【完結】シリアルキラーの話です。基本、この国に入ってこない情報ですから、、、

つじんし

文字の大きさ
上 下
1 / 10

壱、最初のケース

しおりを挟む


僕は因が見える。
因果関係や因果応報の因だ。

そう、因だけ...

人の前世や出来事の流れが、現実に重なった影のように見えてしまう。
思春期に入ってから、きっかけもなく、いきなり目の前に現れた。

生まれ育った国ではこんな事があったら、僧侶に尋ねるのが普通だった。
僧は「東に行けばよい」といった。

生まれた国から見ると、東の果ては日本だった。

来てからわかったが、日本はとある「力」によって守られている。
その「力」のおかげで、影をみる回数がだいぶ減った。

というか、この世にある国々のほとんどが、自らを守る何らかの「力」が存在しているらしい。
目に見える軍事力や政治の影響力と違って、いにしえ或いは建国者から伝わってきた不思議な「力」だ。

因が見えてしまうのも、その「力」の一部らしい。
とある日、あの女にいわれた。

「ごめんなさい。あなたは何をいっているのかよくわかりません。僕はまだ日本語を勉強中です。」
僕は携帯のチャットツールから、あの女に返事した。

「とぼけないで、通訳ソフトぐらい使えるでしょう?」

「すみません。日本語、よくわかりません。」

「...」

「では、お休み下さい。僕は寝ます。」

「わかりました。やさしい日本語を使います。明日、あなたが通っている日本語学校に行きます。あなたの担任先生と話します。」

「おい、待って!!なんでいきなり学校に行くのよ?!」

「では、おやすみなさい。」

「警察が学校に行かれてしまうと困るって!」

「あら、日本語が上達になったね。あたしも日本語の先生になれる感じがしてきたwww」

「ムカつく!僕は日本で何も見えないぞ!サッサとあきらめてください!」

「まあ、気が早まらないで、とりあえずこれの中身、目を通してみて。明日つづきましょう。」

チャットツールからファイルが届いた。
そのファイル名は「CodeName_DragonTalon.pdf」、竜の爪?竜と爪?

開いてみたら、まず大きな紋章が目に入った。
紋章は日本の家紋と似ていて非なるような模様だから、よくわからない。

その下、一行目に割と最近の日付が書かれている。

二行目に「被害者: 48名確認済み、余罪不明」との文字があった。

--------------------------------------

中国の陝西省商洛市しんせいしょうしょうらくしの下部にある商県しょうけん、つまり現在の商洛市商州区しょうらくししょうしゅうくだ。

商洛しょうらくは中国四千年の歴史の中、ずっと貧しい地域で、経済が非常に遅れているため、長い間流刑の場所として使われていた。

しかし、町の近くに「二龍山」というダムがあり、その周りの景色は誰でも美しいと感じるだろう。


ここでは、耕作可能な農地が少なく、大量の農村労働力が暇しており、唯一の働き口は出稼ぎだった。

交通が非常に不便なため、人々の考え方も結構閉鎖的だった。
農民たちは出稼ぎの際、決して家から遠く離れず、近くの県都で働く機会を探すのが習わしだった。


言うまでもなく、仕事の多くは日雇いか、10日から半月のような短期だった。
彼らは働き口を見つけると、すぐに働き始め、家族と連絡を取ることはなかった。

その商県の町に「西関駅せいかんえき」という長距離バスステーションがあって町と外をつなぐ幹線道路を走るバスの憩いの場だったが、人の流れは多いので、雇い主を待つ農民が集まっていた。


1985年5月16日、刘湾郷の叶庙村りゅうわんごうのえいみょうむらの豚飼いである長英ながひでは兄の長年ながとしと一緒に県都に訪れた。
二人で町の市場に行き、家から持ってきた農産物をすぐに売り切った。

しかし、飼い豚が子豚を産んだため、長英は母豚の乳を催すための飼料を作る豆をついでに買おうと思って、兄弟は県の供給販売協同組合の近くで別れた。

長英は必要なものを買い終えた後、一人で西関駅に来て、次のバスに乗って帰ろうとした。

「あの、すみません。そこのお兄さん、ちょっといいですか?」とある小柄な男性が、長英に声をかけた。

「あーー、何ですか?」、長英はあくびしながら見下ろした。
別に軽蔑や傲慢ではなく、相手が長英より頭一つ分も背が低くなっているから、下を見ないと相手の目を見ながら話せない。

「実はね、お手伝いさんを探しているのです。ちょっとした体力を使う仕事があってね...」
話しかけてきた人は背が低いだけではなく、体格全体がガリガリな印象だった。

「別に僕は仕事を探していないから、よそに当ててみてくださいね。」、長英は断ろうとした。

「いやいや、お兄さんは豚を飼っているでしょう。ほら、飼料の豆を背負っているではないですか?」小柄な男性は困りそうな顔で話を続けた、「実は僕も豚を飼っている。庭に放し飼いしてきたが、最近嫁を迎えたから、豚が臭いって言われた。」

「放し飼いか、そりゃ臭いだろうね。」長英は微笑んだ。

「そうなのよ!」小柄な男性の口元も吊り上がった、「だから豚小屋を作ろうと考えた。けど、僕一人ではとても無理でね。」

「なるほど、豚小屋ね。それは通気性と撥水をよくしないと豚が病気なるぞ。」

「やっぱり、僕の目は狂わない!やはりお兄さんはこの道の職人だね!でも、豚小屋を作るには一体どれぐらい時間がかかるだろう?」

「そりゃ、材料がそろっているなら、2時間もあれば立派なものを作れるよ。僕の腕があればね...」

「2時間か、ちょうどいいのではないか?バスはあと3時間ぐらい来ないのよ。しかもいつも遅れるから。」

「いやーー、でも...」

「もちろん、ただとは言わないよ。5元、5元はどう?」

「5元も!!」

あの時代の中国では、5元が今の日本円でいうと、1万円のような感覚だった。

「嫁が怒っているから、困っているのよ!それで豚はちゃんと育ったら、20元以上するだろう。」、小柄な男性は長英の腕を引っ張りながら言った「うちはすぐそこにあるから、こんな暑い中でバスを待たないで、さ、うちで小屋を作ったら、お茶でも飲んで待とうよ。」

「本当に5元くれるの?」

「もし約束を守らなかったら、お兄さんが怒って僕を殴ってもいいぞ!」

長英は小柄な男性のやせ細った体を見て、「いくらなんでもこいつには負けないだろう」と思った。

それから、兄の長年は弟の長英と二度と会うことはなかった...
--------------------------------------
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~

aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。 ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。   とある作品リスペクトの謎解きストーリー。   本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。

ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。  新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。  現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。  過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。  ――アリアドネは嘘をつく。 (過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

消された過去と消えた宝石

志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。 刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。   後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。 宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。 しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。 しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。 最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。  消えた宝石はどこに? 手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。 他サイトにも掲載しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACの作品を使用しています。

舞姫【中編】

友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。 三人の運命を変えた過去の事故と事件。 そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。 剣崎星児 29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。 兵藤保 28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。 津田みちる 20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。 桑名麗子 保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。 亀岡 みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。 津田(郡司)武 星児と保が追う謎多き男。 切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。 大人になった少女の背中には、羽根が生える。 与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。 彼らの行く手に待つものは。

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。 補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。 しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。 そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。 「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」  ルーナの旅は始まったばかり!  第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】リアナの婚約条件

仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
山奥の広大な洋館で使用人として働くリアナは、目の前の男を訝し気に見た。 目の前の男、木龍ジョージはジーウ製薬会社専務であり、経済情報雑誌の表紙を何度も飾るほどの有名人だ。 その彼が、ただの使用人リアナに結婚を申し込んできた。 話を聞いていた他の使用人達が、甲高い叫び声を上げ、リアナの代わりに頷く者までいるが、リアナはどうやって木龍からの提案を断ろうか必死に考えていた。 リアナには、木龍とは結婚できない理由があった。 どうしても‥‥‥ 登場人物紹介 ・リアナ 山の上の洋館で働く使用人。22歳 ・木龍ジョージ ジーウ製薬会社専務。29歳。 ・マイラー夫人 山の上の洋館の女主人。高齢。 ・林原ケイゴ 木龍ジョージの秘書 ・東城院カオリ 木龍ジョージの友人 ・雨鳥エリナ チョウ食品会社社長夫人。長い黒髪の派手な美人。 ・雨鳥ソウマ チョウ食品会社社長。婿養子。 ・林山ガウン 不動産会社社員

処理中です...