同僚がモフ度の高い神獣でした。【R18】【本編完結】

雲間香月

文字の大きさ
15 / 48
キスのバリエーション

しおりを挟む



 秋晴れの空に羊雲が浮かんでいる。
 殺風景な屋上に出ると、私ははあ、とため息をついた。

「でっかいため息」

 唐突に声をかけられて、驚く。
 辺りを見回すが、がらん、とした屋上には人の影など一つもない。

「こっちです」

 笑いを含むような声に、視線を上げると、出入り口の高台から身を乗り出してこちらを見下ろす人影を見つけた。

「神尾君」

 ひらりと片手を上げて応じた神尾君の瞳が、私の手元に移動する。

「お弁当なら、こっちで一緒に食べませんか」

 誘われて素直に頷くと、神尾君が嬉しそうに目を細めた。
 高台に登って、神尾君の隣にお邪魔する。
 体育座りをしかけてスカートだった、と慌てていると、神尾君が自分の背広を私の膝にかけてくれた。

「すみません」

「すみませんよりありがとうって言ってもらえた方が嬉しいです」

 コンビニで買ってきたのか、ガサガサとおにぎりの袋を開けながら神尾君が言う。

「ありがとう……ございます」

「はい」

 にこ、と笑って見せてから、神尾君がおにぎりにかぶりついた。
 よく見るとコンビニ袋の中には、あと小さな唐揚げのパックとサンドイッチしか入っていない。

 大の男の人がこんな量で足りるのだろうか。
 大食漢の父を思い浮かべて、私はちょっと心配になった。

「あの、よかったらこれ食べませんか」

 二段になっているお弁当箱のおかずの方をぱかっと開けて勧める。
 中身は鮭と小松菜のおにぎり、蓮根入りきんぴら、ほうれん草の胡麻和えに海老の落とし焼きが詰まっていた。
 あまり見栄えのするものではないが、どれも私の好きなものだ。

「うわ、美味そう」

 神尾君の目がキラキラと輝いて私のお弁当を食い入るように見つめる。
 ありものと昨晩のおかずを詰めただけなので、あんまり注目されるといたたまれない。

「すみません、実家が田舎の方でずっとこういうもの食べてたので……私は好きなんですけど、若い男の人が好きなものではないかも」

「そんなことないです」

 首を振って神尾君が私の言葉を退ける。

「俺、好き嫌いはないですけど、こういう家で出てくる和食みたいなの大好きなんです。でも、俺が食べたら篠瀬さん困りませんか」

「大丈夫です。万が一残業になった時用に、いつも多めに作って持ってきてるので」

 実際、おにぎりにサンドイッチの神尾君の昼食より、私のお弁当の方が量もボリュームもある。
 ちら、とコンビニ袋に目をやると、こちらの考えを察した様子で神尾君が肩をすくめた。

「便利なんでついコンビニ弁当ばっかり多用しちゃうんですけど、あんまり食欲そそられなくて。いつもこんなもんなんです」

「お腹持ちますか」

「──まあ」

 そうですね、と言いかけた神尾君のお腹から、くるくる、と可愛い音が鳴る。
 どうやら食欲を刺激できたようだ。

「すみません」

 片手で顔を隠した神尾君の耳がほんのり赤くて、私は思わず笑ってしまった。
 かわいい、なんて言ったらますます顔を上げてくれなくなりそうだったので言わなかったけれど。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

体育館倉庫での秘密の恋

狭山雪菜
恋愛
真城香苗は、23歳の新入の国語教諭。 赴任した高校で、生活指導もやっている体育教師の坂下夏樹先生と、恋仲になって… こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載されてます。

子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜

珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。 2匹の怪獣さんの母です。12歳の娘と6歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。 毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...