39 / 99
File1 自覚無き殺人犯
第二十八話 逮捕の裏側11 発動する能力
しおりを挟む
服部の額と掌にどっと尋常ではないほどの汗が浮きはじめ、顔を真っ青にさせた。
『何でおまえが俺の能力のこと知ってるんだ』って顔だな。
煽り役が正人でなくとも、全て顔に出てしまう今の服部の思考を読むのは容易い。
目に見えて余裕が失われてつつあるのが丸わかりだった。
警察も誰も知らないはずの服部の秘めた能力をさらっと暴く正人のその言葉は、服部の冷静さを奪うには十分だったようだ。
誰も知らないというよりは服部に開示した情報は偽りのものであり、本来の情報は伏せていたというのが真実であるが。
「い、いい加減にしろよ! おまえが兄貴の罪を俺になすりつけようとしてるって訴えてやるよ!」
服部は斜めにかけたショルダーバッグに手を入れた。
「訴えるんだったらおまえがやったしょ、証拠もいるよな?」
服部が声を震わせながらそう言いうとインスタントカメラ"チェキ"を取り出し、レンズを正人へ向けた。
『『来る!』』
二つの思考がリンクした瞬間だった。
正人自身が生命の危機にさらされる時のみに働く直感が服部の能力発動開始を即座に察した。
正人が委ねるもう一つの思考──弟は何度もいうが正人自身より遥かに聡い。よって、服部が次にどんな行動に移るのかも予測済みであった。
正人と弟は危機を察知しながらも今、身構えることはしなかった。
服部に不信感を与えぬように、ただ能力発動を待つ。
だが、危機を察知しながら何もしないわけではない。
正人は奥歯をギリッと噛み締めた。
決して今の状況に恐怖しているわけでも、死を覚悟しているわけでもない。
正人が奥歯で噛み締めるのは一枚のトランプの切れ端。
そして、心の内でこう叫ぶ、
『次は勝つ』
瞬間、正人の本来の能力が発動した。
正人が弟と呼ぶ人物のものの能力ではなく、まぎれもなく正人自身の能力が───。
『何でおまえが俺の能力のこと知ってるんだ』って顔だな。
煽り役が正人でなくとも、全て顔に出てしまう今の服部の思考を読むのは容易い。
目に見えて余裕が失われてつつあるのが丸わかりだった。
警察も誰も知らないはずの服部の秘めた能力をさらっと暴く正人のその言葉は、服部の冷静さを奪うには十分だったようだ。
誰も知らないというよりは服部に開示した情報は偽りのものであり、本来の情報は伏せていたというのが真実であるが。
「い、いい加減にしろよ! おまえが兄貴の罪を俺になすりつけようとしてるって訴えてやるよ!」
服部は斜めにかけたショルダーバッグに手を入れた。
「訴えるんだったらおまえがやったしょ、証拠もいるよな?」
服部が声を震わせながらそう言いうとインスタントカメラ"チェキ"を取り出し、レンズを正人へ向けた。
『『来る!』』
二つの思考がリンクした瞬間だった。
正人自身が生命の危機にさらされる時のみに働く直感が服部の能力発動開始を即座に察した。
正人が委ねるもう一つの思考──弟は何度もいうが正人自身より遥かに聡い。よって、服部が次にどんな行動に移るのかも予測済みであった。
正人と弟は危機を察知しながらも今、身構えることはしなかった。
服部に不信感を与えぬように、ただ能力発動を待つ。
だが、危機を察知しながら何もしないわけではない。
正人は奥歯をギリッと噛み締めた。
決して今の状況に恐怖しているわけでも、死を覚悟しているわけでもない。
正人が奥歯で噛み締めるのは一枚のトランプの切れ端。
そして、心の内でこう叫ぶ、
『次は勝つ』
瞬間、正人の本来の能力が発動した。
正人が弟と呼ぶ人物のものの能力ではなく、まぎれもなく正人自身の能力が───。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

”その破片は君を貫いて僕に突き刺さった”
飲杉田楽
ミステリー
"ただ恋人に逢いに行こうとしただけなんだ"
高校三年生になったばかり東武仁は授業中に謎の崩落事故に巻き込まれる。街も悲惨な姿になり友人達も死亡。そんな最中今がチャンスだとばかり東武仁は『彼女』がいる隣町へ…
2話からは隣町へ彼女がいる理由、事故よりも優先される理由、彼女の正体、など、現在と交差しながら過去が明かされて行きます。
ある日…以下略。があって刀に貫かれた紫香楽 宵音とその破片が刺さった東武仁は体から刀が出せるようになり、かなり面倒な事件に巻き込まれる。二人は刀の力を使って解決していくが…
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる