魔女の涙

産屋敷 九十九

文字の大きさ
上 下
4 / 21
魔女の涙

4ページ

しおりを挟む
魔女と青年が恋人となってから半年経ったある日のこと。

「僕と結婚して下さい」

青年は魔女の前に跪き、三本の薔薇を魔女に手渡した。

雨の降らない土地では薔薇を一本買うのも一苦労し、かなりの値がはるのに、青年は魔女に薔薇を三本も差し出したのだ。

その青年は一般の平民であり、薔薇は平民が容易に手を出せるものではなかった。

青年が平民であり、薔薇がいかに貴重で高額なものかを知っていた魔女は感動し、嬉し涙を流しながら「はい」と応えた。

流れ落ちた魔女の涙で干からびた大地に雨が降り注いだ。

その日を境に、毎日魔女の元を訪れていた青年はぱたりと姿を消した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰色のねこっち

ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」 気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。 そして一匹と一人の共同生活が始まった。 そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。 最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。 ※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。

仔猫の想い

みちのあかり
児童書・童話
仔猫は自分を拾ってくれた男の子が好きだった。 男の子も仔猫が好きだった。 小学生の時代は男の子も猫も幸せだった。 男の子は中学生になってからいじめられるようになった。 そんな姿を見て仔猫は、男の子と話がしたい、慰めたいと願った。 いつの間にか、仔猫は男の子に恋をしてしまったのだ。 仔猫が、男の子と話ができるように、願いをかなえるために、 山の奥の魔法使いに会いに行った。 はたして、仔猫の願いはかなうのでしょうか。

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

みかんに殺された獣

あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。 その森には1匹の獣と1つの果物。 異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。 そんな2人の切なく悲しいお話。 全10話です。 1話1話の文字数少なめ。

ヨーコちゃんのピアノ

市尾彩佳
児童書・童話
ずっと欲しかったピアノ、中古だけどピアノ。ようやく買ってもらえたピアノが家に届いたその日、美咲はさっそく弾こうとする。が、弾こうとしたその瞬間、安全装置がついているのにふたが勢いよく閉まった。そして美咲の目の前に、透き通った足がぶーらぶら。ゆ、ゆゆゆゆーれい!?※小説家になろうさんにも掲載しています。一部分、自ブログに転載しています。

【完結】サンタの奇跡

紫宛
児童書・童話
ここは現代、サンタの奇跡を信じられない人々が多くなった世界。 一人の娘が大慌てでプレゼントの準備をしていました。 2匹のトナカイを引き連れて、子供たちの元に向かいます。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

処理中です...