物置小屋

１人向け・other

旅立ちの花(優しい死神)

こんにちは。…君はその花が好きなの？
ふうん？花が咲くまで生きられれば、か…。
…残念だけど、その願いは叶わない。君はあと1時間で死ぬから。
どうして分かるのか、か…。俺は死神なんだ。
もしやり残したことがあるなら、すぐに取り掛かった方がいいよ。
嘘だと思うならそれでもいいけど…。後悔しても知らないよ？あ、ちょっと…！

…ごめん。やっぱり泣かせちゃったか。
だけど、君も俺を罵倒しないんだね。
俺のせいで死ぬってよく言われるから…、花が見たいんだっけ？
君があの花壇をずっと見てきたことは知ってる。
だから、今から俺にできることをさせてもらうね。
一生懸命生きてきた人の願いが叶わないなんてあんまりだ。
…治療？そっか、痛いんだっけ。たしかにそこからは解放される。
もう痛いことも苦しいこともない。
だけど…そうだ、ちょっとだけ待ってて。

…よかった、まだ生きてる。あと少ししか時間がないから、これくらいしかできなかったけど…あげる。
そっちは折り紙で作ったやつで、ここのスケッチは写真を参考にやってみたんだ。
本物を見せられたらそれが1番だったんだろうけど…。
どうして笑っているの？俺はただ、自分にできることをしただけだよ。
…お願い？俺に叶えられることなら。
君のお墓…分かった、いいよ。
初めて俺を怖がらなかった人のところに供えるついででいいなら、あの花が咲いたときにブーケにして持っていく。
きっと空からも見えるだろうし、駄目そうなら別の手段を考える。
…さて、そろそろ時間だ。どうしてお礼なんて言うの？
君はいい人だね。…ありがとう。
それじゃあ、俺の手をとって。その花たちは持っていけるから。
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優しい死神の話にしてみました。