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物語の欠片
ホリゾンブルーのきらめき・前篇(ブラ約)
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「リリー、少し買い物を頼まれてほしいのだけれど…」
夜中に目が覚めた陽和は、そんな会話を聞いてしまった。
「こんなものを頼まれるとは思わなかったな」
「別にいいでしょ。用意できないなら自分でなんとかするからいい」
「まあまあ、そう言わずに…。分かった、明日までに調達してくる」
それ以上聞いてはいけないような気がして、陽和は音をたてないように気をつけながらその場を離れた。
……翌日、陽和は慣れない草履を履いて歩いていた。
リリーは浴衣も着せようと思っていたが、陽和はスカートがはけないため無理だと判断された。
「あるきづらかったら掴まってて」
「ありがとうございます」
可愛らしい巾着袋はリーゼが手縫いで用意したものだ。
外套のフードを目深にかぶった陽和は、リーゼに手を引かれて少しずつ歩いていく。
「あ…」
陽和が目を奪われたのは、金魚すくいの屋台だ。
リーゼはすぐにそれを察し、その場にいた人間にコインを2枚渡した。
「あの、えっと、」
「やってみたかったんでしょう?私も一緒にやるから、ポイ持って」
「こう、ですか?」
陽和は慣れない手つきで水にポイをつけ、ゆっくり引き上げる。
その結果、ポイはすぐ破れてしまった。
「お嬢ちゃん、残念だったね」
陽和がしょんぼりしているのをみて、リーゼは黙々と取り続ける。
ポイが破れる様子もないのを確認し、人間は顔を青くした。
「相変わらず君は加減を忘れるんだね」
「わざと破れやすいのを渡す方が悪い」
リリーは笑っていたが、リーゼは虫の居所が悪そうにしている。
屋台が継続不可能になるほど金魚をすくいあげたリーゼは、そのなかから2匹だけ引き取った。
先に食べ物の屋台に並んでいたリリーは、事の顛末を聞き大笑いしている。
「ごめんなさい。あんまり楽しくなかったでしょ」
「いえ、楽しかったです。リーゼはすごいんですね」
「そんなことない。この子たちのお世話のしかたも教えるから、一緒に面倒見てくれる?」
「はい」
ラムネにたこ焼き、りんご飴にわたがし…陽和にとっては初めてのものばかりでわくわくが顔に出ている。
リーゼたちはそのことに気づかないふりをしながら、ふたりなりに楽しんでいた。
「すごく、しゅわしゅわするんですね」
「苦手だった?」
「初めての食感です」
中のビー玉がからんころんと音をたて、それを陽和がとても不思議そうな表情で見つめている。
「この中に入っているものって、取り出せるんですか?」
「そのビー玉は取り出せるよ。昔は瓶を割らないといけなかったんだけど、この形状のものならここを回せば取り出せるはずだ。お嬢さんもやってみるかい?」
「やってみたいです」
ビー玉を取り出した陽和ははしゃいでいる様子だった。
夜空に大輪の花が咲いた瞬間の笑顔に、リーゼは静かに心のシャッターを押す。
「とても綺麗ですね」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「今年は特に気合を入れて作られたみたい。あまり詳しくは分からないけど、見ていて楽しい」
最後の一発が打ち上がったのを見届けた直後、大量の人間が悲鳴をあげはじめた。
何がおこったか分からず、その場を動くことができない。
「陽和!」
リーゼは手を伸ばしたが、その手は空を掴む。
唇を噛みしめ、隣で呆然としているリリーにはっきり告げた。
「陽和を探すの手伝って。あの子を護りたい」
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久しぶりのブラッディローズの約束シリーズにしてみました。
夜中に目が覚めた陽和は、そんな会話を聞いてしまった。
「こんなものを頼まれるとは思わなかったな」
「別にいいでしょ。用意できないなら自分でなんとかするからいい」
「まあまあ、そう言わずに…。分かった、明日までに調達してくる」
それ以上聞いてはいけないような気がして、陽和は音をたてないように気をつけながらその場を離れた。
……翌日、陽和は慣れない草履を履いて歩いていた。
リリーは浴衣も着せようと思っていたが、陽和はスカートがはけないため無理だと判断された。
「あるきづらかったら掴まってて」
「ありがとうございます」
可愛らしい巾着袋はリーゼが手縫いで用意したものだ。
外套のフードを目深にかぶった陽和は、リーゼに手を引かれて少しずつ歩いていく。
「あ…」
陽和が目を奪われたのは、金魚すくいの屋台だ。
リーゼはすぐにそれを察し、その場にいた人間にコインを2枚渡した。
「あの、えっと、」
「やってみたかったんでしょう?私も一緒にやるから、ポイ持って」
「こう、ですか?」
陽和は慣れない手つきで水にポイをつけ、ゆっくり引き上げる。
その結果、ポイはすぐ破れてしまった。
「お嬢ちゃん、残念だったね」
陽和がしょんぼりしているのをみて、リーゼは黙々と取り続ける。
ポイが破れる様子もないのを確認し、人間は顔を青くした。
「相変わらず君は加減を忘れるんだね」
「わざと破れやすいのを渡す方が悪い」
リリーは笑っていたが、リーゼは虫の居所が悪そうにしている。
屋台が継続不可能になるほど金魚をすくいあげたリーゼは、そのなかから2匹だけ引き取った。
先に食べ物の屋台に並んでいたリリーは、事の顛末を聞き大笑いしている。
「ごめんなさい。あんまり楽しくなかったでしょ」
「いえ、楽しかったです。リーゼはすごいんですね」
「そんなことない。この子たちのお世話のしかたも教えるから、一緒に面倒見てくれる?」
「はい」
ラムネにたこ焼き、りんご飴にわたがし…陽和にとっては初めてのものばかりでわくわくが顔に出ている。
リーゼたちはそのことに気づかないふりをしながら、ふたりなりに楽しんでいた。
「すごく、しゅわしゅわするんですね」
「苦手だった?」
「初めての食感です」
中のビー玉がからんころんと音をたて、それを陽和がとても不思議そうな表情で見つめている。
「この中に入っているものって、取り出せるんですか?」
「そのビー玉は取り出せるよ。昔は瓶を割らないといけなかったんだけど、この形状のものならここを回せば取り出せるはずだ。お嬢さんもやってみるかい?」
「やってみたいです」
ビー玉を取り出した陽和ははしゃいでいる様子だった。
夜空に大輪の花が咲いた瞬間の笑顔に、リーゼは静かに心のシャッターを押す。
「とても綺麗ですね」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「今年は特に気合を入れて作られたみたい。あまり詳しくは分からないけど、見ていて楽しい」
最後の一発が打ち上がったのを見届けた直後、大量の人間が悲鳴をあげはじめた。
何がおこったか分からず、その場を動くことができない。
「陽和!」
リーゼは手を伸ばしたが、その手は空を掴む。
唇を噛みしめ、隣で呆然としているリリーにはっきり告げた。
「陽和を探すの手伝って。あの子を護りたい」
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久しぶりのブラッディローズの約束シリーズにしてみました。
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