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物語の欠片
ストロベリーと贈り物(バニラと秘蜜とストロベリーの続きです)※同性愛描写が苦手な方は読まないことをおすすめします。
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午後11時、今日の逢瀬は遅い時間からはじまる。
「遅くなってごめんなさい」
「謝らないで。僕だって今来たところだし…」
清香のお嬢様口調に違和感を覚えつつ、奏は自らが隠し持っていた袋を見せる。
「線香花火、去年できなかったから持ってきたんだけど…よかったらやらない?」
「いいの!?」
「そのために買ってきたんだ」
奏は清香の手を取り駆け出す。
そのまま走り続けて辿り着いたのは、奏がひとりで暮らすマンションの一室だった。
「気づかなくてごめん。駅前で言葉を崩したところを見られたくなかったんでしょ?」
「……まあ、そんなところかな」
清香にしては随分歯切れが悪い言い方だ。
それでも、待ちに待った楽しい時間の雰囲気を壊したくない一心で奏は言葉を飲み込む。
「珈琲と紅茶、どっちがいい?」
「紅茶。ガムシロップ2つ入れてほしいな」
「分かった」
清香がガムシロップを入れるときは何かあったときだと、奏はよく知っている。
それを2つというのは非常事態に近い。
「ミルクは入れなくてよかったんだよね?」
「うん。ありがとう」
「…ねえ、清香」
「どうかした?」
「僕、何かした?」
奏が恐る恐る訊くと、清香はグラスを持つ手を置いた。
「……今日、あの男子生徒と買い物してたでしょ」
「え、見てたの?」
「彼が良くなっちゃったのかなって思って、ちょっともやもやしていただけなんだ。
でも、それならどうして私の誘いを断るときに教えてくれなかったんだろうって不安になってた」
その言葉に奏は笑った。
清香はむうっと頬を膨らませていたが、彼女の頭を撫でながら真相を語る。
「僕って人にあんまり贈り物をしないでしょ?どんなのがいいか迷ってたら、たまたま近くを通りかかった彼が相談に乗ってくれたんだ。
喜んでもらえるプレゼントをしたいって話してて…これ、受け取ってくれる?」
奏の手におさまっていたのは、青い薔薇がついたヘアピンだった。
どうやら清香が見たのはプレゼントを決めた瞬間だったらしい。
「こんなに素敵なもの、本当にもらっていいの?」
「清香に使ってほしいんだ」
「ありがとう。早速つけてみてもいい?」
「動かないで」
清香にヘアピンをさした直後、耳許でそっとささやく。
「よかった。ちゃんと似合ってる」
「いきなりそういうことをするのはなしって、いつも言ってるのに…」
「ごめん。清香が可愛かったから、つい」
ふたりが見つめ合っていると部屋の時計が24時を知らせる。
「今日は泊まっていって。これはまた今度かな…」
「明日も泊まっていい?」
「僕はいいけど、清香は大丈夫なの?」
「うん。私だって少しでも長く奏と一緒にいたい」
「分かった。じゃあ線香花火は明日にしよう」
ふたりで過ごせるのが決まり、奏はとにかく嬉しかった。
また、清香も奏といられる時間が増えるのを喜んでいる。
その日はふたり同じ部屋で眠りについた。
──また明日と言い合える幸せを噛み締めて。
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なんとなく紡いでみたくなりました。如何でしょうか…?
「遅くなってごめんなさい」
「謝らないで。僕だって今来たところだし…」
清香のお嬢様口調に違和感を覚えつつ、奏は自らが隠し持っていた袋を見せる。
「線香花火、去年できなかったから持ってきたんだけど…よかったらやらない?」
「いいの!?」
「そのために買ってきたんだ」
奏は清香の手を取り駆け出す。
そのまま走り続けて辿り着いたのは、奏がひとりで暮らすマンションの一室だった。
「気づかなくてごめん。駅前で言葉を崩したところを見られたくなかったんでしょ?」
「……まあ、そんなところかな」
清香にしては随分歯切れが悪い言い方だ。
それでも、待ちに待った楽しい時間の雰囲気を壊したくない一心で奏は言葉を飲み込む。
「珈琲と紅茶、どっちがいい?」
「紅茶。ガムシロップ2つ入れてほしいな」
「分かった」
清香がガムシロップを入れるときは何かあったときだと、奏はよく知っている。
それを2つというのは非常事態に近い。
「ミルクは入れなくてよかったんだよね?」
「うん。ありがとう」
「…ねえ、清香」
「どうかした?」
「僕、何かした?」
奏が恐る恐る訊くと、清香はグラスを持つ手を置いた。
「……今日、あの男子生徒と買い物してたでしょ」
「え、見てたの?」
「彼が良くなっちゃったのかなって思って、ちょっともやもやしていただけなんだ。
でも、それならどうして私の誘いを断るときに教えてくれなかったんだろうって不安になってた」
その言葉に奏は笑った。
清香はむうっと頬を膨らませていたが、彼女の頭を撫でながら真相を語る。
「僕って人にあんまり贈り物をしないでしょ?どんなのがいいか迷ってたら、たまたま近くを通りかかった彼が相談に乗ってくれたんだ。
喜んでもらえるプレゼントをしたいって話してて…これ、受け取ってくれる?」
奏の手におさまっていたのは、青い薔薇がついたヘアピンだった。
どうやら清香が見たのはプレゼントを決めた瞬間だったらしい。
「こんなに素敵なもの、本当にもらっていいの?」
「清香に使ってほしいんだ」
「ありがとう。早速つけてみてもいい?」
「動かないで」
清香にヘアピンをさした直後、耳許でそっとささやく。
「よかった。ちゃんと似合ってる」
「いきなりそういうことをするのはなしって、いつも言ってるのに…」
「ごめん。清香が可愛かったから、つい」
ふたりが見つめ合っていると部屋の時計が24時を知らせる。
「今日は泊まっていって。これはまた今度かな…」
「明日も泊まっていい?」
「僕はいいけど、清香は大丈夫なの?」
「うん。私だって少しでも長く奏と一緒にいたい」
「分かった。じゃあ線香花火は明日にしよう」
ふたりで過ごせるのが決まり、奏はとにかく嬉しかった。
また、清香も奏といられる時間が増えるのを喜んでいる。
その日はふたり同じ部屋で眠りについた。
──また明日と言い合える幸せを噛み締めて。
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なんとなく紡いでみたくなりました。如何でしょうか…?
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