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発作と過去
しおりを挟む「けほっ…けほっ」
「ルナ、苦しいね…」
朝起きたら久しぶりに発作が出た。
「はぁ…はぁ…フェル…」
苦しくてフェルに抱きつくとフェルは僕の胸元に魔法を当ててくれる。
「けほっ…けほっ…こほっ」
魔法のおかげで発作が少しずつ治まる。
やっぱりフェルの魔法は凄い。
「はぁ…ありがとうフェル。もう大丈夫だよ」
「良かった。けど今日はゆっくりしようね。ドレスの仕立ても明日にしてもらうから…」
「ごめんなさい」
申し訳なくて泣きそうになるとフェルが笑う。
「大丈夫だよ。父上もルナの体のこと分かってるから」
「うん…」
僕はベッドに横になる。
「フェルはお仕事?」
「うん。今日はどうしても外せない会議があるんだ。僕の変わりにアルトがそばに居てくれるから少しだけ我慢出来る?」
「寂しい…行かないで… 」
フェルを困らせるのは分かっているけど発作の後は寂しくてたまらない。
「じゃあ一時間で会議終わらせて来るから、それなら我慢出来る?」
「本当?」
「本当だよ。書類は部屋でも出来るからね。一時間だけアルトと居てくれる?」
「うん。一時間なら我慢する」
「いい子」
手を握られてキスをされる。
するとドアが叩かれた。
「副団長おはようございます」
入って来たのはアルト様だ。
「アルトおはよう。ルナのこと頼めるかな?僕も会議が終われば直ぐに戻るからね」
「わかりました。ルナ様、体調は大丈夫ですか?」
僕は頷く。
アルト様を近くで見るとかっこいい。
フェルは王子様って感じだけど、アルト様は緑の短い髪と高い身長で大人のカッコ良さがある。
顔もイケメンだ。
「私が傍に居ますから安心してくださいね」
「アルトありがとう。じゃあ後をお願い。」
「わかりました」
フェルは部屋を出ていきアルト様と僕だけになる。
「ルナ様。フェル様の素敵な話をしましょうか」
「え?フェルの?」
「はい。とても素敵なお話です」
アルト様はそう言って椅子に座る。
「ルナ様と出会う前のフェル様をどんな方か聞いた事ありますか?」
「ないです…けど優しいんじゃないのですか?」
フェルはとても優しい。本当に優しくて理想の王子様だ。
「いいえ。昔のフェル様はとても厳しい方でした。」
「え?」
「笑わない王子で、とても厳しかったです。今のように話すこともありません」
「話さないの?」
今のフェルとは想像が出来ないし、ゲームのフェルとも似ても似つかない。
「はい。付いたあだ名は氷の王子という嫌味を含んだあだ名でした」
「氷の王子…」
聞くだけで冷たそうな名前だ。
「しかしある時、彼は変わられたのです。ルナ様、貴方に出会って…」
「僕に?」
「はい。フェル様は何時も貴方との話を楽しそうにしていました。最初は王都のイベントで知り合ったのだと。くじか何かで、ダンスのペアになりそれから仲良くなったのだと楽しそうに話していました」
フェルの楽しそうな顔が浮かび、嬉しくなる。
「だから私達はルナ様に感謝しているのですよ」
「え?なんで?」
「フェル様を救ってくれてありがとうございます。彼は王族なので人の倍、重圧とかがあったのでしょう。歳の近い友達も王族は出来にくいので…」
「そ、そうなんだ…」
フェルは人に囲まれてるから友達がいるのかと思ったが違うらしい。
「だからルナ様を大切にするのはとても分かります。あ、この話はフェル様には秘密ですよ。きっと怒りますから。」
「怒るの?」
「本人にとっては恥ずかしい話だとか…」
「フェルって恥ずかしがるの?」
「はい。今は騎士団では年相応ですよ。それでも私達騎士の憧れです。魔法も剣も本当に上手ですからね」
フェルは本当に皆の憧れなのだと思う。
フェルの知らないとこが知れて嬉しい。
「アルト様、もっとフェルのこと教えて?僕が知らないフェルの話して?」
「いいですよ。では次は面白い話を…そうですね…フェル様が木苺を大変なことにした話をしますね」
そして僕はフェルの過去の話を聞く。
木苺をばら蒔いて、アルト様の友達の騎士に怒られたとか、アルト様と友達と勝手に街に出て三人で事件を解決した話とか…
僕の知らないフェルはどの話もかっこよくて、僕はもっとフェルを好きになったのだった。
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