警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

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兄弟の絆、そして決意 -兄の過去-

第九話 動く③

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「柊木直哉の息子の……柊木正義くん。いや、今は高良正人くん、か……」

一体どこまで知られているんだろう。初対面の相手に自分の本名をさらりと述べられ、背筋がぞわりとした。

「調べたんですね……俺のことを」

「じゃなきゃ、君に声かけないでしょ? それよりさ、犯人は君のお父さんじゃなくて、別にいる。そして、その犯人は……未だに捕まっていない」

 カランと氷が溶ける音がやけに室内に響いた。

「だから、協力しない? 私たち……」

(協力?)

「どういうこと、ですか? こちらには利があっても、貴女にはないように思えるんですが……」

「あるわよ。私が君の真犯人探しを手伝う代わりに、君が超能力者の情報を集めるの」

(そんな無茶な⁉︎)

「ハァ⁉︎ ただの中学生にそんな高度なことを求められても困るんですけど……」

俺以外の超能力者にも、まだ出会えていないのに……。そんな無茶な。

「情報収集するのは、今じゃない。君が警察官になって警視庁で働くようになってからの話。それなら、問題ないでしょ?」

「問題多ありですって! 何で俺が警察官になるのが前提なんですか⁉︎」

「君は!」

バンッと目の前の女がテーブルを叩いた。その音に驚いて、俺は口を閉じる。

「君は今、お父さんの情報を探しているね? でも、どうだった? 何か目新しい情報は……見つかった?」

「そ、れは……」

痛いところを突かれて、俺は口籠る。

「ない、よね?」

「つっ……!」

「なら、事件資料の集まる警視庁はどうかな? そこの方が、より正確な情報があると思わない?」

「そりゃ思いますけど! 貴女は簡単に言いますが、警察官になるまでが大変なんじゃないんですか」

「そこは親子の絆とかで頑張って乗り越えてよ」

「そんな無茶な……」

無茶苦茶なことを言ってのける女に俺は驚きを通り越し、呆れて溜め息を吐いた。

「ところで、何故……超能力者の情報を集めているんですか?」

「尊敬する上司からの指示よ。何故かは、私にもわからないわ。うちは情報屋をやっているのだけど、お金になるからそういう情報も集めているんだと思うわ」

「情報屋をやってるくらいなら、頭の回転も早そうですし、貴女が警察官になればいいんじゃないんですか?」

「情報屋は、裏組織よ。警察官には慣れても、簡単に警視庁に潜り込めるわけないじゃない。だから貴女に頼んでるの! 警視庁に就職したらサポートもするわ!」

 女の必死さに、俺はちょっと引いてしまい仰反る。

「何で、俺なんですか? 他にもいるでしょう……」

「私の感よ。これでも、よく当たるのよ?」

「女の感ってやつですか?」

「えぇ、そうよ!」

(大丈夫かなぁ……この人)

「それに……、真犯人の情報を掴んでるって言ったら、その分、必死に仕事をこなしてくれそうだからよ」

女がにたりと暗い笑みをこちらに向けてきて、俺は緊張でごくりとのどを鳴らした。

「何を、知ってる?」

「真犯人の超能力はね、"人体発火"だよ。人体のみを発火させる能力を持つのが犯人よ」
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