警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

文字の大きさ
上 下
76 / 99
File1 自覚無き殺人犯

第六十三話 収束1

しおりを挟む
夕方、例の人物に連絡を取れば、すでに根回ししてあると返答がきた。一体どこから情報を得ているんだろうかと疑問に思ったけど、それを聞いても真面な返事は来ないと知っていたので、聞くのは辞めた。





翌日───。

「おはよう御座います!」

「おはよう、後輩。もう大丈夫なのか?」

「はい! ご心配おかけしました」

雑務課へ入ってすぐ挨拶すれば、士郎さんが一番に返してくれた。それに続いて、課長、ソフィアさん、歩さん、椿先輩と挨拶を交わした。

和やかな時間はすぐに終わりを告げ、張り詰めた空気に包まれる。それは、本題に入ったからだ───服部の。

「これ見てくれるー?」

棒付きの飴を咥えたソフィアさんが服部の取り調べ室の映像をパソコンに映し出した。

そこには、苛々し貧乏ゆすりをしながら黙秘を続ける服部がいた。質問に一切答えようとしない。

……

…………

………………

『うっせーぞゴルァァアァァ‼︎   加藤だっつってンだろ⁉︎  アイツが殺したんだ‼︎』

興奮した服部が椅子から立ち上がってパイプ椅子を蹴飛ばす。

『大人しくしなさい!』

『押さえろ‼︎』

服部を三人がかりで床に押さえつけた。

『は、離せ! な、ん、で俺が⁉︎  クソクソクソクソ‼︎』

いまだに興奮が収まりきらない服部の目は血走り、食いしばった口からは涎が流れて床に落ちる。

そして、それは起こった。服部を取り押さえる三人の警官は顔を見合わせる。

『なんか、ちっさくなってないか?』

『そんなはずは……』

『いやでも』

服部を取り押さえる三人の警官だからこそ、小さな変化に気づけたんだろう。映像からは変化なんて全くわからない。

『お、おい!』

『なんだ⁉︎』

『一旦、離れろ‼︎』

服部の急激な変化に戸惑う警官は、その指示に素直に従い、そろそろと服部から距離をとる。



『ぷふ、ゔぁーう゛ぇーん。あ゛ぁーん………』

『どういう、ことだ……』




戸惑うのも無理はない。
そこに、服部の姿はなく、かわりに赤ん坊がいたのだから。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

深淵の迷宮

葉羽
ミステリー
東京の豪邸に住む高校2年生の神藤葉羽は、天才的な頭脳を持ちながらも、推理小説の世界に没頭する日々を送っていた。彼の心の中には、幼馴染であり、恋愛漫画の大ファンである望月彩由美への淡い想いが秘められている。しかし、ある日、葉羽は謎のメッセージを受け取る。メッセージには、彼が憧れる推理小説のような事件が待ち受けていることが示唆されていた。 葉羽と彩由美は、廃墟と化した名家を訪れることに決めるが、そこには人間の心理を巧みに操る恐怖が潜んでいた。次々と襲いかかる心理的トラップ、そして、二人の間に生まれる不穏な空気。果たして彼らは真実に辿り着くことができるのか?葉羽は、自らの推理力を駆使しながら、恐怖の迷宮から脱出することを試みる。

”その破片は君を貫いて僕に突き刺さった”

飲杉田楽
ミステリー
"ただ恋人に逢いに行こうとしただけなんだ" 高校三年生になったばかり東武仁は授業中に謎の崩落事故に巻き込まれる。街も悲惨な姿になり友人達も死亡。そんな最中今がチャンスだとばかり東武仁は『彼女』がいる隣町へ… 2話からは隣町へ彼女がいる理由、事故よりも優先される理由、彼女の正体、など、現在と交差しながら過去が明かされて行きます。 ある日…以下略。があって刀に貫かれた紫香楽 宵音とその破片が刺さった東武仁は体から刀が出せるようになり、かなり面倒な事件に巻き込まれる。二人は刀の力を使って解決していくが…

ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。  新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。  現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。  過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。  ――アリアドネは嘘をつく。 (過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

処理中です...