物置小屋

１人向け・other

哀しき救済(優しい死神)

…こんばんは。突然ですが、君の寿命はあと1時間でつきます。
もし何かやり残したことがあるなら…ごめん。
泣くほど生きたいと願う人間を見たのは久しぶりだけど、僕にはあんまり感情が分からないから…嬉し涙？
君も消えたいと願う側か。…最近多いんだ。
死期が近いのを悟っていた人も少なくないし、君みたいに待っていたと喜ぶ人間もいる。
どうして君は生きていたくないと思ったの？
…そっか。ずっと苦しんだんだね。
何も決められなかった…成程。報告書で見た。
君は周囲が望むようにふるまい、人一倍他人の感情に敏感で即座に反応していた。
だけど、それが分からない心無い相手もいて…そのうち、生きる道さえ見失ったと。そういうこと？
…だから君は今、こんなに危ない場所にいるんだね。
深夜に誰もいない場所なんて充分危険だと思う。
聞きたいこと？僕に答えられることなら。…そうだね、たしかにそれだけは選べる。
本当に何もないの？…分かった。それならもう行こうか。
苦しみがない世界へ案内するよ。
お礼を言われるようなことは何もしてない。
これは僕の仕事だから。…死が救いだというなら、救世主に見えるのかもしれないけどね。


生き方を選べなかったから、さいごの幕引きくらいは好きにやりたい、か。
…珍しいタイプの人間だったな。
人間っていうのは、心が死んでいた時点で生きていたとは言えないのかもしれない。
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優しい死神の話にしました。