物置小屋

黒蝶

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片道切符(閲覧注意です)

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ねえ、待って。…待ってってば!
よかった、やっとこっちを向いてくれた。
もう疲れちゃった?限界?…分かった、それじゃあこれから最後のデートにつきあってくれる?
言ったでしょ、君がこの世界にいたくないと思ったそのときは僕も一緒に行くって。
僕が今日まで生きていられたのは、君が側にいてくれたからだよ。
君はずっと病気と戦ってきたもんね。
心の傷ってそう簡単には癒えないって聞いてたけど、やっぱり辛かったよね…。今日までよく頑張りました。
どうしてさっきから吃驚した顔をしてるの?
ああ、そっか。まだ説明してなかったね。
実は、君の最近の行動から予想はしてたんだ。大切にしていたものも捨ててたし、僕にくれた花はスイートピーだったし…。
だけど、独りじゃ寂しいでしょ?
僕が生きる意味は君で、君がいない世界にいる意味がないんだ。
だから、君がどうしても苦しくなって限界になったら…そのときは一緒にいこうって決めてた。
君は嫌かもしれないけど…嬉しい?まさかそんなふうに言ってもらえるとは思ってなかった。
僕はともかく、君はいっぱい頑張ってきたもんね。
自力だけじゃどうにもならないことって結構多くて、だけど器用に生きられる人たちにはそれが伝わらない。
永遠に噛み合わない話をするのは、やっぱり疲れるよね。
君の心の傷の深さまでは分からないけど、噛み合わなかったときの絶望は分かる。
だから僕は諦めてた。だけど、最期にいい思い出ができた。
君は楽しかった?そっか…そう言ってもらえると、僕がここにいた意味も少しはあったんだなって思う。
今の言葉、これからどうなっても絶対に忘れないよ。
生きづらいなか、今日まで本当にお疲れ様。
どうする?どこがいい?…了解、だったらあそこまでいこう。
それまでふたりで思い出話でもしながら、この時間を楽しもうか。
…こんな話をしているのに、まさかこれからあんなところに向かってるとは誰も思わないだろうね。
そうだ、今日君からもらった鉢植えも一緒に持っていっていい?
僕たちにとって、これが死への切符みたいなものだろうから。
そろそろ車出すけど、忘れ物はない?それじゃあ、最期のドライブへ出発。
…さて、まずはどんな話からしようか。
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スイートピーの花言葉は『門出』というものがあるのですが、『離別』というものもあります。
今回はどちらの意味にも取れるように綴った…つもりです。
メリーバッドエンドのような感じでしょうか。
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