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第30話 場末の酒場の誓い、絆崩壊の足音

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 ノートを写したいと希望する眼鏡少年に、構わないけれど故郷の国の文字だと伝えると解決方法も備えているようだ。彼のノートらしき古紙をまとめた物を机の上に並べて置き、両手をそれぞれにかざして集中している。

「俺は商店の下働きをやってて、こういった小手先の魔法ならある程度得意なのさ」

「流石生活魔法使い」

 へー、と思いながらグループの太った少年が冷やかすのを聞きながら、結局どうするのだろうと思っていると、眼鏡少年の古紙のノートにはこの国の文字で転写されているのに気が付く。

「翻訳魔法で文字の意思を読み取って、それを共通文字に変換して転写しているんです」

 どうやっているのか分からないなと間抜けな顔をしていたためか、一番背の低い少年が教えてくれる。自分のも頼むと一番背の高い少年が言い始めるとグループ内全員に頼まれており、今度は共通文字の眼鏡少年の古紙のノートから、残り3人のノートに転写するようだ。

「おっちゃんありがとな。他にも写したいノートがあって、良かったらお礼がてらに奢るから俺たちと一緒に夕食で飲まないか?」

「ああ、私も王都に慣れてなくて学校のことも詳しく聞けるなら、喜んでご一緒するよ」

 同時に転写を魔法でやってのけて器用だなと眺めていると、どうやら苦学生仲間のグループでお金を出し合って、飲み会に誘ってくれるらしく、眼鏡少年から声を掛けられる。ある意味、同じ講義の幾つかに出席する彼らとは学友とも言えるし、王都の魔法学校や魔法のことを詳しく聞ける相手もいなかったためこれも良い機会だと思って参加することにする。

「じゃあ、18時に正門前に集合な!!」

「了解したよ」

 眼鏡の少年は平凡そうな見た目だが、もしかしたら王都ではなく田舎の方の出身なのか、距離の詰め方が王都でこれまで会った人たちとは違った様子が見られる。飲み会に参加すると今日は帰りが遅くなるし、寮母に食事を断ることを伝えようと、専属受付嬢に渡された白い塊の魔道具を取り出す。

「私です。今日は夕食に誘われたため、学友と外で食事を摂ります。帰りも遅くなりますが気にしないでください」

 手のひらサイズの白い玉に話し掛けると、その玉は鳥の形になって空を飛んで下宿している建物までメッセージを運んでいく。鳥を愛でる趣味も無かったため、何という鳥なんだろうと思いつつ、この玉を携帯するようになった経緯を思い出す。
 あれは、初めて魔法学校に登校する日…



「何するんですか!!」

「それはこちらの台詞ですわ!!」

 下宿先の建物から出ると、腕を組もうとした相手の手を振り払うと、逆に叱られてしまう。彼女は専属受付嬢でありながら護衛を兼ねているらしいが、見た目が若い女性と腕を組むのは落ち着かないし、彼女特有の冷たすぎる肌は触れたいと思わない。
 憤慨している彼女はせっかくの機会なのに、と言うが何を目的にしているのか問うと、素直に返答してくれる。

「タタールの街とビキンの街の受付の娘たちが先に会ったのに、私の方が仲良くしていると知った時の反応を考えたら楽しくなりませんか?」

 それにまだ会っていない女よりもリードが取れますのよ、と口元だけ弧を描く笑みを浮かべる彼女を見て、彼女もまた受付に据えられる過去の行いと理由があるのだと納得する。
 そんな彼女を連れだって歩くのが、自身の身柄を狙う相手の牽制になるらしいが落ち着かない。毎回からかわれるのもしんどいので、彼女には見えないように離れて護衛をしてもらうことをお願いし、緊急時の連絡用の魔道具を持たされることになったのだ。
 こうして護衛をしてもらってありがたいが、彼女は彼女で受付の縛りから解放されて、自身の身柄を狙う相手を好きに処理出来るらしいので楽しめていると聞くと、目の前で護衛をされていなくて心から良かったと思う。

 気を取り直して午後の残りの授業を受けようと思う。この魔法学校では、授業が色々と存在し、基礎から教わる授業もその中にあるがエリートの子ども向けで用意された椅子は指定席となっている。高い金を払って、10歳にも満たない子どもたちに囲まれて授業を受けるのは流石に耐え切れないと基礎から学ぶのは諦めることにした。
 他の授業にしても、講義の形式も1つのテーマを挙げて自由に議論を交わしているものもあれば、ひたすら魔法を行使する実戦形式もある。その実戦形式で、的に向かって指定された属性の魔法攻撃を撃ち続けるのは、ある意味冒険者や兵士団の魔法師としてやっていくのなら必要そうだと感じた。
 自身は、とりあえず基礎を学びたかったが、ゲンガンが元の姿に戻れない可能性も考えて、ダンジョンと魂の分野についての授業を選んで講義を聞いているがさっぱりだ。基礎のことについても思うが、各学派と各流派でやり方が違うし、魔法を行使する個人によっても特性や魔力の大小、技量が異なるため一概に扱うのは難しいのではないかと考えるようになった。

 講師の中には理論的に考えている人たちもいるが、自身にとってはよくわからない力をよく分からないまま使用して、いつか致命的な失敗をしてもおかしくない状態だ。それにノートを共有した学友たちのように、多くの学生は発動体を持っているが持っていない貧乏学生たちも当然いるため、そんな貧困生活の学生たちが志半ばで道を諦めるのも当然起こって来るのだろうと考えてしまう。



「えー、同じ講義での出会いから、いつしか助け合う関係になった我ら…」

「長いよー」

「では乾杯」

「「「「「乾杯」」」」」

 グループリーダーの眼鏡少年が挨拶を行おうとするが、太った少年が腹を空かせて待ちきれなくなり、適当に乾杯を行う。木製のジョッキの中身はワインの搾りかすで造られた酒を、さらに極限まで水で薄めて気持ちだけ酔えるようなものらしい。ガタガタと揺れる丸テーブルの上の大皿には、1個が拳大の芋の揚げ物と焼かれた芋と、煮られた芋が山のように積み重なっており、腹を満たす量だけは困らないようになっていた。
 正門での待ち合わせ後、彼らに案内されたのはいわゆる場末の酒場であった。王都のメイン通りにある高級店には最初から縁が無いが、こういった学生御用達の安く飲み食い出来る街の中心から外れた店は、学生時代にはあまり経験が無かったので新鮮だ。
 当時、何とか滑りこんだ大学は、実家からどうにか通える距離にあったが、下宿をするための親からの金銭的援助も期待できず、1限の講義に出席するために毎日始発の電車に乗っていた。終電も驚く程早い地方暮らしでは、大学のサークル活動にも参加することは出来なかった。高校進学と共に諦めた部活動だが、大学では何かサークル活動を出来ると信じていたのに、家と大学との往復だけで時間も取られてアルバイトを行う余裕も無かった。理想のキャンパスライフは存在し無かったのだ。
 こうして考えてみると、学部全体の飲み会くらいにしか参加出来ていなかった学生時代を思い出すと、少人数の学友と場末の酒場で飲み会出来るのは楽しいと思ってしまう。

「では、今回は初めての参加者もいるので、俺から右回りに順番に挨拶をしていこう。まず俺は…」

 最初に挨拶をしてくれるのは、グループリーダーのマーディンと名乗る少年だ。平凡そうな見た目だが、意外に器用に魔法を行使しており、こういった場面でも率先して行動している。瓶底のような厚さの眼鏡に、寝癖を直していない黒髪が初対面の印象を下げているが、商店の下働きをしているだけあって色々と気が利くと思う。
 彼はどうやら魔法師が珍しい故郷の村総出で、後は大魔法師か英雄かと送り出されたようだが、魔法学校に来てみると己なんかの魔法師は幾らでもいることを知り、伸び悩んでいるようだ。それでもいつか、故郷の村の人たちの生活を豊かにして恩を返したいと話す彼は、将来は大物になるのではないかと考える。

「次は、自分だな。名前はスタインだ。一応、騎士男爵家の4男だが家を継ぐあてもないし、家も半ば農民みたいな生活で平民と変わらないから接し方を気にしなくていい」

 次にわざわざ立ち上がって自己紹介するのは、坊主頭で身長ばかり高くてやせ細っている少年だ。家の状況から本来ならば騎士学校を目指すべきだが、どうやっても体格的に鎧を纏って戦うことが出来ず、実家で長男と次男の馬の世話係になるよりは、適性のあった魔法でどうにか身を立てたいと考えているようだ。彼は親の反対を押し切って半ば家を出るように王都に来たため、実家からの援助は一切なく、魔力を魔道具に込める仕事で日銭を稼いでいるらしい。

「次は…。この食い意地が張って意地汚いのはポッシュだ」

 皿から顔を上げることなく誰よりも芋料理を食べ続け、隙あらば他人の皿の芋まで食べようとする姿勢を見せるのは最も太った少年だ。マーディンが代わりに紹介する顔が太り過ぎて似合っていないおかっぱ頭の少年は、元は商家の長男で跡継ぎ候補だったらしい。甘やかされて育った少年は、そのまま跡を継ぐと思っていたが、少年よりも幼い弟の方が遥かに出来が良く、親から家を継がせるつもりがないと魔法師学校に入れられたらしい。彼は仕送りをもらっているらしいが、食費が多くなって魔法師ギルドの依頼をこなして日銭を稼いでいるようだ。

「次は、私ですね。私は魔法師のタナカと言います。元は商人をやっていて冒険者ギルドで配達の仕事もしていたのですが、冒険者仲間がダンジョンで呪いを受けてどうにかそれを解けないかと王都に研究に来ました」

 色々とややこしいが、商人として魔法師ギルドに登録したタナカ、魔法師として商人ギルドに登録したスズキ、冒険者のサドゥと偽りの身分が多いが、これ以上増えると自分でも管理し切れなさそうだ。
 王都に来て魔法師学校に顔を出すようになってからは、魔法師の身分を前面に押し出すためタナカと名乗っている。アメを売ってタタールの街を混乱させた商人のタナカと、一緒にする人はいないだろうと安易な考えでやっている。
 そして、魔法師としての歴は浅く、王都に来て1カ月も経っていないので学校のことや魔法についても色々と教えて欲しいと自己紹介の締めを行う。

「シルバーランクはすげーじゃん」

「やるな」

「おいらも同じで冒険者ギルドに登録してますね」

 マーディンとスタインには賞賛され、背の低い少年は冒険者ギルドに登録しているようだ。ポッシュは豚のように食事に釘付けになって、会話に参加することなく、最後に背の低い彼が自己紹介をする。

「おいらは、ビビって言います。故郷の家から逃げて、冒険者ギルドに登録して見習いの仕事で生きて来て、たまたま魔法の素養があって王都の魔法学校を目指して来たんだ」

 背の低いビビは、小人種の血が入っているようで年齢的にはとっくに成人しているようだが、とてもそうは見えない。彼ら共通の男子学生が身に着ける、黒いマントから性別を判断していたが、可愛らしい顔立ちがボーイッシュな幼い女の子にしか見えていなかった。
 性別を判断したのは、魔法師学校の女子生徒は基本は黒以外のマントを身に着け、黒のマントにしても裏地の色を変えたり金や銀の糸で刺繍を入れている。それは、アクセサリーを身に着けていない裕福ではない女子生徒も、マントについては最低限のオシャレをしているため彼は男性と思っていたのだ。
 そんな彼は、幼い女の子の容姿に見えることから家族にそういった目的の奴隷に売られそうになり、家から逃げ出して今に至るようだ。

「でも、タナカのおっちゃんは何で色んなギルドに登録してんだ?」

「気が付いたらというか、成り行きとしか言えませんね」

 彼ら同士の話は既にお互い知っているため、今回の初の参加者である自身に話題が向かうが、どうしてこんなにギルドに登録した身分が増えているのか自分でも知りたくなる。このままだと、兵士団と騎士団や錬金術ギルドにも所属することになるのだろうか、嫌な未来を想像して不安になってくる。

「あ、ポッシュ、お前食い過ぎなんだよ」

「良かったら、私の揚げ芋を食べてください」

 油でギトギトになった芋の塊は見ているだけで、年齢から胸やけと胃もたれを起こしそうで遠慮したくなる。それに、1人だけフードファイトをしているような、太ったポッシュという少年の食べっぷりは見ているだけでこちらの満腹中枢を刺激してくる。

「おー、おっちゃんいいのか!!」

「感謝する」

「ありがとうございます」

 ポッシュ以外の少年たちも、運動部に所属する男子高校生のような食欲で、芋の山を崩して食べており、気持ちの良い食べっぷりを見るのもいいが、若さの違いを思い知らされる。

「…あ、うっすい酒も料理も無くなっちゃったな」

「良ければ、在庫の商品から御馳走しますよ」

 そうして、皿の上に出すのは薄い揚げた肉を山盛りに出し、ジョッキには甲類焼酎とそれを割るための水の入った壺も取り出す。飲食店に持ち込んで食べるのは、正直マナー違反であるが店主も苦学生のためにやっているような店だから許してくれるだろうと思う。
 そうやって、店内を落ち着いて見てみれば、魔法師学校に通う学生だけではなく、体格の良さや日々訓練をしているだろう雰囲気から休みの兵士学校と騎士学校の学生も、この店で飲み食いしているのだろうと想像できる。

「おっちゃん、収納スキル持ちかよ!!」

「おい、ポッシュ!!礼も言わずに自分だけ食うな」

「おいらが収納スキル持ちなら、商人一本でやっていきますよ」

 ビビの言葉に自分でも最初は商人のつもりだったのに、何故だろうねと思う。ポッシュは遠慮していないが、他の3人には商品の売れない在庫だから気にすることなく飲み食いして欲しいと告げる。それに、現在は暇な時に水を作って収納スキルに仕舞って、売っていることを説明する。
 酒については、かなりきついため少量を水で割って飲むことをすすめる。ビビに関しては体も小さいため、血中のアルコール濃度も上がりやすそうだからかなり薄めることをすすめる。
 そうして、つまみのカツと酒を追加しながら、王都の便利な情報や学校のあの講義はどうとか、彼らの話す話題を聞いている。彼らもそれぞれの出自から、主流の派閥に所属出来ず、地方出身者や王都の商家が主に所属する革新派という寄せ集めの派閥に席を置いているようだ。

「金を稼がないといけないし、派閥の必修の講義にも出ないといけないしで大変だよなー」

 派閥や流派によって必ず出ないといけない講義があるらしく、それは大変だと思う。才能がある人は、自身ではよく分からない講義を聞いて1の情報からそれ以上の魔法を修め、瞬く間に学校を卒業して研究機関に勤めるか、派閥の仕事をするかダンジョンに可能性を求めるらしい。

「魔法師ギルドの依頼でずっと食えたらいいけど、貢献の条件を満たすのも大変だ」

「そんなことより、ぼくは王都で噂のアレが気になって怖いよ」

 ようやく食欲が落ち着いて来て、初めてポッシュが会話に入って来るが、噂とはなんだろうか。他の3人は知っているのだろうか、少し宙に視線を向けて何かを考えるような間が出来る。

「タナカのおっちゃんは知らないのか。王都で今、噂が出ててさ」

「自分は事実とも聞いたが」

「そういった話がたまに噂になるので、今回はどうでしょうか?」

 ポッシュ以外の3人も噂を噂として反応したり、一部では事実と捉えているとも話があるようだ。その内容とは、王都で初めは地下水路に住んでいる浮浪者が行方不明になり、その後は街中の老若男女問わずに同じような失踪事件が見られるようになったらしい。魔法師の中にも存在し、最近は魔法師学校に通う魔法師志望の学生にも失踪者が現れているようだ。

「魔法師が消えるのは稀によくあるから分かんねーな」

「稀とよくあるのは、どっちだ」

「魔法師の失踪はですね…」

 ビビからの説明では、派閥や流派に所属する魔法師が、その秘奥を組織と師匠から盗んだりするのは少なくないことで、結果逃げきれなかった魔法師の存在が消えることもたまにあるらしい。だが、今回は魔法師志望の学生にも失踪者が現れ始めたため、ポッシュも心配するようになったようだ。

「まぁ、俺らみたいな貧乏学生は金に困ってやらかさなきゃ、そんなことは関係ねーだろ」

「同感だ」

「そうですね」

 再びポッシュはカツを食べることに集中し始め、残りの3人とも暗い話を忘れるように酒を飲むのを再開する。こうやってこのグループを見ると、瓶底眼鏡・ひょろがり・デブ・チビと失礼な印象を持つが、ある意味バランスは取れているのかと思ってしまう。



「よし、それでは最後に各々が持つジョッキの酒に誓いまして。我ら生まれは違えども、将来の栄達をみな願わん」

「よっ!!」

「「「「「乾杯」」」」」

 締めの挨拶を求められ、彼らとは違って未来への可能性が限りなく少ないおっさんではあるが、何故か適当に浮かんだ文句で締めの酒を飲むことになる。周囲にいた酔っ払いも合いの手を入れつつ、学生時代に戻ったかのようなひと時はそれでも楽しかった。





 場末の酒場の誓い以降、相変わらず理解できていない授業をノートにメモをしつつ、たまに学友たちの誘いで飲み会に参加し、まだ王都内で解決しない事件の噂も消えていない日々を過ごしている。
 そんなある日、顔見知りの4人組に、初めて見る人物を発見した。彼らと一緒に行動するのは完全に似合わない、よく手入れされた肩まで届く波打った桃色の髪に、顔立ちからも育ちが想像できるような可愛らしい美少女だ。透けるようなある意味病的に白い肌に、赤い目をしている。そんな彼女は、魔法師の純白のマントの下には、まだ冬には早いだろうに厚手の上着を着こんで手には黒い革の手袋をしている。

「おっちゃん、この娘はカルミアさん」

「はじめまして、カルミア=コロニラです。皆さんと同じように仲良くしてください」

「はじめまして、タナカです。こちらこそよろしくお願いいたします」

 遠くから観察しているとマーディンに目が合って紹介してくれるが、彼女と挨拶を交わしている間も牽制するような4人組からの眼差しを受けている。家名持ちの麗しい若い女性相手に対して、おっさんにそんな気持ちはないよと、挨拶を済ませると少し離れた席に着く。
 そうして授業が始まるまでの間、4人はそれぞれ彼女の気を引こうとしてか一生懸命に話題を作り出して話し掛け、話題の中心である彼女は少し眉を下げるような困った表情を見せるも、終始笑顔を浮かべて過ごしていた。グループ内で話題を振って話を弾ませる少年の表情は輝いているが、残りの3人は仄暗い目をしていて彼らの関係性はこの先大丈夫かなと少し心配になってくる。

 様子を見る限り、これまで4人組だった冴えない男グループに突然現れた高嶺の花の美少女、これは男たちの友情もここまでかと思ってしまう。彼女の目の色から、一瞬専属受付嬢が魔法学校に潜入したついでに、いたいけな少年たちの友情を壊そうとでも思ったのかと考えた。しかし、彼女たち受付の人たちは自身の耳といった外見に自信を持っており、わざわざ下に見ている短命種の姿に化けようとするはずがないし、専属受付嬢特有の目元が笑わない笑顔とカルミアさんの表情は似ても似つかなかった。
 そうすると、これはいわゆるサークルクラッシャー的な出来事になるのだろうか。そうなるのならば、4人中3人か身分の違いから4人全員が不幸になる結末が起こり得そうだ。
 恋は盲目と言うけれど、彼らに不幸を配達した覚えはないため責任は感じないが、失恋した時は酒を奢ってやろうと思う。秋は短し恋せよ男子たち。
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