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File1 自覚無き殺人犯
第四十四話 目覚め
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ノックの後、ドアの開く音がした。
「やぁ、皆んなも来たんだね。それってお見舞いの?」
皆んなってことは、ロボの椿先輩と士郎さんとソフィアさんか?
「そうそう、正人くんこれ絶対喜ぶわよ! 見てみて!」
ガサゴソと紙袋を弄るような音がする。
「こ、これは!」
「課長、そのだらしない顔何とかして下さい……。ソフィア、おまえ何てものを……」
士郎さんの呆れた声とともに溜め息が聞こえた。
ソフィアさん……一体、何持ってきたんだ?
「ご、ごめんごめん。で、士郎君、その独創的な作品? は一体、なんだい?」
「見たまんまですよ」
「お守り?」
人の気配を近くに感じた後、兄貴の首に誰かの手が触れ何かが首につけられた。
触られた感触はあったから触覚も問題なさそうだな。
話の流れからして、士郎さんが首にお守りをかけてくれたのだろう。
課長が独創的って言ってたのが凄く気になるが……手作りか?
「ワタシからはコレダ!#/$€%」
「ええ? 何この趣味の悪い人形……こっちは変なジュースだね……」
「悪霊退散グッズだ! ネットでポチッと速達で頼んだゾ!#/$€%」
なにソレ……そんなもん欲しくないし飲みたくないし。マジで兄貴に変なもん与えないでくれよ……喜びそうだけど。
途端、目蓋が上がり視界が広がる──真っ白な天井を映し、身体が起き上がった。
兄貴が……目を………覚ました。
感情が昂り一瞬、感覚共有から置換に移行したせいか、リビングのソファーに腰掛けた俺本体と兄貴の頬に一筋の涙が伝う。
「「正人君!」」「正人くん!」
「「後輩!(#/$€%)」」
兄貴の視線がキョロキョロと彷徨う。
「俺……あれ? そうか……」
雑務課のメンバーが兄貴の声を聞き、はくりと空気を呑んだ。
それは、兄貴がやっと目を覚ましたんだという事実をじわじわと実感しそれを噛み締めていたからだと思う。
「皆さん、ご心配お掛けしました!」
兄貴は頬を伝う涙を袖で拭うと右手を後頭部へやりながら、眉を下げへらりと苦笑いしながらそう言った。
「お帰りなさい、正人君」
最初に話しかけてきたのは課長だった。
「「お帰りなさい! 正人くん!」」
課長に続いてソフィアさんと歩さんがそう言うと、兄貴の首に抱きついて頬擦りをした。
ソフィアさんはともかく歩さんは髭が滅茶苦茶痛え……鑢で擦られるくらい痛え。
「お帰リ! 後輩!#/$€%」
兄貴の膝にいつのまにか置かれていたロボットから椿先輩の言葉が発せられた。
「うわっ!」
ロボットに気を取られていると、頭をくしゃりと撫でられた。
「お帰り、後輩……」
撫でられた拍子に兄貴が下へ向けた顔をあげれば、いつもより優しい表情をした士郎さんがそこにいた。
普段、表情の硬い士郎さんがそんな表情をしたってことは、大分心配かけたんだなと思った。
「皆さん、ただいま!」
兄貴の口角が引き上がる。
兄貴は今、太陽のように眩しい笑みを彼等に向けているに違いない。
お帰り、兄貴。
次会ったとき必ず兄貴にそう伝えようと、俺は思った。
「やぁ、皆んなも来たんだね。それってお見舞いの?」
皆んなってことは、ロボの椿先輩と士郎さんとソフィアさんか?
「そうそう、正人くんこれ絶対喜ぶわよ! 見てみて!」
ガサゴソと紙袋を弄るような音がする。
「こ、これは!」
「課長、そのだらしない顔何とかして下さい……。ソフィア、おまえ何てものを……」
士郎さんの呆れた声とともに溜め息が聞こえた。
ソフィアさん……一体、何持ってきたんだ?
「ご、ごめんごめん。で、士郎君、その独創的な作品? は一体、なんだい?」
「見たまんまですよ」
「お守り?」
人の気配を近くに感じた後、兄貴の首に誰かの手が触れ何かが首につけられた。
触られた感触はあったから触覚も問題なさそうだな。
話の流れからして、士郎さんが首にお守りをかけてくれたのだろう。
課長が独創的って言ってたのが凄く気になるが……手作りか?
「ワタシからはコレダ!#/$€%」
「ええ? 何この趣味の悪い人形……こっちは変なジュースだね……」
「悪霊退散グッズだ! ネットでポチッと速達で頼んだゾ!#/$€%」
なにソレ……そんなもん欲しくないし飲みたくないし。マジで兄貴に変なもん与えないでくれよ……喜びそうだけど。
途端、目蓋が上がり視界が広がる──真っ白な天井を映し、身体が起き上がった。
兄貴が……目を………覚ました。
感情が昂り一瞬、感覚共有から置換に移行したせいか、リビングのソファーに腰掛けた俺本体と兄貴の頬に一筋の涙が伝う。
「「正人君!」」「正人くん!」
「「後輩!(#/$€%)」」
兄貴の視線がキョロキョロと彷徨う。
「俺……あれ? そうか……」
雑務課のメンバーが兄貴の声を聞き、はくりと空気を呑んだ。
それは、兄貴がやっと目を覚ましたんだという事実をじわじわと実感しそれを噛み締めていたからだと思う。
「皆さん、ご心配お掛けしました!」
兄貴は頬を伝う涙を袖で拭うと右手を後頭部へやりながら、眉を下げへらりと苦笑いしながらそう言った。
「お帰りなさい、正人君」
最初に話しかけてきたのは課長だった。
「「お帰りなさい! 正人くん!」」
課長に続いてソフィアさんと歩さんがそう言うと、兄貴の首に抱きついて頬擦りをした。
ソフィアさんはともかく歩さんは髭が滅茶苦茶痛え……鑢で擦られるくらい痛え。
「お帰リ! 後輩!#/$€%」
兄貴の膝にいつのまにか置かれていたロボットから椿先輩の言葉が発せられた。
「うわっ!」
ロボットに気を取られていると、頭をくしゃりと撫でられた。
「お帰り、後輩……」
撫でられた拍子に兄貴が下へ向けた顔をあげれば、いつもより優しい表情をした士郎さんがそこにいた。
普段、表情の硬い士郎さんがそんな表情をしたってことは、大分心配かけたんだなと思った。
「皆さん、ただいま!」
兄貴の口角が引き上がる。
兄貴は今、太陽のように眩しい笑みを彼等に向けているに違いない。
お帰り、兄貴。
次会ったとき必ず兄貴にそう伝えようと、俺は思った。
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