42 / 103
第2章 奴隷を買いました。
第28話
しおりを挟む
蝶ネクタイの男の呟き③
──────────
「お客様、医学に長けた者は国に重宝され、もし奴隷堕ちした者がいればすぐに買い手がついてしまいます。ですが、未だに買い手のつかない者がひとりだけおります」
そうご説明致しましたら、「ほぅ、ひとりしかいない、だと?」と、フードの奥からぎろりと鋭い眼光を私に向けてきました。
怯みながら、私は嘘は吐いていないと必死になって訴えました。
歳下の子供に怯むとは可笑しな話ではありますが、私は確かにレオリオ様に対して恐怖に近しいものを感じております。それは、きっとレオリオ様の考えが読めないせいなのでしょう。
私はレオリオ様の手にある開かれたままの奴隷資料をさっと捲って、医学に長けた奴隷のページを開け、この奴隷には問題があることをご説明致しました。前の奴隷は国家反逆罪、次の奴隷はテロリストと共謀した犯罪奴隷でございます。
レオリオ様は資料を見て、明らかに顔を引き攣らせておりました。初めて見る普通の反応に、私は安堵いたしました。「あぁ、やはり同じ人間なのですね」と。失言でした……レオリオ様は随分と大人びて見えるものですから、つい。
大人びて見えると言えば、その後に仰った「ここの管理はしっかりしているように見えるが、何故毒を仕込まれた?」という質問で御座います。
奴隷堕ちすれば、魔力を抑えてスキルを使えないように拘束致しますから、従業員に毒を仕込むのは不可能なのです。レオリオ様の核心をついた質問に、私、感服致しました。
それにしてもあの時は、まさか奴隷堕ち寸前にスキルを発動していたとは思いもしませんでした。魅力に近しいイノセントは、目に見えるものではありませんから、非常に厄介なスキルです。
レオリオ様は暫くの間、資料を見ては眉間に皺を寄せて考えておられました。流石のレオリオ様もテロリストと共謀し、従業員に毒を盛った犯罪奴隷に興味は示さないだろうと思いました。
「まぁいい、取り敢えず見せてくれ」
訂正致します。そんなことはなかったようです。
***
狐人のところまでご案内致しますと、今回はレオリオ様のご要望で、私は外で待機することになりました。一体どのようなことを話しているのかと気にはなりますが、お客様に不快な思いをさせるわけにはいきませんので、聞き耳は立てません。
レオリオ様が出て来ました。そして、私にここを貸し切りにしたいと仰った後、とんでもない額の金貨を手渡されました。
私は何が起こったのか分からず、頭を真っ白にしたまま取り敢えず返事だけはしました。
──────────
「お客様、医学に長けた者は国に重宝され、もし奴隷堕ちした者がいればすぐに買い手がついてしまいます。ですが、未だに買い手のつかない者がひとりだけおります」
そうご説明致しましたら、「ほぅ、ひとりしかいない、だと?」と、フードの奥からぎろりと鋭い眼光を私に向けてきました。
怯みながら、私は嘘は吐いていないと必死になって訴えました。
歳下の子供に怯むとは可笑しな話ではありますが、私は確かにレオリオ様に対して恐怖に近しいものを感じております。それは、きっとレオリオ様の考えが読めないせいなのでしょう。
私はレオリオ様の手にある開かれたままの奴隷資料をさっと捲って、医学に長けた奴隷のページを開け、この奴隷には問題があることをご説明致しました。前の奴隷は国家反逆罪、次の奴隷はテロリストと共謀した犯罪奴隷でございます。
レオリオ様は資料を見て、明らかに顔を引き攣らせておりました。初めて見る普通の反応に、私は安堵いたしました。「あぁ、やはり同じ人間なのですね」と。失言でした……レオリオ様は随分と大人びて見えるものですから、つい。
大人びて見えると言えば、その後に仰った「ここの管理はしっかりしているように見えるが、何故毒を仕込まれた?」という質問で御座います。
奴隷堕ちすれば、魔力を抑えてスキルを使えないように拘束致しますから、従業員に毒を仕込むのは不可能なのです。レオリオ様の核心をついた質問に、私、感服致しました。
それにしてもあの時は、まさか奴隷堕ち寸前にスキルを発動していたとは思いもしませんでした。魅力に近しいイノセントは、目に見えるものではありませんから、非常に厄介なスキルです。
レオリオ様は暫くの間、資料を見ては眉間に皺を寄せて考えておられました。流石のレオリオ様もテロリストと共謀し、従業員に毒を盛った犯罪奴隷に興味は示さないだろうと思いました。
「まぁいい、取り敢えず見せてくれ」
訂正致します。そんなことはなかったようです。
***
狐人のところまでご案内致しますと、今回はレオリオ様のご要望で、私は外で待機することになりました。一体どのようなことを話しているのかと気にはなりますが、お客様に不快な思いをさせるわけにはいきませんので、聞き耳は立てません。
レオリオ様が出て来ました。そして、私にここを貸し切りにしたいと仰った後、とんでもない額の金貨を手渡されました。
私は何が起こったのか分からず、頭を真っ白にしたまま取り敢えず返事だけはしました。
31
あなたにおすすめの小説
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
※84話「再訪のランス」~画像生成AIで挿絵挿入しています。
気分転換での画像生成なので不定期(今後あるかは不明ですが)挿絵の注意をしてます。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる