83 / 99
File1 自覚無き殺人犯
第七十話 事件解決の裏側5
しおりを挟む
追跡装置で路地裏を覗くが、誰もいなかった。そこの先は抜け道となっており、細く複雑な迷路のようだ。課長と服部はこの奥へと姿を消したのか、どこか建物内に入ってしまったのか。それとも、服部の能力だったのか。
追跡装置が特定されぬように、路地裏まで入っていかなかったのが仇となったようだ。椿は内心舌打ちをついた。だが、いまは悔やんでいる暇などない、あとにしようと素早く切り替え、追跡装置を操作する。
「一体、どこまで行くノダ?」
困惑した表情で椿は呟くが、目を泳がせることなく平静を取り繕い、前の画面に集中する。
追跡装置のズーム機能を使用し、なるべく遠くから黒塗りのセンチュリーを追う。課長と服部の行方は気になるものの、椿は優先順位を士郎に切り替えた。
追跡からおよそ五十分が経過した。何かがおかしいと椿は眉を潜める。それもそのはず、追跡対象の車はどこかに止まることもなく、都内をぐるぐるとまわっているだけのようなのだ。それは、人物か場所を探すための行動なのか───?
それからしばらくして、車が建物内に入っていった。廃墟でもなく、工場でもなく、マンションやホテルでもなかった。意外な場所に椿は目を見開く。
「タワー……パーキング………?」
士郎の運転する車が入っていったのは、普通のタワーパーキングだった。
『ジジジジ……ザザザザザーー……』
「そんナ⁉︎」
モニターが灰色の砂嵐に覆われ、椿が焦って立ち上がる。画面を叩くが、景色を映さない。パソコン画面にはErrorの赤い点滅文字。発信器の赤い点の消滅が確認された。
椿は力が抜け、倒れるように椅子にもたれかかった。
「また、駄目だっタ……」
項垂れた椿の膝を濡らすのは、大粒の涙だった。
──
────
──────
全身黒ずくめで鬼のような黒のお面をつけた高身長の人物が、雑居ビルの屋上に立つ。片手には銃が握られている。
構えて狙いを定める。狙うは鳥の後頭部。パンッとクラッカーのような気の抜けた音が一度空に響く。弾を貫通した鳥は広げた羽を折りたたんで、落ちてゆく。お面の人物はスコープで下を覗き込み、鳥がコンクリートにあるのを確認する。
ふぅーと息を吐いて手の甲で汗を拭う素振りをすると、お面の人物は、携帯電話を取り出した。
「追跡装置、処理完了ッス!」
「有難う。助かるよ」
電話の相手は、透だった。
追跡装置が特定されぬように、路地裏まで入っていかなかったのが仇となったようだ。椿は内心舌打ちをついた。だが、いまは悔やんでいる暇などない、あとにしようと素早く切り替え、追跡装置を操作する。
「一体、どこまで行くノダ?」
困惑した表情で椿は呟くが、目を泳がせることなく平静を取り繕い、前の画面に集中する。
追跡装置のズーム機能を使用し、なるべく遠くから黒塗りのセンチュリーを追う。課長と服部の行方は気になるものの、椿は優先順位を士郎に切り替えた。
追跡からおよそ五十分が経過した。何かがおかしいと椿は眉を潜める。それもそのはず、追跡対象の車はどこかに止まることもなく、都内をぐるぐるとまわっているだけのようなのだ。それは、人物か場所を探すための行動なのか───?
それからしばらくして、車が建物内に入っていった。廃墟でもなく、工場でもなく、マンションやホテルでもなかった。意外な場所に椿は目を見開く。
「タワー……パーキング………?」
士郎の運転する車が入っていったのは、普通のタワーパーキングだった。
『ジジジジ……ザザザザザーー……』
「そんナ⁉︎」
モニターが灰色の砂嵐に覆われ、椿が焦って立ち上がる。画面を叩くが、景色を映さない。パソコン画面にはErrorの赤い点滅文字。発信器の赤い点の消滅が確認された。
椿は力が抜け、倒れるように椅子にもたれかかった。
「また、駄目だっタ……」
項垂れた椿の膝を濡らすのは、大粒の涙だった。
──
────
──────
全身黒ずくめで鬼のような黒のお面をつけた高身長の人物が、雑居ビルの屋上に立つ。片手には銃が握られている。
構えて狙いを定める。狙うは鳥の後頭部。パンッとクラッカーのような気の抜けた音が一度空に響く。弾を貫通した鳥は広げた羽を折りたたんで、落ちてゆく。お面の人物はスコープで下を覗き込み、鳥がコンクリートにあるのを確認する。
ふぅーと息を吐いて手の甲で汗を拭う素振りをすると、お面の人物は、携帯電話を取り出した。
「追跡装置、処理完了ッス!」
「有難う。助かるよ」
電話の相手は、透だった。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

”その破片は君を貫いて僕に突き刺さった”
飲杉田楽
ミステリー
"ただ恋人に逢いに行こうとしただけなんだ"
高校三年生になったばかり東武仁は授業中に謎の崩落事故に巻き込まれる。街も悲惨な姿になり友人達も死亡。そんな最中今がチャンスだとばかり東武仁は『彼女』がいる隣町へ…
2話からは隣町へ彼女がいる理由、事故よりも優先される理由、彼女の正体、など、現在と交差しながら過去が明かされて行きます。
ある日…以下略。があって刀に貫かれた紫香楽 宵音とその破片が刺さった東武仁は体から刀が出せるようになり、かなり面倒な事件に巻き込まれる。二人は刀の力を使って解決していくが…
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる