物置小屋

１人向け・other

電車でコミュニケーションを取る方法(失声症の恋人)

目的地まではまだ時間があるし、何かして時間を潰そう。
電車って綺麗な景色が見られるのはいいんだけど、途中でどうしても眠くなっちゃうんだ。
『スケッチブックしか持ってないけど、何かできることってあるかな？』…絵しりとりとか？
昔よくやってたんだ。遠足のバスの中で友だちと…子どもっぽいかな？
『楽しそうだからやりたい』…筆記用具の予備って持ってる？借りていい？
ありがとう。それじゃあ君から。好きなものを描いてね。

(これってバスかな？それなら水筒で返そうか)…はい、できた。
牛だよね？…あ、答えちゃ駄目だよ。10個くらいやってから答え合わせするんだ。しなら…はい。

それじゃあ次の絵で一旦最後にするね。
(これってナスだよね？またすか…そうだ、あれにしよう)…はい、できた。
相手が描いた絵の下に何だと思ったのか書きこむんだ。
どうかした？『最後のが分からない』？まあ、そうなるよね。
正解は…よかった、全部当てられた。君は絵が上手なんだね。
可愛らしくて見ているだけで楽しくなったよ。
俺の最後のこれはね…好きを表現しようと思ったんだ、
だけど、ハートマークだけじゃ伝わりづらいと思ってハートマークで大きいハートの形を作ったんだよ。
あれ、もしかして照れてる？…そういう反応も可愛いね。
『この続きはこうなるね』…まさかそうくるとは思わなかった。
後でふたりきりになったら、その絵よりかっこよくキスしてみせるよ。
病院近くの駅まであと1時間くらいはかかるだろうから、寝ちゃって大丈夫だよ。着いたら声をかけるね。

…よかった、眠れてるみたいで。人の目が気になってるみたいだったから声をかけたけど、正解だったみたいだね。
君が笑ってくれるなら、俺はどんなに子どもっぽいことでもやってみせるよ。
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割とほっこりな感じに仕上げた…つもりです。