物置小屋

１人向け・other

拝啓、約定の地にて(手紙シリーズです)

拝啓、お久しぶりです。
あなたは今どんなふうにお過ごしでしょうか？
僕は少しだけ大人になりました。
あれからもう5年も経ったと思うと、長かったのが短かったのか分からないな…。
あなたは元気にしていますか？僕はちょっと病気になってしまいました。
だけど、どうしても約束だけは護りたくて今夜はこっそり外に出てきました。
…君は覚えてないかもしれないけど、5年前今夜この神社で会おうって約束しました。
今になってみると、あの頃が懐かしいです。
君は歌が好きで、将来歌手になるんだって意気込んでいましたね。
それで、僕が作詞するって話をして…ちゃんと書いてきたんだ。
ずっとどんなものにしようか考えてた。
だけど、今この場所に僕だけということは君は覚えていなかったのかな…。
それとも、君に何かあったのかな？
ねえ、どうして突然手紙を返してくれなくなったの？
せめてそれだけでも知りたかった。
連絡が取れなくなってからずっと心配です。
君は昔からなんでも独りで抱えこんで頑張ろうとするところがあったから…。
だから今夜は、いつかまた君と再会できるようにお願いしておきます。
この小さな神社には相変わらず人がいなくて、こんなに静かな場所は他になくて…やっぱりいいなって思います。
君と過ごした日々が全部詰まっているような気がして、実は時々訪れてはいました。
誰かが管理しているわけではなさそうなこの小さな神社で、またあなたのことを待とうと思います。
気が向いたら会ってください。それが無理なら、せめて今どう過ごしているかだけでも教えてください。
あれから引っ越しをしたので、前の手紙にも書いたけど新しい住所を書いておこうと思います。


…これでよし。彼女も病気になってないといいな。
どうか無事で、幸せに暮らしていますように。
僕が消えてしまう前に、もう1回くらいは直接会って話ができるといいな。
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記憶がなくなりだす前なのでもう10年以上前になるのですが、ある人と約束をしました。
私はまだその人との約束を果たせていません。
ただ、その約束があるから今日もこうして生きていけるような気がします。