物置小屋

１人向け・other

目を奪う魔法(『半人前』)

…どうしたの、そんなところに突っ立って。
僕？ここに用事があってきたんだ。
君はそういうわけではなさそうだから、さっさと帰るよう警告しに来た。
そもそもここは立入禁止だろう？何故入ってきたんだ。
…帰りたくない？こんな夜中に来ておいてそれはまずい。
早く帰らないと、悪い人に拐われてしまうよ。
…成程、それが狙いで来たのか。
警察官というわけでもなさそうだし、君の目が死んでいることに意味があるとするならそういうことだろう。
自暴自棄になってもいいことはない。
もう少しゆっくり考えた方がいいよ。
…それとも、生きていればそのうちいいことがあるとか言った方がいいのかな。
おちょくっているわけではないよ。
その一言は時に誰かを救えるが、時に猛毒となって相手を消し去ってしまうだろう。
それを知っているから軽く口にしないだけだ。
ただ、そうだな…ひたすら虚しい気持ちになっているなら、この景色はどうだろう？
向こうの方をよく見ていて。そろそろ時間だ。
…僕はあの花が咲く瞬間が見たくてここに来た。
目的のものが見られて安心したよ。
たしかにさっきまでは何もなかった。そういうものだからね。
…魔法？それはどうだろう。
手品？そうかもしれないね。
手品か魔法か、君が好きなように思ってくれればいい。
人の心にひとつだけあるのが真実だから。
そろそろ時間だろう。早く戻った方がいい。
ここで見たことは決して誰にも話さないように。
…それが守れたらまた会えるかもしれないね。
では、さようなら。

…疲れた。まさか魔法なんて言い出すとは思わなかったな。今の人間たちは魔法なんて信じていないはずなのに…。
事情は知らないけど、僕みたいな半端者でも役に立てたならよかった。
…ありがとう、花々たち。力を貸してくれたおかげであの子はもう少し生きられるだろう。
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魔法と呼ばれるものがあるなら、というイメージで綴ってみました。