物置小屋

１人向け・慰め系

片道切符(不思議な夜行列車)

こんばんは、お嬢さん。こんな夜遅くにひとりでいたら危ないですよ。
どうなってもいい、ですか…。本来であればどうなってもいい人間なんていないはずなんですけどね。
少なくとも、俺はお嬢さんがどうするつもりなのか気になります。
俺ですか？見てのとおり車掌です。
まもなく列車が発車するのですが、お嬢さんも乗りますか？
正直、あまりおすすめはできません。これは片道しか乗客が乗れないので、1度進んでしまえば戻れなくなります。
俺が言うのもなんですが、よく考えてからの方がいいでしょう。
…乗りたい？かしこまりました。それでは席の方をご用意させていただきます。
ただ、その前にひとつ教えてください。あなたが消えたがっている理由はなんですか？
…そうでしたか。居場所がなくなっていくのは辛いですね。
本当の自分を隠せば隠すほど、どんどん迷子になってしまう。そして、誰も本当のあなたには辿り着けない。
その状況に必死で耐えて、それで疲れてしまったんですね。
…誰もあなたの頑張りを知らないかもしれませんが、俺は今知りました。
あなたはちゃんと頑張っていました。頑張れなんて簡単に言えません。
この列車の行き先は、所謂あの世です。…本当に後悔しませんか？
分かりました。席の用意ができましたのでこちらへどうぞ。
…ここには、あなたが好きなものが沢山置いてあるはずです。
たとえば、その金平糖やぬいぐるみ、あとは…このオルゴール。
あなたにとって大切なものを揃えてあります。
俺はせめて、お客様にさいごの旅を楽しんでほしいんです。
ここ最近、お嬢さんみたいに傷ついた心を抱えてこの列車に乗る人が増えています。
だからこそ、この列車でだけは嫌な思いをせず幸せな気分になってほしいんです。
あなたがさいごの瞬間まで必死で生きたことを、俺はずっと忘れません。
お客様のことでしたら、ひとりひとりちゃんと覚えていますから。
お嬢さん、自分が頑張っていたことを忘れないでください。
…長々と話してしまいましたが、そろそろ発車します。
降りたくなったらいつでもその非常ベルを鳴らしてください。
それでは、さいごの旅を存分にお楽しみくださいませ。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
こんな電車があったら乗りたい…なんて考えながら綴ってみました。