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壱、最初のケース

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僕は因が見える。
因果関係や因果応報の因だ。

そう、因だけ...

人の前世や出来事の流れが、現実に重なった影のように見えてしまう。
思春期に入ってから、きっかけもなく、いきなり目の前に現れた。

生まれ育った国ではこんな事があったら、僧侶に尋ねるのが普通だった。
僧は「東に行けばよい」といった。

生まれた国から見ると、東の果ては日本だった。

来てからわかったが、日本はとある「力」によって守られている。
その「力」のおかげで、影をみる回数がだいぶ減った。

というか、この世にある国々のほとんどが、自らを守る何らかの「力」が存在しているらしい。
目に見える軍事力や政治の影響力と違って、いにしえ或いは建国者から伝わってきた不思議な「力」だ。

因が見えてしまうのも、その「力」の一部らしい。
とある日、あの女にいわれた。

「ごめんなさい。あなたは何をいっているのかよくわかりません。僕はまだ日本語を勉強中です。」
僕は携帯のチャットツールから、あの女に返事した。

「とぼけないで、通訳ソフトぐらい使えるでしょう?」

「すみません。日本語、よくわかりません。」

「...」

「では、お休み下さい。僕は寝ます。」

「わかりました。やさしい日本語を使います。明日、あなたが通っている日本語学校に行きます。あなたの担任先生と話します。」

「おい、待って!!なんでいきなり学校に行くのよ?!」

「では、おやすみなさい。」

「警察が学校に行かれてしまうと困るって!」

「あら、日本語が上達になったね。あたしも日本語の先生になれる感じがしてきたwww」

「ムカつく!僕は日本で何も見えないぞ!サッサとあきらめてください!」

「まあ、気が早まらないで、とりあえずこれの中身、目を通してみて。明日つづきましょう。」

チャットツールからファイルが届いた。
そのファイル名は「CodeName_DragonTalon.pdf」、竜の爪?竜と爪?

開いてみたら、まず大きな紋章が目に入った。
紋章は日本の家紋と似ていて非なるような模様だから、よくわからない。

その下、一行目に割と最近の日付が書かれている。

二行目に「被害者: 48名確認済み、余罪不明」との文字があった。

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中国の陝西省商洛市しんせいしょうしょうらくしの下部にある商県しょうけん、つまり現在の商洛市商州区しょうらくししょうしゅうくだ。

商洛しょうらくは中国四千年の歴史の中、ずっと貧しい地域で、経済が非常に遅れているため、長い間流刑の場所として使われていた。

しかし、町の近くに「二龍山」というダムがあり、その周りの景色は誰でも美しいと感じるだろう。


ここでは、耕作可能な農地が少なく、大量の農村労働力が暇しており、唯一の働き口は出稼ぎだった。

交通が非常に不便なため、人々の考え方も結構閉鎖的だった。
農民たちは出稼ぎの際、決して家から遠く離れず、近くの県都で働く機会を探すのが習わしだった。


言うまでもなく、仕事の多くは日雇いか、10日から半月のような短期だった。
彼らは働き口を見つけると、すぐに働き始め、家族と連絡を取ることはなかった。

その商県の町に「西関駅せいかんえき」という長距離バスステーションがあって町と外をつなぐ幹線道路を走るバスの憩いの場だったが、人の流れは多いので、雇い主を待つ農民が集まっていた。


1985年5月16日、刘湾郷の叶庙村りゅうわんごうのえいみょうむらの豚飼いである長英ながひでは兄の長年ながとしと一緒に県都に訪れた。
二人で町の市場に行き、家から持ってきた農産物をすぐに売り切った。

しかし、飼い豚が子豚を産んだため、長英は母豚の乳を催すための飼料を作る豆をついでに買おうと思って、兄弟は県の供給販売協同組合の近くで別れた。

長英は必要なものを買い終えた後、一人で西関駅に来て、次のバスに乗って帰ろうとした。

「あの、すみません。そこのお兄さん、ちょっといいですか?」とある小柄な男性が、長英に声をかけた。

「あーー、何ですか?」、長英はあくびしながら見下ろした。
別に軽蔑や傲慢ではなく、相手が長英より頭一つ分も背が低くなっているから、下を見ないと相手の目を見ながら話せない。

「実はね、お手伝いさんを探しているのです。ちょっとした体力を使う仕事があってね...」
話しかけてきた人は背が低いだけではなく、体格全体がガリガリな印象だった。

「別に僕は仕事を探していないから、よそに当ててみてくださいね。」、長英は断ろうとした。

「いやいや、お兄さんは豚を飼っているでしょう。ほら、飼料の豆を背負っているではないですか?」小柄な男性は困りそうな顔で話を続けた、「実は僕も豚を飼っている。庭に放し飼いしてきたが、最近嫁を迎えたから、豚が臭いって言われた。」

「放し飼いか、そりゃ臭いだろうね。」長英は微笑んだ。

「そうなのよ!」小柄な男性の口元も吊り上がった、「だから豚小屋を作ろうと考えた。けど、僕一人ではとても無理でね。」

「なるほど、豚小屋ね。それは通気性と撥水をよくしないと豚が病気なるぞ。」

「やっぱり、僕の目は狂わない!やはりお兄さんはこの道の職人だね!でも、豚小屋を作るには一体どれぐらい時間がかかるだろう?」

「そりゃ、材料がそろっているなら、2時間もあれば立派なものを作れるよ。僕の腕があればね...」

「2時間か、ちょうどいいのではないか?バスはあと3時間ぐらい来ないのよ。しかもいつも遅れるから。」

「いやーー、でも...」

「もちろん、ただとは言わないよ。5元、5元はどう?」

「5元も!!」

あの時代の中国では、5元が今の日本円でいうと、1万円のような感覚だった。

「嫁が怒っているから、困っているのよ!それで豚はちゃんと育ったら、20元以上するだろう。」、小柄な男性は長英の腕を引っ張りながら言った「うちはすぐそこにあるから、こんな暑い中でバスを待たないで、さ、うちで小屋を作ったら、お茶でも飲んで待とうよ。」

「本当に5元くれるの?」

「もし約束を守らなかったら、お兄さんが怒って僕を殴ってもいいぞ!」

長英は小柄な男性のやせ細った体を見て、「いくらなんでもこいつには負けないだろう」と思った。

それから、兄の長年は弟の長英と二度と会うことはなかった...
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