物置小屋

１人向け・慰め系

瀕死の舞姫(優しい死神)

こんばんは。突然だけど、あと1時間で君の寿命が尽きる。
もしやり残したことがあるなら、今のうちにやっておいた方がいい。
僕にできるのはその手伝いだけだけど、何かある？
…羽衣、か。こういうものでよければ。
たまたま持っていただけだ。だけど、どうしてこれを着てみたいって思ったの？
月まで届くから…成程。
馬鹿になんてしない。宇宙飛行士になりたかった君は、ずっと体を鍛えていた。
だけど、虚弱体質がどうにかなるわけじゃなかったから夢を叶えられずに終わった…そう書いてあった。
知ってるよ、多少は。
だから月に行こうとした。…今そんな危ない場所に立っているのはそういう理由。
どうせ死ぬなら綺麗なままいたいと思わない？
君の思いを踏みにじった人間たちは、残念ながらそのことを覚えていないだろう。
いつか君という存在すら忘れてしまうかもしれない。
だけど僕は、自分が送った相手をちゃんと覚えている。
だから、君のことも忘れることはない。
必死に生きて、自分が叶えたいものを追いかけ続けた君を。
…そろそろ時間だ。お願い？
それはかまわないけど、僕にそんなことを頼んできたのは君が初めてだと思う。
…時間まで楽しんで。

まさかさいごに舞うところを見ていてほしいなんて言われるとは。
願わくば、彼女が少しでも理想に追いつけますように。
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優しい死神シリーズにしました。