物置小屋

１人向け・other

ご飯が美味しくなる魔法(『半人前』シリーズ)

こんばんは。やっぱりまた来たんだ。
…どうしたの？もしかして、何も食べてない？
何を食べても同じ、か。つまり、味がしないってこと？
疲れているからなのか、亜鉛不足か…大きなストレスを抱えているか。
どれかに心当たりはあるみたいだね。
栄の問題以外原因をどうこうするのは難しいから、僕にできることをするよ。
そこに座ってて。今僕は何も持っていない。ポケットもフードも空っぽだ。
そのまま目を閉じて、いいって言うまで開けないで。
…もういいよ。何をそんなに驚いているの？
この現象が手品か魔法かは、君が好きなように想像すればいい。…いつもどおりね。
最近夜は冷えてきたから紅茶を淹れるんだ。
それとこのクッキーを一緒に食べるといい。味は保証する。
…僕も食べろってこと？まあいいけど。いただきます。
どんな感じがする？…それを甘いと感じられたなら、君の味覚は正常だ。
寧ろ鋭すぎるくらいだと思う。
そのかぼちゃクッキーは砂糖を殆ど使わず焼いたものだから。
美味しく感じた？どうしてだろうね。
僕はただ用意しただけ。この場所だと人の目を気にしなくていいからじゃない？
誰にも気を遣うことなく、素の自分でいられる。
我慢しなくていい場所だからかもしれない。
…あくまで僕の勝手な推測だけど、相当ストレスが溜まっているんだろうね。
そろそろ帰った方がいい。
ここは危ない場所だから、あまり来ないように。

…余程ひどい扱いを受けているんだろうな。
生きとし生けるもの全てが清いとは限らない。
しかし、そのなかにいる清いものは生きづらいだろうな…。
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『半人前』シリーズの話にしました。