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第6章『護り方』
第34話
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「みゆ、おまたせ!」
「全然待ってないよ。だから麻友、もうちょっと息整えて。あとこれ、さっき買ったばかりだから飲んで」
「ありがとう」
女子高生がふたり、とても楽しそうに話している。
「じゃあ、行こっか!」
「うん」
ふたりは恋人繋ぎでカフェに入る。
本当に仲よさげで微笑ましい。
パフェを食べながら話したり、書店に立ち寄って本を買ったり…。
帰り際に入ったファミレスで女子高生が指輪を渡した。
「え、え…!?」
「麻友にあげる。私の大切は麻友だけだから」
そう話す彼女の指にも同じデザインのものがはめられている。
「ありがとう。…いつか本物を贈らせて」
「了解!じゃあこれは、婚約指輪ってことで」
ふたりがお互いのことを友人と表現していなかった理由を理解した。
『大切な人』というのは、友情を表現した言葉とは限らない。
「今日のデートも楽しかったね!」
「うん。待っててくれてありがとう。それじゃあ、また明日」
「またね!」
手をふってわかれるふたりの姿は、私にとってとても眩しい。
そんなふたりに災いが降りかかったのは数日後。
「みゆ、最近眠れてないんじゃない?」
「なんでそう思うの?」
たしかに深雪さんは元気がない。
クラスの人たちに囲まれているのを麻友さんは遠巻きに見ていただけだったけど、それを見抜いていた。
「実は最近、誰かに付きまとわれてるみたいで…」
「今日は家まで送るよ。絶対ひとりにならないで」
「うん。ありがとう」
ふたりが深雪さんの家に辿りついたときには、郵便受けの中いっぱいに謎の封筒が入っていた。
「何これ…」
「交番行こう」
ふたりは手紙を持って交番へ駆けこむ。
深雪さんは他にも証拠を集めていたらしく、それらと一緒に並べた。
「最近誰かにつけられているような気がして…」
「気のせいとかじゃないんですか?」
「そ、そんなこと、」
「それに、これだけじゃちょっとね…」
深雪さんに対する態度を見た麻友さんは、事務机を強く叩いて抗議する。
「何もしてくれないんですか!?彼女は眠れなくなるくらい悩んで苦しんでいるのに、調べてももらえないんですか?
これ以上どんな証拠があればいいっていうんですか!?」
「か、確証がないのに動くことはできないんだ。申し訳ないけど、今日は帰ってくれ」
そうしてふたりは相手にしてもらえず帰される。
麻友さんの怒りと深雪さんの恐怖が伝わってきて、見ているだけで悲しくなった。
──そして悲劇がおとずれる。
「もうすぐ記念日だね」
「ね!何しよっか」
明るく振る舞う恋人を心配そうに見つめていた女子高生だったが、何かを見つけたようで恋人の体を突き飛ばした。
「え──」
腹部に鈍い音をたてて突き刺さるナイフと、相手を安心させるように微笑む少女。
「麻友、麻友!」
「に、逃げ……」
恋人の悲鳴を聞きつけた人間たちが集まるものの、犯人はその場から逃走してしまう。
こうして、ひとりの女子高生の命が終わりを告げた。
「…起きた?」
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫?」
「大丈、夫……」
顔を覆って涙を見せないようにしたけど、氷雨君は何も言わずに背中をさすってくれた。
女子高生は最後の最後までずっと恋人を想い続けていたのだ。
そう思うと、望まない別れを見てやっぱり悲しくなってしまった。
「全然待ってないよ。だから麻友、もうちょっと息整えて。あとこれ、さっき買ったばかりだから飲んで」
「ありがとう」
女子高生がふたり、とても楽しそうに話している。
「じゃあ、行こっか!」
「うん」
ふたりは恋人繋ぎでカフェに入る。
本当に仲よさげで微笑ましい。
パフェを食べながら話したり、書店に立ち寄って本を買ったり…。
帰り際に入ったファミレスで女子高生が指輪を渡した。
「え、え…!?」
「麻友にあげる。私の大切は麻友だけだから」
そう話す彼女の指にも同じデザインのものがはめられている。
「ありがとう。…いつか本物を贈らせて」
「了解!じゃあこれは、婚約指輪ってことで」
ふたりがお互いのことを友人と表現していなかった理由を理解した。
『大切な人』というのは、友情を表現した言葉とは限らない。
「今日のデートも楽しかったね!」
「うん。待っててくれてありがとう。それじゃあ、また明日」
「またね!」
手をふってわかれるふたりの姿は、私にとってとても眩しい。
そんなふたりに災いが降りかかったのは数日後。
「みゆ、最近眠れてないんじゃない?」
「なんでそう思うの?」
たしかに深雪さんは元気がない。
クラスの人たちに囲まれているのを麻友さんは遠巻きに見ていただけだったけど、それを見抜いていた。
「実は最近、誰かに付きまとわれてるみたいで…」
「今日は家まで送るよ。絶対ひとりにならないで」
「うん。ありがとう」
ふたりが深雪さんの家に辿りついたときには、郵便受けの中いっぱいに謎の封筒が入っていた。
「何これ…」
「交番行こう」
ふたりは手紙を持って交番へ駆けこむ。
深雪さんは他にも証拠を集めていたらしく、それらと一緒に並べた。
「最近誰かにつけられているような気がして…」
「気のせいとかじゃないんですか?」
「そ、そんなこと、」
「それに、これだけじゃちょっとね…」
深雪さんに対する態度を見た麻友さんは、事務机を強く叩いて抗議する。
「何もしてくれないんですか!?彼女は眠れなくなるくらい悩んで苦しんでいるのに、調べてももらえないんですか?
これ以上どんな証拠があればいいっていうんですか!?」
「か、確証がないのに動くことはできないんだ。申し訳ないけど、今日は帰ってくれ」
そうしてふたりは相手にしてもらえず帰される。
麻友さんの怒りと深雪さんの恐怖が伝わってきて、見ているだけで悲しくなった。
──そして悲劇がおとずれる。
「もうすぐ記念日だね」
「ね!何しよっか」
明るく振る舞う恋人を心配そうに見つめていた女子高生だったが、何かを見つけたようで恋人の体を突き飛ばした。
「え──」
腹部に鈍い音をたてて突き刺さるナイフと、相手を安心させるように微笑む少女。
「麻友、麻友!」
「に、逃げ……」
恋人の悲鳴を聞きつけた人間たちが集まるものの、犯人はその場から逃走してしまう。
こうして、ひとりの女子高生の命が終わりを告げた。
「…起きた?」
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫?」
「大丈、夫……」
顔を覆って涙を見せないようにしたけど、氷雨君は何も言わずに背中をさすってくれた。
女子高生は最後の最後までずっと恋人を想い続けていたのだ。
そう思うと、望まない別れを見てやっぱり悲しくなってしまった。
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