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参、訪れたのは死
しおりを挟む今日はあの女と顔を合わせた。
彼女は制服ではなく、スーツで学校に来た。
声をかけられたときに就活をやっている先輩かと勘違いした。
「警察だとわからないようにする」と約束したから、そこまで周りに溶け込めたとは思わなかった。
「何ぼーっとしていますか?」あの女は微笑みながら僕に聞いた。
「あっ、なんか妙な感じです。」僕は視線を逸らして、「だってチャットでいろいろ話してきましたが、今日は初めてあって、イメージと随分違いますね。」
「そうですか?どんなイメージでしたか?」
僕は彼女の顔を見るのがなんか恥ずかしくなってきました。
「よく絵文字を使うから、おじさんかなと...」
「はーー?!」
「いや、あのさ、友たちが言っていた、それは絵文字はおじさんがいっぱい使いますと...」
「ま、その話はもいい。」彼女はカバンから一枚の名刺を取り出した、「これ、連絡方法が書かれています。もちろん偽名ですよ。」
名刺は黒地で左側に紫の模様があり、その模様は宮廷の宴会に出るような盛装を着ている女性のシルエットに見える。
右側に「ファッションクラブ 観月 しのぶ」とキラキラした名前が書かれ、その下に電話番号、メールそしてSNSのアカウントがあった。
そして名刺からいい香りがする。
なかなか綺麗な名刺だ。
「電話番号とか通じることですか?」
「いいえ、それもカモフラージュです。」彼女は手を差し伸べて、僕が持っている名刺を裏返した。「ここを見て」
名刺の裏に紫色の紋章があった。
見覚えがある、あのファイルの最初にあった紋章と同じだ。
「この紋章は実はQRコードになっていますから、携帯のカメラでスキャンすれば、必要な情報が受信できます。」彼女は近くのベンチに座った。
「なるほど、わかりました。」僕もそのベンチにすわり、「バイトの情報ですね。タウンワークか何かのサイトとつないで......」
「何?今タウンワークと言いました?」彼女は結構頑張って我慢していると思うが、すでに顔中に笑いがまん延し始めた。
「え、だってお坊さんがバイトできると言ったから、しのぶさんと友たち登録しました。」
「お坊さん?あ、入間さんのことですね。」彼女は首を傾げてつづけた、「彼は本当に適当な坊主ですね。けど、頼みたいことは確かにあります。そしていい報酬を用意してあります。」
「それを聞きたいです。」
「さ、どこから始めましょうか?」彼女は顔を上げて長い足を組んだ。「あなたは『TSES』という言葉を知っています?」
「知らないです。」
「やっぱりね。『TSES』はあなたのような子ですよ。『特殊交換留学生』の略です。」
「えーー?それ、スペシャル・エクスチェンジ・スチューデント、SESでいいじゃないですか?」
「今は日本人英語をバカにしましたよね。というか、気になるところは別にあるでしょう?」
「へへ、ごめんなさい。確かに、なぜ僕ですか?」
「あなたはここの奨学金で日本に留学してきたでしょう?」彼女は名刺の裏にある紋章を指で指した。
「そうでしたか!!初めてわかりました。日本にくる前の手続きは全部ふるさとの僧侶さんがやってくれました。」
「ま、それを置いといて、あなたに依頼した最初の仕事はこの間に渡したそのファイルです。」
「ごめんなさい。まだ読み終えていないです。」
「大丈夫、その事件の経緯を知ったのち、とりあえずいくつか不審な点を見つけてください。あら、そんな顔しないでよ、バイト面接の代わりだと考えてください。」
「僕を試すのはいいですけど、時給は?東京都の最低賃金は1000円ですよ。」
「1071円ですよ。」彼女はニヤリとまた笑った、「安心して採用されたら、他のバイトしなくいいぐらいの報酬を保障する。」
「それで、名刺にあるのは偽名ですから、わたしは『しのぶ』ではありませんよ。」
「じゃ、何と呼べばいいですか?」
「そうだね、やっぱりシノブっていいですよ。」
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長英はペニスの先端から伝わってきている快感をかみしめながら、さらに腰を振る頻度を上げた。
濡れた膣のぬくもり、揺れる乳房の柔らかさ、男は他に何を求める?
「ああああああ、いいいいい......」と長英の体が急に震えはじめた。
続いて彼の視線はぼやけ、耳に「キィーーン」と鳴り、元々乳房を握ていた両手はなぜか痙攣し、自分の胸に縮み、そして猛烈な痛みと血が頭蓋骨から脳の中に刺しこんだ。
何が起きたのかわからない長英の二つの目玉は別々で勝手に動き始めた。
彼の痙攣はだんだん止まり、硬直が回った体は前に倒れ、全裸の女に覆い被さった。
「最高に気持ちよかったんだろう?」あの男の声が窑洞の中に響いた。
長英はまだ聞こえるが、うつ伏せて寝床以外は何も見えない。
治民は手を伸ばし、長英のペニスを膣から抜いた。
失血によって血圧が急に下がったにも拘らず、強すぎるショックで長英のペニスはまだ硬いままだ。
「チェッ、出してねかよ。また今度だね...」
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1985年5月27日、黄昏が迫る商県の造紙工場の財務室内で、名前は侯義亭という出納員が就業前の業務を整理していた。
その時、財務室のドアが突然開いた。
開けたのは侯義亭(こうぎてい)のいとこ、杜長年だった。
実は1985年の5月16日、杜長英と兄の長年が別れた後、家族は杜長英と連絡が取れなくなり、焦りながら至る所を探したが、手がかりは一切なかった。
27日の昼間、長年はいつものように兄弟が最後に別れた市場に行き、
夕方、帰宅途中に製紙工場を通りかかった。
そこで彼は経理を担当している従兄弟の義亭を思い出し、何か手がかりがないか確かめようとした。
長年と義亭はしばらく会っていなかったが、長年には叙古する時間がなく、直接侯義に尋ねた。
「私の弟、長英はもう十数日間家に帰っていない。市内でずっと探しているが……」
義亭は驚いて何事かと問い詰めた。
長年は事情を説明していたら、義亭の顔色が変わり、思わず頭を叩いて言った。
「ああ、思い出した!二日前に、額面一元八角五分の借用書を持って、ここにお金を受け取りに来た男がいた。だが、借用書に書かれた名前は彼ではなく、杜長英だった。その時、私は彼に何事かと尋ねたら、彼はお前の弟が彼に借金を返さないので、たまたま街で長英に出会い、弟が借用書を渡してお金を受け取るように言ったと言ったんだ!」
長年もその時、何かおかしいと感じ、急いで尋ねた。
「その人を見分けることができるか?」
義亭は鼻で笑った。「見分けるところか、あいつは有名人だぞ。」
「本当か?名前は?」
「この界隈ならみんな知っている悪人でね、名前は確かになおたみ、そうだ治民だ。」
「苗字は?知っているか?」
「龍だ、珍しいだろう『龍』という苗字だ。」
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