警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

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File1 自覚無き殺人犯

第十六話 逮捕の裏側2 歩と士郎の依頼と理由

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警視庁に戻ると、俺は報告するより先に士郎さんに頼まれて新聞を切り取っていた。

「士郎さん、切り抜きこれで全部です」
と指示された通りに必要な箇所をハサミで切り抜いたものを手渡した。

「あぁ、有難う」

「何に使うんですか?」

「まぁまぁ、もう少しでわかるわぁ。それまでぇ、ヒ・ミ・ツ♡」


ヒィッ!


歩さんの投げキッスに寒気がして身体を震わせた。

「で、上手くやれそうかい?」

課長が俺と士郎さんと歩さんの机を覗き込む。

「まぁ、ぼちぼちですよ……っと、コレでよし」

士郎さんが俺の切り抜き新聞を並び替える。

「あ、あの、これって……」

「見た通りだ」

「俺たち、警察官ですよね?」

「まぁウチは変わってるからねー。多少のもみ消しは効くからダイジョーブだよ!」

「いやいや全然大丈夫じゃないですよ!」


"─────『で』『待』『ツ』『。』『来』『ナ』『け』『れ』『バ』『オ』『前』『が』『今』『回』『ノ』『犯』『に』『ン』『で』『超』『ノ』『ー』『リ』『ょ』『ク』『者』『だ』『ト』『ば』『ラ』『ス』『。』『オ』『前』『が』『ヤ』『っ』『た』『証』『コ』『も』『ア』『ル』"




「───で待つ。来なければおまえが今回の犯人で超能力者だとバラす。おまえがやった証拠もある」




脅迫文じゃないですか⁉︎



「で、後輩、椿。人を連れ込みやすい場所見つかったか?」

「あ、はい。椿先輩が見つけてくださいました。二ヶ月先にオープンするチェリーブロッサムプラネタリウムってとこなんですけど、まだ許可はとってません」

「あぁ~あそこねぇ」
と歩さんが思い出すように腕を組んで視線を天井に移した。

「じゃあ私は許可を貰いにいってくるよ!」
「か、課長!」
と今にも部署を出て行きそうな課長を俺は呼び止め、慌てて内ポケットのメモ帳を取り出し住所と電話番号を控えたメモを破って課長に手渡すと課長は「有難う!」と俺に礼を言って部署から出て行った。





場所の調査と……脅迫文………そうか───!


「人を連れ込みやすい場所を調査する必要があったのは服部を誘い出すためだったんですね……」

「証拠がない以上、追い詰めて能力を使わせる他ないからな」

「なるほど。他の人の身体を乗っ取って来る可能性はありませんか?」

「それはないと思うなー。だって、そんなことしたら服部がその人に頼んで殺してもらったって疑われるでしょー?」


確かに……。


「そういえばぁ、服部が加藤の身体を乗っ取ったっていう証拠はどうするぅ?」

「それなんだけど、加藤の取り調べの後に、キャビネットに行って服部が映ってるネカフェの監視カメラ観てきたんだけどー、ちょっと見てくれてるー?」

ソフィアさんがパソコンを立ち上げUSBを差し込んだ。

映し出された映像は、天井の空いた仕切りとドアで個室化された席が多く並んだものだった。それぞれのドアには番号が書かれている。

「ここが服部のとこね」
とソフィアさんが服部のいた席の12番を指差した。

「午後十二時十分に魂が服部のとこに入って行ってるのよー」

ソフィアさんが映像を止めて時間をマウスポインタで差した。
 
確かに人の形を描いた泡の塊が段々と変形し、やがて一つの線となって服部の席に入って行くのが

もちろん、歩さんと士郎さん、椿先輩には

「じゃあ服部が幽体離脱して加藤の身体を乗っ取ったってことですか?」

「その可能性が高いと思うよ。でも、逆に午前八時半頃、出て行った様子はないんだよねー。戻ってくる映像はあるんだけど、たまたま映像に映らなかった可能性もあるけどねー」

「ふぅ~ん。でもソフィアは見えるからいいけれど、見えない人にそれをどうやって証明するかが問題よねぇ?」






「それは安心してイイですヨ!#/$€%」







椿先輩がイキイキした声で続ける。

「後輩に貸してもらった文献でいいものが見つかっタ。『赤外線カメラによる霊の証明』っていうのがあったゾ!#/$€%」

これは、紫外線カメラ、赤外線カメラによる定点撮影観測、サーモグラフィー、可聴音測定器、低周波測定器を用いることで、オーブ=光体の撮影に成功したという文献だ。


そういえば、そんな文献もあったな……。


超能力を含む超常現象に興味はあっても調べたこと全て頭の中に入っているわけではない。

「じゃあ、これはツッキーの得意分野だから任せるわねー!」
とソフィアさんが天井の監視カメラに言った。

「了解シタ!#/$€%」


『ツッキー』って椿先輩のこと⁉︎ ソフィアさんそうやって呼んでるんだ……。

ソフィアさんと椿先輩が普段話してるのを聞いたことがないので少し驚いた。

 


バンッ!




という大きな音を響かせながら部署のドアが開いた。

満面の笑みを浮かべ中に入ってきたのはうちの課長だ。



「皆んな、プラネタリウムの使用許可下りたよ!」



 
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