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第4章 奴隷と暮らす
第25話
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魔銃の試し撃ちをし終えて、俺たちたちはまたカウンター前まで戻ってきた。そして、ご主人様は魔銃とカプセル、魔石、魔結石を購入した。
「それと、リンジーさん、彼らに合った武器を選ぶの、手伝って頂けませんか?」
(武器……か)
奴隷に新品の武器……もう流石に驚きはしない。
(これが……この人間にとっての当たり前なんだろう)
俺はそう思うことにした。ご主人様のやること全てに一々驚いていたら、心臓がいくらあっても足りない。
龍人がご主人様の側まで寄って、「ご主人、我は魔法重視ゆえ武器は扱わぬ」と伝える。
「そうなのか……では、武器を扱う者はどれほどいる?」
その問いに、小さく挙手をしたのは、俺と鬼人だけだった。
***
「ガキンチョ! ふたりの武器、決まったぜ!」
俺たちが武器を選び終えた後、カウンターでウルジーと話していたご主人様がその呼びかけに反応し、こちらへやって来た。
「有難うございます。調整は必要ですか?」
「あぁ、もう調整しといたし、ガキンチョがウルジーと話してる間に、奥で試し斬りもしたしな!」
「有難うございます。ところで……おまえら、武器はそれだけでいいのか?」
「あぁ」「はい」
そう鬼人と共に返事をすれば、俺たちの手元にある武器を交互に見て少し考えたご主人様は、リンジーの方へと身体の向きを変えた。
「リンジーさん、護身用に身につけておくような短剣等はありますか? それを二本ずつ彼らに見繕ってあげてください」
「わかった」
(短剣……?)
必要な武器は選んだ。護身用も戦闘用の武器もこれで十分だ。何故、短剣を俺たちに与えるのか、わからない。戸惑う俺たち二人を見て察したご主人様が口を開く。
「護衛なら、自分の身もちゃんと守れるようにしとけよ?」
(あぁ、また……俺たちのため、か)
人が誰かに武器を渡す時、そこには想いが込められる。
国から支給される武器を手に取る時には、"国のために命を捧げよ"
上司から部下へまたは父から子へ武器が渡される時には、"意志を継げ"
それ以外で渡される時には、"幸せを切り開いて"
ご主人様はきっと……その意味を知らない。
だが、
"護衛なら、自分の身もちゃんと守れるようにしとけよ?"
そう言って、ご主人様が俺たちを想い、短剣を与えてくれた瞬間、この剣にその意味が込められているように思えて、俺は「はい」と返事をする声が震えた。返事をした直後、嗚咽を漏らしそうになり、ぐっと奥歯に力を入れて飲み込んだ。
(目が、熱い)
頬を何かが、伝う。それが何なのかを理解するまでに時間がかかった。顎まで流れた時にようやく気づいた。涙だ。
俺は泣き顔を見られたくなくて、額に垂れたローブのフードをぐいっと下へ引っ張り顔を隠した。
だが、その涙もすぐに引っ込むことになった。
***
店を出て直ぐ、ご主人様からアイテムボックス一つ、魔石と各属性の魔結石を十個ずつ手渡された。
「それ、おまえらのな? 狼人、麻袋持ってくれて助かった。それ、アイテムボックスに入れるからくれ」
ご主人様は、俺たちの手のひらを指差してそう言った。俺は呆然としたまま「どうぞ」と持っていた大きな麻袋をご主人様へ渡した。
「申し訳ないが、俺にはおまえらを守る力は一切ない。だからせめて自分で自分の身は守れるようにしてくれ。俺は守ってやれない代わりに、こうして与えることしかできないからな」
(それにしたって、与えすぎだ)
身内にだって、こんな貴重なものばかり、ほいほい与えることはない。
ご主人様のそういうところは嫌いじゃないが……豪快すぎるにもほどがある。
(だが、その豪快さに……俺が救われているのは……確かだ)
「それと、リンジーさん、彼らに合った武器を選ぶの、手伝って頂けませんか?」
(武器……か)
奴隷に新品の武器……もう流石に驚きはしない。
(これが……この人間にとっての当たり前なんだろう)
俺はそう思うことにした。ご主人様のやること全てに一々驚いていたら、心臓がいくらあっても足りない。
龍人がご主人様の側まで寄って、「ご主人、我は魔法重視ゆえ武器は扱わぬ」と伝える。
「そうなのか……では、武器を扱う者はどれほどいる?」
その問いに、小さく挙手をしたのは、俺と鬼人だけだった。
***
「ガキンチョ! ふたりの武器、決まったぜ!」
俺たちが武器を選び終えた後、カウンターでウルジーと話していたご主人様がその呼びかけに反応し、こちらへやって来た。
「有難うございます。調整は必要ですか?」
「あぁ、もう調整しといたし、ガキンチョがウルジーと話してる間に、奥で試し斬りもしたしな!」
「有難うございます。ところで……おまえら、武器はそれだけでいいのか?」
「あぁ」「はい」
そう鬼人と共に返事をすれば、俺たちの手元にある武器を交互に見て少し考えたご主人様は、リンジーの方へと身体の向きを変えた。
「リンジーさん、護身用に身につけておくような短剣等はありますか? それを二本ずつ彼らに見繕ってあげてください」
「わかった」
(短剣……?)
必要な武器は選んだ。護身用も戦闘用の武器もこれで十分だ。何故、短剣を俺たちに与えるのか、わからない。戸惑う俺たち二人を見て察したご主人様が口を開く。
「護衛なら、自分の身もちゃんと守れるようにしとけよ?」
(あぁ、また……俺たちのため、か)
人が誰かに武器を渡す時、そこには想いが込められる。
国から支給される武器を手に取る時には、"国のために命を捧げよ"
上司から部下へまたは父から子へ武器が渡される時には、"意志を継げ"
それ以外で渡される時には、"幸せを切り開いて"
ご主人様はきっと……その意味を知らない。
だが、
"護衛なら、自分の身もちゃんと守れるようにしとけよ?"
そう言って、ご主人様が俺たちを想い、短剣を与えてくれた瞬間、この剣にその意味が込められているように思えて、俺は「はい」と返事をする声が震えた。返事をした直後、嗚咽を漏らしそうになり、ぐっと奥歯に力を入れて飲み込んだ。
(目が、熱い)
頬を何かが、伝う。それが何なのかを理解するまでに時間がかかった。顎まで流れた時にようやく気づいた。涙だ。
俺は泣き顔を見られたくなくて、額に垂れたローブのフードをぐいっと下へ引っ張り顔を隠した。
だが、その涙もすぐに引っ込むことになった。
***
店を出て直ぐ、ご主人様からアイテムボックス一つ、魔石と各属性の魔結石を十個ずつ手渡された。
「それ、おまえらのな? 狼人、麻袋持ってくれて助かった。それ、アイテムボックスに入れるからくれ」
ご主人様は、俺たちの手のひらを指差してそう言った。俺は呆然としたまま「どうぞ」と持っていた大きな麻袋をご主人様へ渡した。
「申し訳ないが、俺にはおまえらを守る力は一切ない。だからせめて自分で自分の身は守れるようにしてくれ。俺は守ってやれない代わりに、こうして与えることしかできないからな」
(それにしたって、与えすぎだ)
身内にだって、こんな貴重なものばかり、ほいほい与えることはない。
ご主人様のそういうところは嫌いじゃないが……豪快すぎるにもほどがある。
(だが、その豪快さに……俺が救われているのは……確かだ)
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