物置小屋

１人向け・慰め系

誰にも届かなくても(優しい死神)

こんばんは。突然ですが、君の寿命はあと1時間で尽きます。もしやり残したことがあるなら、今のうちにやっておいて。
…ごめん。僕の権限で寿命をのばすことはできないんだ。
時間がかかるものなの？…創作活動？
もし僕に手伝えることがあるなら言って。…飲み物？分かった、持ってくる。

…完成した？随分早かったね。小説か。君にとっては、それが大切なことなんだね。
馬鹿にしたりしない。大切なものは人それぞれだから。
それに、夢とか希望になっていたものなんでしょ？…目を見れば分かる。
何を躊躇しているの？誰にも届かなかったら、か…。
僕には人間の心が全部分かるわけじゃないから、こんな事を言ってしまっていいのか分からないけど…君がここにいた証にはなる。
今までやってきたことが全部無駄になると思っているなら、それは違うと断言しよう。
僕は、君の経験をある程度見てきたんだ。
あれだけ必死に打ちこんだ時間が無駄だなんて言うなら、それを真っ向から否定する。
君が積み上げてきた物語は、きっと誰かの心に届いているよ。
今ちらっと見えた短い言葉ひとつひとつが、僕に刺さったから。
…そろそろ時間だ。他にやっておきたいことはない？
君が満足したならよかった。それじゃあ、行こうか。


誰かに届いたなら充分、か。
僕なんかの言葉でも、人間を救えることがあるんだな。
…願わくば、彼女の世界を見つけてくれる人が現れますように。
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タイトルどおりの話を、優しい死神さんで綴ってみました。