物置小屋

１人向け・慰め系

君だけのかみさま(内緒の話)

そこの若者、こんばんは。一体何をするつもりなんだ？
そうか、飛ぶのか。きっと助からないだろうな…。
おじさん、か。せめてお兄さんにしてもらえると嬉しい。
止めはしない。そんな権利、私にはないからね。
君の辛い思いを消すことはできないし、頑張れなんて無責任なことは言えない。
ただ、飛ぶ前に私と話をしないか？些細なことを話すだけでいいんだ。
君は何に疲れたんだ？…そうか、それはさぞ辛かったろう。
何をやっても上手くいかない、自分のことが嫌い…そんなことがあって辛くないはずがない。
感情があるというのは面倒だ。それが助けになることもあれば、君みたいに苦しむ原因になることもある。
だが、私は…人間が輝くのは、感情があるからこそだと思うよ。
人間は毎日頑張ると壊れてしまう。体も心も、全てぼろぼろになってしまうんだ。
それでも君は、困っているものを放っておけないんだろうな。
この前見たんだ。弱っている猫を助けていただろう？それから、道に迷っている老婆を案内していた。
私は、君みたいに思いやりを持っている人間にいてほしいよ。
…そういえば、明日は君が好きなアイスの新しいフレーバーが発売になるんじゃないかな？
それを食べてからでも遅くないと思うぞ？
…そうか。では私はこれで。名前？名乗るほどのことはしていないよ。
ただ君と話をしてみたかっただけだからな。それでは、失礼。


直接話してみると、尊かった…。
思わず好きだといいそうになったが、なんとか耐えられてよかった。
老婆の姿の私を救ってくれたあの子に、どうか幸あらんことを…。
私はずっと見守っているよ。
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彼の正体は彼のみぞ知る、という話にしてみました。