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第32章『止まない雨』
第190話
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「ずっと支えてくれた味、なんですね」
《はい。あたしみたいなのが本当にできるのか、とか不安になったり、父が倒れたときも支えてくれました》
女性は自分の爪を見つめながら、寂しそうに笑う。
《父は元々体が強くなかったんです。けど、あたしが幸せになれるようにって無理して働いてたみたいで…。
過労で倒れて、今も入院してます。検査結果があんまりよくなかったとしか教えてもらえなくて、どこが悪いかも知らないんです》
「お父様のことが大好きなんですね」
《気持ち悪いですか?》
「いえ。寧ろ仲良しさんで微笑ましいな…と」
自分の父親がどんな人だったか知らない私にとって、愛ある家族の話を聞けるのはとても貴重な経験だ。
普通の家庭がよく分からなくて困ることもあるから、色々な人たちが愛情を注がれて育ったんだと思うと微笑ましい。
「もう少しご家族の話を聞いてもいいでしょうか?」
《勿論です。あたしが小学生の時、母親は新しい男を作って出ていきました。
子どもは邪魔だから近寄らないで、いらないって言われたのいまだに覚えてます。けど、父は違った》
女性は少し悲しげな表情を見せたけど、すぐに話を続けた。
《お父さんにとっては大切な子だから、そのことを絶対に忘れないでほしい。寂しい思いをさせるけど、いらない人なんていないんだよって…。
今考えると小学生には重たい言葉だなって思うけど、参観日もほとんど参加してくれて、寂しくなったらその言葉を思い出して…そうやってたら寂しくなかったんです》
でも、と女性は続ける。
《父は勝手にあの女の借金の保証人にされていたみたいで、生活に余裕がなくなりました。
それでもあたしの心を優先してくれて、それが嬉しかった。だから早く一人前になって恩返しがしたいんです》
こんな素敵な考えを持ってくれて、この人のお父さんはきっと幸せだ。
《あたしの夢も応援してくれて、誰かを笑顔にできるネイリストになりたいって思ってました。
フリーランスで仕事をはじめて、やっと借金を返し終えたんです。父の入院費も稼げています》
「とても素敵な話ですね。沢山の苦労と思いやりを持っているあなたは、誰かを笑顔にできたのではないでしょうか?」
《ありがとうございます。そうだといいな…》
女性の夢が叶ったかどうかは分からないけど、人の痛みが分かる人は強い。
ただ、どうしてこんなにいい人が事件に巻きこまれてしまったのか分からなかった。
《…そういえば、コンテストがあるの忘れてた!今からでも準備間に合うかな…》
もう出られないなんて、女性に言えそうにない。
《はい。あたしみたいなのが本当にできるのか、とか不安になったり、父が倒れたときも支えてくれました》
女性は自分の爪を見つめながら、寂しそうに笑う。
《父は元々体が強くなかったんです。けど、あたしが幸せになれるようにって無理して働いてたみたいで…。
過労で倒れて、今も入院してます。検査結果があんまりよくなかったとしか教えてもらえなくて、どこが悪いかも知らないんです》
「お父様のことが大好きなんですね」
《気持ち悪いですか?》
「いえ。寧ろ仲良しさんで微笑ましいな…と」
自分の父親がどんな人だったか知らない私にとって、愛ある家族の話を聞けるのはとても貴重な経験だ。
普通の家庭がよく分からなくて困ることもあるから、色々な人たちが愛情を注がれて育ったんだと思うと微笑ましい。
「もう少しご家族の話を聞いてもいいでしょうか?」
《勿論です。あたしが小学生の時、母親は新しい男を作って出ていきました。
子どもは邪魔だから近寄らないで、いらないって言われたのいまだに覚えてます。けど、父は違った》
女性は少し悲しげな表情を見せたけど、すぐに話を続けた。
《お父さんにとっては大切な子だから、そのことを絶対に忘れないでほしい。寂しい思いをさせるけど、いらない人なんていないんだよって…。
今考えると小学生には重たい言葉だなって思うけど、参観日もほとんど参加してくれて、寂しくなったらその言葉を思い出して…そうやってたら寂しくなかったんです》
でも、と女性は続ける。
《父は勝手にあの女の借金の保証人にされていたみたいで、生活に余裕がなくなりました。
それでもあたしの心を優先してくれて、それが嬉しかった。だから早く一人前になって恩返しがしたいんです》
こんな素敵な考えを持ってくれて、この人のお父さんはきっと幸せだ。
《あたしの夢も応援してくれて、誰かを笑顔にできるネイリストになりたいって思ってました。
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《ありがとうございます。そうだといいな…》
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ただ、どうしてこんなにいい人が事件に巻きこまれてしまったのか分からなかった。
《…そういえば、コンテストがあるの忘れてた!今からでも準備間に合うかな…》
もう出られないなんて、女性に言えそうにない。
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