物置小屋

１人向け・看病系

声なき悲鳴が届いたら(失声症の恋人)

やっとここまで来られたね。こっちから帰れば近道だから…あれ、いない？
困ったな、どこではぐれたんだろう…。こっちかな？それともこっち？
…彼女からだ。もしもし、今どこにいるの？…って聞いても答えるのは難しいよね。
チャットに打ってくれる？『入り口の公衆電話の横』…分かった。すぐ行くからそのまま待ってて。

ん？誰かと一緒にいるのかな。…いや、違う。
あの、彼女に何か御用ですか？俺でよければ代わりに聞きますよ。
彼女は声が出ないんです。いきなり話しかけられても困ると思います。
…ああ、その場所なら反対側の出入り口を出たところを左に曲がったらすぐですよ。
殺気を放ちながら話しかけちゃってすみませんでした。お気をつけて。
ごめんね、遅くなっちゃって…大丈夫？
…嘘。頷いてるけど目が笑ってないよ。もしかして、足痛めちゃった？
そんなに慌てなくても大丈夫だよ。俺がちゃんと家まで運ぶから。
『それはちょっと恥ずかしいよ』…君のそういう反応、本当に可愛い。
だけど、怪我をしていることに気づかず前を歩いて行っちゃった罪滅ぼしも兼ねてなんだ。
それに、今はただ君と一緒にいたい。…それじゃ駄目かな？
手を繋ぐだけじゃ、結局君に無理させちゃうでしょ？だからこうやっておんぶして運ぶよ。
恥ずかしいって思ってるなら、そのまま顔をふせてて。
君の気持ちが分からないのは残念だけど、君が近くにいてくれるのは嬉しいから。


…はい、到着。どうかした？ゆっくりでいいよ、急かしたりしない。
『いつもありがとう。大好き』…いきなりそんなこと言うのはずるい。
まあ、俺も君が好きなんだけどね。
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久しぶりに失声症の恋人で綴ってみました。