは、経験値が足りないのだろうか?
‥‥‥ククククク。
実に面白い。
ここまでコロコロと表情が変わるのは面白いものだな。
想像力も豊かだ。
まぁ、子供なのだからそういうものなのだろう。
もっといろんな顔が見てみたくなるな。
「‥‥‥だとしたら、どうする?」
口の端を不気味な程までつり上げてにやりと笑みを浮かべるその顔は、誰が見ても実に不気味であろうと思う。
余の不気味な顔を見て危険を察知したようだ。
感情が全て顔に出るのだからわかりやすい。
人間は、食堂の奥窓まで全力で走った。
顔の前で腕をクロスしその窓に体当たりする。
ガッシャーーーーーーーーーン!
硝子を突き破って人間の姿が視界から消えた。
その後を追って、リーナが素早く人間の襟を掴み引き上げた。
「ぐえッ!」
「大丈夫ですか? お嬢様」
「陛下、人間であるお嬢様に魔力覇気を浴びせて試そうなどとしてはいけませんよ。しかも食事中に‥‥‥‥」
覇気は出さぬように制御していたはずなのに、うっかり出てしまったみたいだ。
まぁ、魔族や勇者相手に放出する魔王覇気と雑魚共相手に放出する魔力覇気を間違えなかっただけでもましか。
「すまん、リーナ。相手を試すには、気が緩んでいるときこそが見極めやすいというものだ」
「‥‥‥‥左様でございますか」
「だが、これで安心できただろう? この人間が敵ではないということがな」
これで、リーナの人間に対する警戒を解くことが出来たわけだ。
人間の面白い反応も見れたことだし、リーナの誤解も解け、一石二鳥というわけだ。
人間に目を移すと、こちらをギロリとにらんでいた。
おぉ、ちょっとは睨みに磨きがかかったようだ。
子供の成長は早いものだな。
ジーーーー。
子供の視線が痛い。
いや、攻撃されたわけではないが痛い。
‥‥‥‥少々、子供相手にやり過ぎたか。
今日は聞き取りできなさそうだ。
だが、この感じはなんなのだろうか?
胸騒ぎのようなざわざわしたような違和感。
ただ一つ確かなことは、この人間は魔核と魔力がない。
そういう意味では無力である。
しかし、先ほど余が魔力覇気を浴びせてしまったときのあの素早い判断と行動力。
普通なら、腰を抜かすか気絶のどちらかなのにあの人間は走った。
あれは、それなりに鍛錬を積んでいる者でないと出来ないことだ。
この食堂は、8階。
飛び降りるのに、それなりの勇気がいることだろう。
無鉄砲は覚悟ではない。
覚悟とは、すぐに出来るものではない。
前もってしておくものである。
あの人間からは、恐怖心は一切読み取れない。
魔核も魔力も感じられないのは、余以上の力を有しているということなのだろうか?
それとも、魔核や魔力以外の何かを持っているのだろうか?
少しは警戒しておくべきかもしれないな。
今までの人間の起こした騒動をふと思い出す。
‥‥‥‥‥前言撤回。
敵ではないな。
余の考えすぎだ。
モグモグモグモグ、ごっくん。
モグモグモグモグモグモグモグモグ‥‥‥
人間が前回よりもでかい腹の音をならしたので、また、飯をご馳走してやっている。
しかし‥‥‥よく食べるものだな。
魔族は空気中の魔素をエネルギー源として体内に取り込み、それを食事代わりとしているため、食事は趣味程度に食べるだけである。
よって人間のように空腹を覚えたり、食事をエネルギー源とはしない。
とはいえ、目の前にあるこの光景は異常と言えよう。
目の前には、積み上げられた大量の皿。
人間とは思えぬほどの食欲である。
いや、そもそも人間かどうかも疑わしいような気がしないでもない。
もしや、ドラゴンが人間に化けている?
‥‥‥‥なわけないか。
そもそも、この人間からは、魔力そのものが感じられないのだから。
今回の騒動もそれが原因でもある。
この魔大陸以外の全ての大陸の人間にも魔族にも魔核と呼ばれるものが体内に存在する。
魔核は魔力を放出する役割がある。
魔力は、ある程度鍛錬を積んでいる者であれば、制御が可能である。
しかし、余のように魔力を大量に有している者であれば、相手が制御し魔力を完全に魔核に隠していたとしてもたやすく見破れる。
だからこそ、どんな敵が来ようとも魔力をすぐに感知し、対向できていた。
しかし、今回のケースは違う。
そもそも、この人間には魔核が存在していなければ、魔力も存在していない極めて例外で無力なのである。
「あの、陛下、食べにくいんだが‥‥‥」
人間は顔をやや顰めながら言った。
「気にせず食うがいい」
「陛下と呼ばれる、位の高い人が目の前にいたら、緊張して食事が喉を通らないだろうよ‥‥‥‥」
そう言いながらも一定のペースを保ちながら食事を続けているのだから、笑えてくる。
「食事は喉を通っているように見えるが?」
悪戯っぽくそう返せば、人間は眉間にしわを寄せた。
「例えですよ、例え。とにかく、このペースでは腹は満たされんのよ」
「腹を満たせるほどの食材はおまえが食い尽くせんくらいある。急がず好きなだけ食え」
人間がハッ! とした表情をした。
「豚のようになるまで私を太らせ、最終的に私が食材になるということはないよな?」
にらんでいるつもりなのだろうが、にらみを上手くきかせられないのは、経験値が足りないのだろうか?
‥‥‥ククククク。
実に面白い。
ここまでコロコロと表情が変わるのは面白いものだな。
想像力も豊かだ。
まぁ、子供なのだからそういうものなのだろう。
もっといろんな顔が見てみたくなるな。
「‥‥‥だとしたら、どうする?」
口の端を不気味な程までつり上げてにやりと笑みを浮かべるその顔は、誰が見ても実に不気味であろうと思う。
余の不気味な顔を見て危険を察知したようだ。
感情が全て顔に出るのだからわかりやすい。
人間は、食堂の奥窓まで全力で走った。
顔の前で腕をクロスしその窓に体当たりする。
ガッシャーーーーーーーーーン!
硝子を突き破って人間の姿が視界から消えた。
その後を追って、リーナが素早く人間の襟を掴み引き上げた。
「ぐえッ!」
「大丈夫ですか? お嬢様」
「陛下、人間であるお嬢様に魔力覇気を浴びせて試そうなどとしてはいけませんよ。しかも食事中に‥‥‥‥」
覇気は出さぬように制御していたはずなのに、うっかり出てしまったみたいだ。
まぁ、魔族や勇者相手に放出する魔王覇気と雑魚共相手に放出する魔力覇気を間違えなかっただけでもましか。
「すまん、リーナ。相手を試すには、気が緩んでいるときこそが見極めやすいというものだ」
「‥‥‥‥左様でございますか」
「だが、これで安心できただろう? この人間が敵ではないということがな」
これで、リーナの人間に対する警戒を解くことが出来たわけだ。
人間の面白い反応も見れたことだし、リーナの誤解も解け、一石二鳥というわけだ。
人間に目を移すと、こちらをギロリとにらんでいた。
おぉ、ちょっとは睨みに磨きがかかったようだ。
子供の成長は早いものだな。
ジーーーー。
子供の視線が痛い。
いや、攻撃されたわけではないが痛い。
‥‥‥‥少々、子供相手にやり過ぎたか。
今日は聞き取りできなさそうだ。
だが、この感じはなんなのだろうか?
胸騒ぎのようなざわざわしたような違和感。
ただ一つ確かなことは、この人間は魔核と魔力がない。
そういう意味では無力である。
しかし、先ほど余が魔力覇気を浴びせてしまったときのあの素早い判断と行動力。
普通なら、腰を抜かすか気絶のどちらかなのにあの人間は走った。
あれは、それなりに鍛錬を積んでいる者でないと出来ないことだ。
この食堂は、8階。
飛び降りるのに、それなりの勇気がいることだろう。
無鉄砲は覚悟ではない。
覚悟とは、すぐに出来るものではない。
前もってしておくものである。
あの人間からは、恐怖心は一切読み取れない。
魔核も魔力も感じられないのは、余以上の力を有しているということなのだろうか?
それとも、魔核や魔力以外の何かを持っているのだろうか?
少しは警戒しておくべきかもしれないな。
今までの人間の起こした騒動をふと思い出す。
‥‥‥‥‥前言撤回。
敵ではないな。
余の考えすぎだ。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる