26 / 103
第2章 奴隷を買いました。
第12話
しおりを挟む
「ところでお客様、何故貸し切りに?」
黒目を元の位置に戻し、冷静になった蝶ネクタイの男が聞いてくる。
「あぁ、ちょっと用事ができたのでな、少しこの商館を離れる。今日中に済ませられる用事だが、どれくらい時間がかかるかわからん」
「用事、でございますか?」
「図書館と役所にな。案ずるな、奴隷は今日買う。そのために貸し切りにしたのだから」
「左様でございますか」
「ところで、ここらで大きな図書館だと何処がある?」
「王立図書館が御座います。規模が大きく、種類も多いかと。ここから近いですし、徒歩で行けます」
「入るのに制限はないのか?」
「はい、身分証の提示のみでございます。平民からご貴族までご利用頂けますが、ただ利用するのは読み書きのできるご貴族に偏っています」
役所の説明だけでは不安があった。だからまずは、図書館で『血の契約』について調べようと考えたのだ。
***
王立図書館にやってきた。外観は正にザ・ファンタジー。巨大な規模の円柱の建物は、イタリア・ローマにある世界遺産、フラウィウス円形闘技場を彷彿とさせる。
建物内に入ると、壁側には端から端までぎっしりと本が陳列している。顔を上げれば、途方もないほどの本が天井近くまで見えた。
(探すのに、一体どれだけかかるんだ?)
圧倒されるように図書館の内部をぼぉっと暫く眺めていると、声が掛かった。
「こんにちは、何かお探しですかな?」
声からして若い男、身体ごとそちらへと向きを変える。すると、そこにはストレートグレーとスカイグレーの混じった羽にローシェンナの瞳、そして片眼鏡をかけた人型梟がそこにいた。
「つっ……⁉︎ あぁ」
思ったよりも近くに梟がいたことに驚き、少し後退る。
「……すみません。獣人は嫌かと思いますが、今日は私しかいないんです。明日なら人間の司書がいるので、明日来ますか?」
明らかに申し訳なさそうに梟は眉を下げた。
(いやいや、違う違う違う‼︎)
内心焦る、物凄く焦る。
差別とか、なんか嫌な人間になった気がするからそんな奴だとか思われたくない。いや、今はそれ以上に、罪悪感に呑まれて死にそうだよ⁉︎ そもそもラノベで見慣れてるから元々差別意識はないし。実物見ても大丈夫だったしっ!
脳内の私がギャーギャー大騒ぎしながら転げ回る。さらに、大騒ぎしている私を、もうひとりの私が冷静に紅茶を啜りながら無言で見守っている。紅茶を啜るのは私の理性的な部分だ。(以下、脳内における感情的な私を一号、理性的な私を二号とする)
(いや、獣人に対する嫌悪感などはない。ただ、梟の獣人は初めて見るので少々驚いただけだ。不快に思わせたのなら申し訳ない)
「いやそれよりも、その綺麗な羽をはやく触らせてくれ」
脳内で一号が二号に馬乗りになってフルボッコにしていた。そして、カンカンカンカンとゴングが鳴り響き、試合終了を知らせる。二号はうつ伏せになってKOとなった。勝者一号。理性が負けた。この短い時間で一体、何があったのか。
「……はい?」
理解できていない梟は、口をぽかんとする他なかった。
(あぁ、最悪だ……)
黒目を元の位置に戻し、冷静になった蝶ネクタイの男が聞いてくる。
「あぁ、ちょっと用事ができたのでな、少しこの商館を離れる。今日中に済ませられる用事だが、どれくらい時間がかかるかわからん」
「用事、でございますか?」
「図書館と役所にな。案ずるな、奴隷は今日買う。そのために貸し切りにしたのだから」
「左様でございますか」
「ところで、ここらで大きな図書館だと何処がある?」
「王立図書館が御座います。規模が大きく、種類も多いかと。ここから近いですし、徒歩で行けます」
「入るのに制限はないのか?」
「はい、身分証の提示のみでございます。平民からご貴族までご利用頂けますが、ただ利用するのは読み書きのできるご貴族に偏っています」
役所の説明だけでは不安があった。だからまずは、図書館で『血の契約』について調べようと考えたのだ。
***
王立図書館にやってきた。外観は正にザ・ファンタジー。巨大な規模の円柱の建物は、イタリア・ローマにある世界遺産、フラウィウス円形闘技場を彷彿とさせる。
建物内に入ると、壁側には端から端までぎっしりと本が陳列している。顔を上げれば、途方もないほどの本が天井近くまで見えた。
(探すのに、一体どれだけかかるんだ?)
圧倒されるように図書館の内部をぼぉっと暫く眺めていると、声が掛かった。
「こんにちは、何かお探しですかな?」
声からして若い男、身体ごとそちらへと向きを変える。すると、そこにはストレートグレーとスカイグレーの混じった羽にローシェンナの瞳、そして片眼鏡をかけた人型梟がそこにいた。
「つっ……⁉︎ あぁ」
思ったよりも近くに梟がいたことに驚き、少し後退る。
「……すみません。獣人は嫌かと思いますが、今日は私しかいないんです。明日なら人間の司書がいるので、明日来ますか?」
明らかに申し訳なさそうに梟は眉を下げた。
(いやいや、違う違う違う‼︎)
内心焦る、物凄く焦る。
差別とか、なんか嫌な人間になった気がするからそんな奴だとか思われたくない。いや、今はそれ以上に、罪悪感に呑まれて死にそうだよ⁉︎ そもそもラノベで見慣れてるから元々差別意識はないし。実物見ても大丈夫だったしっ!
脳内の私がギャーギャー大騒ぎしながら転げ回る。さらに、大騒ぎしている私を、もうひとりの私が冷静に紅茶を啜りながら無言で見守っている。紅茶を啜るのは私の理性的な部分だ。(以下、脳内における感情的な私を一号、理性的な私を二号とする)
(いや、獣人に対する嫌悪感などはない。ただ、梟の獣人は初めて見るので少々驚いただけだ。不快に思わせたのなら申し訳ない)
「いやそれよりも、その綺麗な羽をはやく触らせてくれ」
脳内で一号が二号に馬乗りになってフルボッコにしていた。そして、カンカンカンカンとゴングが鳴り響き、試合終了を知らせる。二号はうつ伏せになってKOとなった。勝者一号。理性が負けた。この短い時間で一体、何があったのか。
「……はい?」
理解できていない梟は、口をぽかんとする他なかった。
(あぁ、最悪だ……)
1
お気に入りに追加
624
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる