物置小屋

１人向け・other

ハッピーエンド(選ばれし者の運命は？)

もうちょっと左。…そう、そっち。よかった、なんとかまけたかな。
そんなに心配そうな顔をしないで。
ほら、この橋を渡ればあの人たちから逃げ切れるよ。
君が先に渡って。大丈夫だよ、僕はここにいるから。
渡りきった？それじゃあ、君とはここでお別れだ。
…ごめん。追手は僕が引きつけるから、君は逃げて。
実はその橋、ひとりしか通れないんだ。
所々腐ってたでしょ？ふたり通るにはちょっと心許なかった。
せめて君だけでも逃げきって。
僕はこのとおり足を撃たれて逃げ切れそうにないし、君が幸せに笑っていてくれればそれでいいんだ。
だから、僕のことは置いていって。
何してるの、戻ってきちゃ駄目だ。もしそれで君まで助からなかったらどうするの？
君が生贄にされるのを黙って見ていることなんてできない。
咎められて罰せられるのは僕だけでいい。撃たれて傷物になったし、しばらくは殺されないだろうから…。
僕が、どうしたいか？…君と一緒にいたい。
それがこの世界でもそうじゃなくても、ただ君が笑っていてくれればそれでいい。
あの村から逃げ出した罪は僕が背負う。だから、君だけでも…どうして戻ってきちゃったの？
…ありがとう。僕も君が好きだよ。だけど、好きだからこそ無事でいてほしかったんだ。
君が戻ってこられないように橋を落とせばよかった。
そうすれば、君だけは護れたかもしれないのに…僕、本当に抜けてるよね。
君が生贄に選ばれた日のこと、覚えてる？
大丈夫だって笑いながら、本当は心で泣いてた。遠目から見ていてすぐ分かったよ。
だから、最後まで護らせてほしいんだ。
だって僕は、ずっと君のことが…ああ、見つかっちゃったみたい。
こっちに足音が近づいてきているし、相手は殺気だってる。
…ねえ、最期の賭けをしよう。ふたりで橋を渡ればきっと壊れる。
壊れるまでに向こうに辿り着けたら僕たちはふたりで自由になれる。
渡りきれなかったら、ふたりだけの世界にいく。…どうかな？
ごめんね。僕の賭けにのってくれてありがとう。
…たとえどうなっても、さっきの言葉の続きはちゃんと伝えるから。
それじゃあ、新しい生活に向かって走ろうか。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
幸せの定義は人それぞれ違うものだろうと思いつつ、綴ってみました。
ふたりがどうなったかは、ふたりのみぞ知るということにしておきたいと思います。