物置小屋

１人向け・看病系

素敵な香りに満たされる魔法(『半人前』シリーズ)

…やれやれ、また来たのか。
僕はここに住んでいるからしょっちゅういるけど、君は違う。
あまり長居しない方がいい。
どうしてここなの？行く場所なら他にいくらでもあるはずなのに…。
ここの香りが落ち着く？今は金木犀が咲いているだけだけど、それがいいってこと？
別にこのあたりじゃ珍しくもなんともない。
この香りがそんなに落ち着くの？
…なら、少し待ってて。目を閉じて。
耳はこうして塞いでいればいい。
これから癒し系の音楽が流れる。それに耳を傾けておいて。
心配なら、こうやって手を繋いでおくから。
…目を閉じたまま、絶対に開けないで。

そんなに不安がらなくても大丈夫。もう開けていいよ。
…どうしてそんなに不思議そうな顔をしているの？
香り袋があれば、いつでも心を落ち着かせることができるだろうと思って…。いらなかったら置いていって。
そこまで喜んでもらえるのは予想外だった。
…さあ？どこから用意したと思う？
これが手品か魔法か、決めるのは君だ。
いつも言ってるけど、見た人によって形を変えるものだと思うから…。どっちが正解とかいうのはない。
その人が正しいと思ったものが正解になるんだよ、きっと。
眠れないならこれを使うといい。おそらくよく効くはずだから。


…花々よ、本当にありがとう。
この場所以外落ち着けないなんて、余程の理由があるはずだ。
知ったところでどうにかできるとも思っていないけど、あの子が自分の意志で生きられるといいな。
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『半人前』シリーズにしました。