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魔物の子
しおりを挟むフィア様は仕事に行って、変わりにナハト様が来てくれた。
「マナ様は本当に可愛らしいですね」
「ナハト様…ありがとう」
ナハト様は鏡の前に椅子を持ってきて僕を座らせて、髪を梳かしてくれている。
フィア様が帰って来るまでに可愛くしましょう
なんて言ったのだ。ナハト様が…
「ナハト様は器用ですね」
「そうですか?確かに私は早くにフィア様の使用人になりましたから、勝手に器用になったのかもしれないです」
「アルファの方も使用人するなんて驚きました」
「私はオメガですよ」
「え!?」
僕は驚いてナハト様を見つめる。
「オメガ…項隠さなくて大丈夫なのですか?」
ナハト様の首には何も着いてない。
「大丈夫です。私は発情期がとても軽くて、そのお陰で使用人として王宮に上がれました。元々私は行儀見習いになりたくてここに来たのです」
「凄いな…オメガでもちゃんと仕事できるなんて…」
オメガは迫害されるのにナハト様みたいな生き方が出来るなんてとても凄いことだ。
「私は生まれた時から両親が居て、愛されて育ちました。両親はベータなので普通に暮らしていましたが、十歳の時に、行儀見習いのチラシを見てここに来たのです。両親の許可もちゃんともらいました」
きっとご両親はナハト様のしたい事をさせてくれたのだろう。
「この容姿と年齢で私はフィア様の使用人にして頂きました。けど、私は…」
ナハト様は後ろから僕を抱きしめる。
「ナハト様?」
「私は運が良いだけです…ただ運が良いだけ…」
「けど使用人の仕事が出来るのは才能だよ。僕はきっと出来ないから…」
例え僕が行儀見習いとしてこの王宮に来ても、仕事は出来ない。
発作がでたりして迷惑をかける。
「マナ様はとてもお優しいですね」
「そんな事…」
ない、と言いかけた時だった。
バンっと扉が開いてアラン様が入って来た。
「アラン煩いよ。静かにして」
「んな事言ってられるか!ナハトお前、回復魔法使えただろう!?」
「使えるけどどうしたの?」
「こいつを治してくれないか!?」
アラン様の腕の中には真っ白な子犬がいた。
「子犬?」
「いや、魔物の子だ。たまたま庭で見つけてよ」
子犬はアラン様の腕の中で弱々しく鳴いている。
足を怪我しているらしい。
「ナハト様…助けてあげて…」
「もちろんですよ」
ナハト様は床に布を敷いて子犬をそこに寝かせるように言う。
そして回復魔法をかけると、子犬の足の傷が治る。
「ヒャン!」
「良かった。治ったな」
「可愛い…」
子犬なんて始めてみたけどとても可愛い。
「ヒャン!ヒャン!」
「わっ!!」
「マナ!?」
子犬は僕に飛びかかってくる。
抱きしめると、キューって鳴く。
「可愛い。暖かい」
「魔物の子にしては懐いてるな」
「親とはぐれたのかな?」
「さあな」
「アランこの子どうするの?」
するとアラン様は少し悩む。
「騎士団で飼うか。魔物は役に立つし…」
子犬は僕にスリスリとしてる
「可愛い…」
「マナに懐いたな…」
「そうだね。ねぇアラン。マナ様に飼って貰うのは?フィア様が居ない時も寂しくないと思うし、フィア様に契約を結んでもらえば護衛にもなる」
「それいいな。じゃあフィアが帰って来たら話してやるよ」
「僕が飼っていいの?」
僕は子犬を撫でながら聞く。
「ああ。だからフィアが戻って来たら名前を考えような」
「うん!」
子犬を撫でながら僕は頷いたのだった。
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