警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

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アメジストクルーズ船自爆テロ事件

第一話 カウントダウン

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見た目十代くらい、少し焼けた健康的な肌、茶髪のセミロングの少女がベッドで眠る。

少女はまだ夢の中だった。

夢の中の少女は、映画館のドア前に立っていた。
手慣れたようにドアに手を掛け中に入れば、客は誰一人としていない。一番見やすい真ん中の席G-10に少女は腰掛けた。

バンという音と共に、天井の照明が消え、スクリーンにカウントダウンベクトルが映し出される。






10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0……






映画とも呼べない断片的なモノクロ映像が映し出される。

しかし、そのモノクロ映像を少女は無言で真剣な面持ちで観ていた。





五分も無いくらいに短く、断片的でストーリーにもなっていない無茶苦茶な映像を。




***




「お久しぶりです、お父様」

夢から覚めた少女は、起きて直ぐに携帯電話を手に取っていた。

「その呼び方はやめろと言ったはずだが」

声の主は変声機へんせいきで声を変えていたが、苛立っているのがうかがえる。

「……申し訳御座いません、ボス」

「……」

刹那せつなの無言は謝罪を受けたことを示していた。

「何の用だ?」

「……近々、船を爆破させる予定がおありですか?」

「……誰から聞いた?」

「誰からも聞いておりません。ボスの許可無く情報漏洩ろうえいすることは裏切りも同然に御座います」

「……疑って悪かった。組織内に潜り込んだネズミを排除しようと思ってな」

「左様で御座いますか」

「……で何を見た?」

「燃え上がる船、そして恐らく濡れ衣を着せられた被害者の息子、その息子が警察官になったであろう姿……です」

「……そうか」

「情報は多い方が宜しいかと思いまして」

「フン……好きに動くといい。許可しよう」

「有難うございます。必ずお役に立ってみせます」

少女は携帯電話を耳に当てたまま深く腰を折り曲げた。

「あぁ、期待している。アッサム」

プツッと電話が切れた。




「お父様……また私を褒めて下さいますか?」





少女は名残なごりしそうに携帯電話を見つめていた。
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