上 下
21 / 103
第2章 奴隷を買いました。

第7話

しおりを挟む
"どの奴隷に関しましても調教済みですので、誠実さも気性についても問題ないかと"

(そう言ったよな、言ってたよな? まったく、どの口が言っているんだよ……)

 私は内心悪態を吐きながら、眉間にぐぐっと皺を寄せ、人差し指と親指でそれを隠すように押さえた。

 隼人は気づいていない。自分の選ぶ奴隷がいかに特殊な者たちなのかということに。そして、そんな隼人の様子を見て、隣の男が顔を引き攣らせていることに。

 一目資料を見れば、いかに特殊な奴隷か誰にでも分かるというのに、隼人はまったく気づきもしない。いや、なんとなく気づいてはいるのだが、選ぶ基準をここに居た期間が長く、購入履歴のない奴隷に絞ったために、結果そうなってしまったのだ。

 隣の男によって開かれた資料のページに視線を落とす。

────────────────────────────────
奴隷番号   24番
種族     龍人
年齢     147歳
性別     男
奴隷種別   犯罪奴隷
奴隷要因   国家反逆罪
使用用途   護衛(高位魔術士)、教師
魔力     88,000
スキル    超回復、超聴覚、超視覚、超記
       憶、身体強化、剣術、光魔法、
       風魔法、火魔法、防御魔法、生活魔
       法、回復魔法、魔法攻撃耐性、物理
       攻撃耐性、精神異常耐性、毒耐性、
       鑑定、威圧、魔眼
問題行動履歴 
奴隷歴    67年
購入履歴
────────────────────────────────

(うわっ、この魔力量……ここの奴隷の中で一番多いんじゃ。しかも、使えるスキルも多いし汎用性が高い! って……)

「問題行動履歴には、何も記載されていないようだが?」

「こちらの奴隷はまだ何も起こしておりませんが、過去に龍人がそういった事件を起こしたことがあり、隷属の首輪をつけられ主従契約をも施したにもかかわらず、主人を殺してしまったのです。それに、この奴隷は国家反逆罪により奴隷に堕とされた者、あまりオススメは致しません」

 資料の次のページを捲るが、他の龍人は書かれていない。

(龍人はひとりだけか)

 国家反逆罪でも問題行動履歴はない。それに、魔力量もスキルもこれだけあるなら、心強い。

「取り敢えず見てみたい。どこにいる」

「つっ………、承知しました。ではこちらへどうぞ」

 男は一瞬仰反るように驚いたが、すぐに案内してくれた。VIP専用の部屋を離れ、連れてこられたのは地下だった。

 薄暗い、血や汗の混じった様々な臭い、どこまでも続く金属の牢屋、牢屋、牢屋。

 怒号や悲痛な叫び声、鞭のようなバシッとした音が響き渡っている。正直、あまり長居はしたくない。

「調教の終わっていない奴隷や扱いにくい奴隷を、この地下で管理しております」

「何故、VIP専用の部屋にいない? 資料には載っていただろ」

「龍人は奴隷の中で貴重種、価値は高いので、VIPに入れられます。しかし、非常に扱いが難しいので、先程の部屋へ入れるわけにもいかず、地下で管理しているのです」

「ここです」と男はドア前で足を止める。ドアにはハンドルがついており、頑丈な金庫を彷彿とさせる。

 ハンドルを回し終え、解錠した男がドアを開ける。ガチャリと重たい音が響いた。ドアの厚さは五十センチメートル程あった。ここは厳重に管理されているようだ。

 男に続いて中へと入る。そこには檻とひとりの男。どうやらここは、この男のためだけに用意された部屋らしい。

 檻の中の彼は、鎖でがんじがらめにされて自由を奪われ、布で目隠しされ、口は噛み付かないようにだろうか? マスクで塞がれていた。

「お客様、こちらが龍人でございます」
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...