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File1 自覚無き殺人犯
第五十五話 情報共有2 ─驚愕の事実─
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「おまえ大丈夫って言うけど、一応病院行った方がよくないか?」
「行ってもどうせアンタと同じ診断内容を聞かされて終わりだろ? 傷ついたのは身体じゃなくて、多分、中の方だしな」
弟が自身の身体の中心をトントンと示指で突いた。
「それに、ソフィアさん言ってたろ?」
え⁉︎ 俺、うっかり弟のこと話したっけ⁉︎
「……何か言ってたっけ?」
と、ひやひやしながら俺は問う。
「……『また二つになってる』『ヒビもなくなっている』って。ヒビのことはアンタ自身の魂のことだろうけど、魂が二つあることを確認した上で、ヒビがなくなっているって言ったってことは、俺の魂も傷ついていないってことだ。……ていうかそこは頭、まわんねーのな」
「うぐッ! だ、だっておまえみたいに常に頭フル回転させてるわけじゃないし……」
「フル回転させてもたかが知れてると思うけど?」
「……なぁ、お兄ちゃんそろそろ泣いてもいいか?」
マジで泣きそう。正論だからまともに言い返せないのが辛い。
「泣くなよ気色悪い。何が悲しくて大の大人の男が泣くとこ見なきゃなんねーんだよ」
ハァと弟は苛立ちながらため息を吐いた。
「話戻すけど、俺が吐血したのはアンタがソフィアさんに声をかけられる前だ。でも魂に傷が無かったってことは、魂に傷がつかない程度のダメージだったってことだ」
「じゃあ、逆に魂に傷がついたら、俺みたいに意識が戻らない状態になるってことか」
身体には異常が無くて、意識が戻らないって変な感じだよなぁ……それが魂が傷ついたことが理由ってのも現実味がないというか。
「そういうことだろうな。そういえば、あん時よく騙せたよなぁ~?」
ニタァとした弟の顔が俺の顔面あと数センチメートルのところまで近づいてきた。
「な、何の話だ?」
ヤバイ! バレる。これは絶対バレる。
俺は、自分の顔がピクピクと引きつるのを感じた。
「とぼけんなよ、すぐ顔に出んのに何で上手く切り抜けられたのかなぁ~って。電話の時の」
「えっと……それは───」
***
結局、俺は洗いざらい吐かされてしまった。
俺の唯一、誰にも知られていなかった秘密の特技がぁ……。
「アンタ切羽詰まると凄え頭回るよな……それを普段から生かせていたら、中学高校の成績も──」
「いや、それとこれは別だろ? おまえの命に関わることなんだから、必死さの度合いが違う……」
「……何でこの人、未だに彼女できてないんだろ」
弟のその声は、あまりにも小さすぎて俺の耳では拾えなかった。
「え? 何か言ったか?」
「……別に」
「それより、今は能力発動してんのか?」
「まぁ、一応な」
そりゃ今日は共有してないし……。
本当は共有を使った方が、弟の存在がバレるリスクも避けられるしその方がいいんだろうけど、病み上がりでそれをやるのは危険を伴うからな。
「じゃあ、このまま話進めるぞ」
弟は前傾姿勢をとり、低い声で聞いてきた。
「服部の件はどうなった?」
その声の低さは、真剣に話を聞こうとしているが故のだろう。
「まず、それ全部説明する前に二つだけ言わせてくれ」
ん? と、弟は眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「服部和毅は、いま赤ん坊になってるらしい」
「ハァ?」
「あと、うちの課長、非能力者って言ってたけど、あれ絶対嘘だぞ。だって視えたし」
「ハァ⁉︎」
弟の怒鳴り声にも近い驚きの声が、リビングに響き渡った。
「行ってもどうせアンタと同じ診断内容を聞かされて終わりだろ? 傷ついたのは身体じゃなくて、多分、中の方だしな」
弟が自身の身体の中心をトントンと示指で突いた。
「それに、ソフィアさん言ってたろ?」
え⁉︎ 俺、うっかり弟のこと話したっけ⁉︎
「……何か言ってたっけ?」
と、ひやひやしながら俺は問う。
「……『また二つになってる』『ヒビもなくなっている』って。ヒビのことはアンタ自身の魂のことだろうけど、魂が二つあることを確認した上で、ヒビがなくなっているって言ったってことは、俺の魂も傷ついていないってことだ。……ていうかそこは頭、まわんねーのな」
「うぐッ! だ、だっておまえみたいに常に頭フル回転させてるわけじゃないし……」
「フル回転させてもたかが知れてると思うけど?」
「……なぁ、お兄ちゃんそろそろ泣いてもいいか?」
マジで泣きそう。正論だからまともに言い返せないのが辛い。
「泣くなよ気色悪い。何が悲しくて大の大人の男が泣くとこ見なきゃなんねーんだよ」
ハァと弟は苛立ちながらため息を吐いた。
「話戻すけど、俺が吐血したのはアンタがソフィアさんに声をかけられる前だ。でも魂に傷が無かったってことは、魂に傷がつかない程度のダメージだったってことだ」
「じゃあ、逆に魂に傷がついたら、俺みたいに意識が戻らない状態になるってことか」
身体には異常が無くて、意識が戻らないって変な感じだよなぁ……それが魂が傷ついたことが理由ってのも現実味がないというか。
「そういうことだろうな。そういえば、あん時よく騙せたよなぁ~?」
ニタァとした弟の顔が俺の顔面あと数センチメートルのところまで近づいてきた。
「な、何の話だ?」
ヤバイ! バレる。これは絶対バレる。
俺は、自分の顔がピクピクと引きつるのを感じた。
「とぼけんなよ、すぐ顔に出んのに何で上手く切り抜けられたのかなぁ~って。電話の時の」
「えっと……それは───」
***
結局、俺は洗いざらい吐かされてしまった。
俺の唯一、誰にも知られていなかった秘密の特技がぁ……。
「アンタ切羽詰まると凄え頭回るよな……それを普段から生かせていたら、中学高校の成績も──」
「いや、それとこれは別だろ? おまえの命に関わることなんだから、必死さの度合いが違う……」
「……何でこの人、未だに彼女できてないんだろ」
弟のその声は、あまりにも小さすぎて俺の耳では拾えなかった。
「え? 何か言ったか?」
「……別に」
「それより、今は能力発動してんのか?」
「まぁ、一応な」
そりゃ今日は共有してないし……。
本当は共有を使った方が、弟の存在がバレるリスクも避けられるしその方がいいんだろうけど、病み上がりでそれをやるのは危険を伴うからな。
「じゃあ、このまま話進めるぞ」
弟は前傾姿勢をとり、低い声で聞いてきた。
「服部の件はどうなった?」
その声の低さは、真剣に話を聞こうとしているが故のだろう。
「まず、それ全部説明する前に二つだけ言わせてくれ」
ん? と、弟は眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「服部和毅は、いま赤ん坊になってるらしい」
「ハァ?」
「あと、うちの課長、非能力者って言ってたけど、あれ絶対嘘だぞ。だって視えたし」
「ハァ⁉︎」
弟の怒鳴り声にも近い驚きの声が、リビングに響き渡った。
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