物置小屋

１人向け・慰め系

彷徨う心(黄泉行列車)

こんばんは。迷子ですか？切符を拝見させていただきます。
…成程、そういうことか。いえ、なんでもありません。
お客様にはこの列車に乗る権利があります。
私はこの列車の車掌をしているのですが、あなたの切符には使わず捨てる権利も存在しているようです。
この列車は死者の為にあるものですが、あなたには死んだ記憶がないのではありませんか？
この列車にお乗りいただくのは構わないのですが、もし目的地に辿り着くまでに死にたくないと感じたら教えてください。…約束ですよ。
それでは、そろそろ列車を発車させます。飲食等自由ですので、後ほど伺います。

…失礼します。こちらがメニューとなっておりますが、ないものを用意することも可能です。
この列車は、死者の方に快適に過ごしていただくためにありますから。
…ラムネというのは、瓶に入っている飲み物でしょうか？かしこまりました。すぐにお持ちいたします。

おまたせしました。こちらをどうぞ。
…その顔、もしかして何か思い出しましたか？
そう、あなたは屋上から突き落とされたご友人を庇って転落しました。
病院に運ばれ、今は生死の境を彷徨っています。
現実に帰りたいですか？…本当によろしいんですね？
かしこまりました。それでは、最後の旅をゆっくりお楽しみくださいませ。


…今回のお客様は珍しいケースだったな。
そもそも帰り道が残っている切符を手にすること自体が珍しいし、死因に関する記憶がない車両に乗ったお客様は帰りたいと言うのに…。
これ以上他人を信じられなくなるなら天国に行きたい、か。
あのお客様は知っていたんだ。…本当は周囲の人間が自分を嵌めたことに。
やっぱり俺には人間の負の一面が見えやすいな。…まあ、あんなことがあったなんて誰にも言うつもりはないけど。
次のお客様にも快適に過ごしていただけるようできることをするだけだ。
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黄泉行列車で綴ってみました。