警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

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警視庁雑務部雑務総務課 ─職場と人物─

第一話 この度、警視庁雑務部雑務総務課に就職しました。 高良正人 現在24歳

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「本日付けで、こちらに配属されました!高良たから正人まさとと申します!宜しくお願い致します!」

東京都千代田区にある警視庁地下一階の雑務部雑務総務課に青年の元気な声に書類に目を通す職員たちの手が止まり、視線が彼に向く。

彼を見た誰もがこう印象付けるに違いない。


"元気で真っ直ぐな体育会系の好青年"だと。


正にその通りである。
昔から曲がったことが大嫌いで何事にも真っ直ぐ取り組み、苛めっ子にも立ち向かってきたほどである。だからこそ彼の周りには自然と人が寄ってくるし、彼を悪く言う者は誰一人としていないのである。そんな彼が警視庁の職員として働くのは何ら不思議ではない。

ただし、一つのことを除いて───。

高良正人という人間は体育は常に五段階中五であったが、その他の科目においては全くの皆無であり、俗にいう"脳筋"なのである。身内や友人といった周囲にもそれはよく知られており、「よく進学できたな」「よく就職できたな」と言われてしまうほどである。仕舞いには、「いよいよ悪に手を染めたか」と裏口入学したのではないかと友人に悪ふざけを言われる始末だが、脳筋で正義感の強い彼がそんなことできるはずがない。最終的には火事場の馬鹿力でどうにか乗り切ったのであろうという結論に至ったのである。

「ようこそ、雑務部雑務総務課へ」
正人の前に、見た目40歳代後半で白髪混じりの中肉中背の男が出迎えた。

その男の背後から、
「宜しくねぇ~」
「ヨロピクぅ」
「宜しく」
「ヨロシク#/$€%」
という歓迎する声が正人に向けられてくるが、何やら人間の声でないモノも混じっている。


まず、見た目40歳代後半で白髪混じりの中肉中背の男はここの総務課長。
四月一日わたぬきとおる 46歳
この課のまとめ役である。



「宜しくねぇ~」という間延びな言葉と職場ではあり得ないバスローブを見に纏った男?俗にいうオカマだ。
しかし、顔は少女漫画に出てくるような王子様系のイケメンである。
元組織犯罪対策部組織犯罪対策総務課所属で、この課の設立時に透により抜擢され配属された。
西行寺さいぎょうじあゆむ

「年齢はひ・み・つ、よぉ? 知りたかったらお姉さんと親密になってからねぇ♡」

うふぅ~んと、ウインク&アンド投げキッスを正人に向ける。

正人は身震いしながらもバスローブから覗き出る筋肉に釘付けになった。
 

"シックスパック、羨ましい!"


親密にはなりたくないが、筋トレをご指導願いたいと正人は思った。

安定の脳筋思考である。






「ヨロピクぅ」と頑張って最近の若者についていこうという必死さが出ており、やや痛い感じだ。肩まで伸びた金髪のウェーブと碧目、さらに豊満な胸が特徴的なボンキュッボンの女性。
元総務部情報管理課所属で、この課の設立時に透により抜擢され配属された。
左衛門寺さえもんじ ソフィア
イギリス人と日本人のハーフだ。

ボンキュッボンは男のロマンであると言う独自の思想観念を生み出した正人はこういう女性を彼女にしたいと思った。

「年齢は、聞かないでねー?」
と冷ややかな笑みを向けられた時はゾッとした。




「宜しく」と淡白な返しと肩につかない程度のストレートな黒髪で渋い顔立ちをしており、いかにもワインが似合いそうなおじ様という印象の男性。
元刑事部刑事総務課所属で、この課の設立時に透により抜擢ばってきされ配属された。
生鷹おいたか士郎しろう 36歳
彼は仏頂面で誰もが恐い印象を受けてしまうような面持ちであるが、正人はあまり気にしていない。
寧ろ真面目そうな人だなと好印象を抱いた。




「あれ? そういえば、もう一人いた気がしたんですが……」
と正人はキョロキョロと見渡すが、室内には四人しか見当たらない。

「あぁ、それはね……」と透が濁しながら、「ちょっと人見知りな子だから私が代わりに紹介しておくよ」と説明してくれた。




元生活安全部サイバー犯罪対策課所属で、この課の設立時に透により抜擢され配属された。
日比谷ひびや椿つばき 17歳
いわゆる、コミュ障というやつで人と関わるのが苦手らしい。
人が嫌いというよりも人見知りが激しいようで、会話もアナログロボットとノートパソコンを繋いでロボットに声を出させているらしい。
何故アナログロボットなのかというと、AIは情報を注ぎ込み過ぎて暴走するから恐いということらしい。

「作るのが難しいからではないんですね……」
思ったより可愛らしい理由であることに正人は驚く。






さて、この警視庁雑務部雑務総務課というのは近年設立したものである。

この部署の活動は、主に"超能力者関連の事件を解決すること"である。

超能力者、それは普通の人間には出来ないことを実現することのできる科学的には証明することのできない不思議な能力をもった人間を示す。

この日本という国に近年超能力者が増加しつつある。もちろん、他国にも超能力者は存在するのだが、他国と比較し日本が圧倒的に多い。その理由は定かではないが、超能力者の増加とともに犯罪率が上昇していた。

設立の切っ掛けとなった大きな事件が十六年前の『アメジストクルーズ船自爆テロ事件』である。
当時の犯罪率を百パーセントとした場合、六十五パーセントが非能力者による犯行、残り三十五パーセントが超能力者による犯行があり、この事件が起こる前から設立すべきか否か、賛否両論であった。
しかし、この事件の発生により設立せざるを得ない状況となったのである。
この事件は日本初の超能力者による自爆テロ事件だったのだ。

当時、超能力者に特化した機関が無かったため、事件は難航し、被害者遺族から遺体捜索、事件の解明を催促する電話や警視庁に押しかける者まで現れた。最終的に、警察庁と警視庁の公安が動くなどして、調査を行った結果、パイロキネシスという超能力を持った人物が引き起こした自爆テロ事件として処理された。

そうのように断定できたのは、テロに巻き込まれた死体が残らなかったためである。ただ爆破に巻き込まれただけであれば、焼け焦げた死体一つは見つかってもおかしくは無いが、それが見つからなかったからだ。

そして、アメジストクルーズ船自爆テロ事件発生から十一年の時を経て、設立されたのがこの課である。十一年も掛かったのは、超能力者に特化した機関であるならば、超能力者も引き込んだ方が良い、このような変わった機関に望んでくる者は少ないため質の良い人材が欲しい、その他細かい規則や書類作成などのためである。

超能力者に特化した機関であるのに雑務部と言う名になっているのは、先程も言ったが超能力者関連の事件は通常に比べ少ない。よって、普段は他の課の書類のお手伝いであるからだ。




「さて、この部署について、何か聞いていることはあるかい?」
透が正人の両肩に手を置き、眉を下げた表情で正人に聞く。

はて?と正人はここに来る前を思い出し、
「給料泥棒の部署と聞きました!」
と元気よくハキハキした声で答えた。

「あぁ……知っていたんだね」
カックシと透は頭を垂れた。
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