物置小屋

１人向け・看病系

それぞれのペースで(失声症)

なんだか顔色が良くないみたいだけど、もしかして体調悪い？
…首を振っても駄目。あともう少しで駅だから、ちょっとこのヘッドホンしてて。

…到着。そんなに頭を下げないで。
俺も気分転換したかったから丁度よかったよ。
酔っ払い、怖かった？
『どうしても大声を出す人は苦手で…ごめんなさい』…君が謝ることじゃないよ。
誰だって苦手なものはあるでしょ？俺は虫が苦手だしね。
今も触ったり捕まえたりはできないんだ。
『ちょっと意外だった』…俺は虫を触れる君がすごいと思った。
…あれ？もしかして、電子パッドの電池切れた？
スマホじゃ小さめになるし、メモ帳はこの暗さじゃ見えないし…手、離さないでね。


ここなら街灯があるし、落ち着いて話せるかなって…ごめん。手、痛くなかった？
『ありがとう』…どういたしまして。ここでちょっと話してから帰ろうか。
『無理してない？私に全部合わせて…』…してないよ。俺がやりたいようにやってるだけだから。
今日、楽しめた？それならよかった。
飲み物買ってくるけど、何がいい？『お茶がいいな』…分かった。ちょっと待ってて。

おまたせ。お茶、あったよ。どうしたの？
『私を外へ連れ出してくれてありがとう』…お礼を言うのは俺の方だよ。
君と出会って世界が広がったんだ。だから…一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくね。
改まって言うと、なんだか照れちゃうな。
飲むの、もういい？それじゃあ行こうか。電車、今から歩けば間に合うから。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
失声症の恋人の話にしました。