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第2章 奴隷を買いました。
第26話
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蝶ネクタイの男の呟き①
──────────
王都の人気奴隷商館といえば皆、口を揃えて言うでしょう『カミュア』と。
私はその奴隷商館カミュアを取り仕切る支配人のヘルベルト・クローデンと申します。男爵家の末っ子でしたが、父とこの奴隷商館の主人とご縁があり、ここで働かせて頂いております。
そんなある日のことです。ローブを身に纏う風変わりで小柄な少年がやってまいりました。物の価値を知らぬ面倒な餓鬼がやってきたなと思っていたら大人顔負けの語り口で、最終的には私はすっかり彼の言いなりになってしまいました。これで十五歳とは、末恐ろしい。
おおっと、話が大分飛躍してしまいました。失礼。これから話す内容を大まかにご説明致しますと、彼が奴隷を購入してこの商館を出たときには、私の中で彼に対する印象そして見方が変わっていた、という事でございます。
それでは、聞いて下さい。
***
とある日のこと、黒いローブを身に纏う風変わりで小柄な少年がたったの一人でやってまいりました。
私はどのようなお客様であっても丁寧な対応をするよう常日頃から気をつけております。聞くところによりますと、彼は予約は入れていないとのこと。ご貴族の方は事前予約を入れることが多いので、彼はそれに当てはまらないのだろうと思いました。
彼は奴隷を買うのが初めてだそうで、当商館の評判を耳にし、ここまで足を運ばれたそうです。
彼は、どうやら予約を入れないと中を見せてもらえないと思ったようで、他の奴隷商館をあたると言うので、私は焦りました。ここで他の奴隷商館に行かれて、追い返されたと彼がよからぬ噂を流しでもしたら、評判に傷がついてしまうのではと。
ですから、取り敢えず応接室へご案内させて頂きました。ソファに腰掛け優雅に足を組んだ彼は、私の出した紅茶に手をつけようとはしませんでした。何故なのでしょうか? そこには触れず、どのような奴隷をご所望かお聞きすれば、護衛と知識の豊富な者を二人ずつと医学に長けた者を一人と仰いました。さらに、他にも良い奴隷がいれば買いたい、とも。
私の率直な感想を申しますと、
「何を言ってるんだ。奴隷がひとり幾らするのか知ってるのか? こっちは仕事をしてるんだ。餓鬼の戯事に付き合うつもりなど一切ない」
でございます。
それに、彼の身につけている物を拝見致しますと、彼はあまりお金をかけていないようでした。そして私は目の前の少年を"頭が足らなくて物の価値を知らぬ、金など持っていないただの平民"だと決めつけてしまったのです。
すると彼は突然、ステータスを表示致しました。そこには、名字のある名前、異常なほどの魔力量とお金を持っておられました。
私は思わず声を上げて驚いてしまいました。そして、このステータスは嘘なのではと考えかけたその時、彼は身分証を開いて見せてきました。
その身分証を見て驚いたものです。
────────────────────────────────
名前 レオリオ・ヒーラギ
性別 男
種族 人間
所属及び職業 貴族(伯爵)
魔力 550,000以上
出身 ヴェルジュ王国
────────────────────────────────
まさか隣国の伯爵家の方だとは……。
身分証の偽造は出来ないようになっております。この身分証を見るに、ステータスは改ざんされていない、つまり、今この少年が持っておられる所持金の額にも偽りはないのでしょう。
瞬間、私は急に冷静になって、この方に失礼な態度をしてしまったことに反省謝罪致しました。
しかし、遅かったようでございます。
ステータスと身分証を提示される直前、恐らくこの少年は私がどのような目で彼を見ていたのか、既に見抜いておられたようで、私の座るソファの背後から肩に手を置き、隠し玉を見せるようニタァとした顔で圧をかけて来たのです。
その姿は、身震いがするほどで十五歳だとは思えませんでした。人は見かけによらず、とは正にこのことでございます。
そして私は、この少年を真っ先にVIP専用の部屋へご案内することに致しました。
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王都の人気奴隷商館といえば皆、口を揃えて言うでしょう『カミュア』と。
私はその奴隷商館カミュアを取り仕切る支配人のヘルベルト・クローデンと申します。男爵家の末っ子でしたが、父とこの奴隷商館の主人とご縁があり、ここで働かせて頂いております。
そんなある日のことです。ローブを身に纏う風変わりで小柄な少年がやってまいりました。物の価値を知らぬ面倒な餓鬼がやってきたなと思っていたら大人顔負けの語り口で、最終的には私はすっかり彼の言いなりになってしまいました。これで十五歳とは、末恐ろしい。
おおっと、話が大分飛躍してしまいました。失礼。これから話す内容を大まかにご説明致しますと、彼が奴隷を購入してこの商館を出たときには、私の中で彼に対する印象そして見方が変わっていた、という事でございます。
それでは、聞いて下さい。
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とある日のこと、黒いローブを身に纏う風変わりで小柄な少年がたったの一人でやってまいりました。
私はどのようなお客様であっても丁寧な対応をするよう常日頃から気をつけております。聞くところによりますと、彼は予約は入れていないとのこと。ご貴族の方は事前予約を入れることが多いので、彼はそれに当てはまらないのだろうと思いました。
彼は奴隷を買うのが初めてだそうで、当商館の評判を耳にし、ここまで足を運ばれたそうです。
彼は、どうやら予約を入れないと中を見せてもらえないと思ったようで、他の奴隷商館をあたると言うので、私は焦りました。ここで他の奴隷商館に行かれて、追い返されたと彼がよからぬ噂を流しでもしたら、評判に傷がついてしまうのではと。
ですから、取り敢えず応接室へご案内させて頂きました。ソファに腰掛け優雅に足を組んだ彼は、私の出した紅茶に手をつけようとはしませんでした。何故なのでしょうか? そこには触れず、どのような奴隷をご所望かお聞きすれば、護衛と知識の豊富な者を二人ずつと医学に長けた者を一人と仰いました。さらに、他にも良い奴隷がいれば買いたい、とも。
私の率直な感想を申しますと、
「何を言ってるんだ。奴隷がひとり幾らするのか知ってるのか? こっちは仕事をしてるんだ。餓鬼の戯事に付き合うつもりなど一切ない」
でございます。
それに、彼の身につけている物を拝見致しますと、彼はあまりお金をかけていないようでした。そして私は目の前の少年を"頭が足らなくて物の価値を知らぬ、金など持っていないただの平民"だと決めつけてしまったのです。
すると彼は突然、ステータスを表示致しました。そこには、名字のある名前、異常なほどの魔力量とお金を持っておられました。
私は思わず声を上げて驚いてしまいました。そして、このステータスは嘘なのではと考えかけたその時、彼は身分証を開いて見せてきました。
その身分証を見て驚いたものです。
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名前 レオリオ・ヒーラギ
性別 男
種族 人間
所属及び職業 貴族(伯爵)
魔力 550,000以上
出身 ヴェルジュ王国
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まさか隣国の伯爵家の方だとは……。
身分証の偽造は出来ないようになっております。この身分証を見るに、ステータスは改ざんされていない、つまり、今この少年が持っておられる所持金の額にも偽りはないのでしょう。
瞬間、私は急に冷静になって、この方に失礼な態度をしてしまったことに反省謝罪致しました。
しかし、遅かったようでございます。
ステータスと身分証を提示される直前、恐らくこの少年は私がどのような目で彼を見ていたのか、既に見抜いておられたようで、私の座るソファの背後から肩に手を置き、隠し玉を見せるようニタァとした顔で圧をかけて来たのです。
その姿は、身震いがするほどで十五歳だとは思えませんでした。人は見かけによらず、とは正にこのことでございます。
そして私は、この少年を真っ先にVIP専用の部屋へご案内することに致しました。
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